声優 松岡禎丞が今のアニメシーンに欠かせない2つの理由 『鬼滅の刃』『SAO』などで見せる、自分を超えて没入していく演技
2011年に『神様のメモ帳』(AT-X、TOKYO MXほか)で主人公・藤島鳴海を演じて以降、途切れることなく話題作で主要キャラを演じてきた松岡禎丞。昨年も、日本中にブームを巻き起こした『鬼滅の刃』(TOKYO MXほか)の嘴平伊之助役で存在感を発揮し、いまやアニメシーンに欠かせない存在となっている。
2009年に『東のエデン』(フジテレビ)でデビューした松岡は、初主演を務めた『神様のメモ帳』で第六回声優アワード新人男優賞を受賞。2012年からは、出世作であり代表作でもある『ソードアート・オンライン』(TOKYO MXほか)のキリトを演じ、第十回声優アワードで主演男優賞を獲得した。以降、『食戟のソーマ』の幸平創真、『アイドルマスター SideM』(TOKYO MXほか)の御手洗翔太、『五等分の花嫁』(TBSほか)の上杉風太郎、『Re:ゼロから始める異世界生活』(AT-X、TOKYO MXほか)のペテルギウス・ロマネコンティなど、存在感のある役をこなし続けてきた。
松岡の才能の一つは、演じるキャラクターの幅広さだろう。鬼滅ブームで、野生児の伊之助から松岡のことを知った人は、『ソードアート・オンライン』のキリトの理知的で端正な声、あるいは『アイドルマスター SideM』の御手洗翔太のポップな声が同一人物のものと知れば驚くのではないだろうか。
松岡のもう一つの能力は、「憑依型」と評されるほどのキャラクターへの没入によって生み出される臨場感だ。
例えば、『Re:ゼロから始める異世界生活』で演じたペテルギウスは、緑のおかっぱに見開いたような不気味な目をした、ビジュアルからインパクトの強いキャラクターで、普通に喋っていたかと思えば、次の瞬間、自分の指を噛みちぎって絶叫したりするのだ。いわば「狂人」であるペテルギウスを、松岡はテンションの振れ幅全開で演じ、観ていて反射的に「まともではない」と感じさせる、まさに迫真の演技で表現してみせた。
また、『鬼滅の刃』の伊之助は山で猪に育てられた少年であり、人間社会の常識や人との関わり方を知らない人物。「猪突猛進!」という口癖の通り、常にまっすぐ、本能的に行動する。そんな、人間の都合などおかまいなしの自然そのもののような伊之助の猛々しさ、そして、本能的だからこそ裏表のない素直さを、松岡の声は原作のイメージそのままに形にしてみせた。下野紘に「これほど動物的な表現ができるのはすごい」と言わしめた演技だ(参照)。