突如現れた詳細不明の表現者、Siipとは何者か 混沌とした2020年を浄化する、ポップミュージックの新たな分岐点
なお、「Cuz I」のミュージックビデオは、2020年に躍進したコレクティブであり、福岡を拠点とする気鋭のクリエイティブユニット・BOATによるもの。地球最後の日、最後の晩餐をイメージしたかのような、切なくも狂おしい映像表現が感情を揺さぶる。しかし、まだまだ謎めいたSiipによる情報のヒントは少ない。
実はこれまで、YouTube上にはSiipの作品が点在していた。だが、コロナ禍がきっかけとなったのか、作品は一旦リセットされたという。しかしながらSiipは、混沌とする2020年、聖なる夜の前夜12月24日にファーストタッチとなる作品「Cuz I」をデジタル配信した。ファルセットが印象的な、もの悲しくも意志の強さを感じる耳に強く残る歌声だ。清濁併せ吞む度量の広さを感じる強度の高いポップソングなのだ。
ポップミュージックが時代を映す鏡だとしたら、Siipは2021年以降のポップミュージックを予言しようとしているのかもしれない。優れた表現者とは、時代の息吹をいち早く伝える炭鉱のカナリアのような存在だ。
心を打つ清らかなるメロディ、時代感伴うオルタナティブR&Bを感じさせる次世代ビートセンス、引き算(禅)の美学を感じる研ぎ澄まされた楽曲構成、謎めいた感情が散りばめられた繊細なる歌の響き。
Siipの音楽には、様々な問いかけが込められている。それはまるでバイブルのようでもある。思えば人類は何もかもを手にして、大切なものを少しずつ忘れてきた。2020年とは、綻びつつあった超成熟時代を見つめ直す分岐点となるのかもしれない。あなたは気がつくことができるだろうか。Siipという、時代と呼応するアートの息吹を。
■ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、NHK、Spotify、LINE MUSIC、AWA、ミュージックマガジンなどで書いたり喋ったり選曲したり考えたり。Spotifyで公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』を毎週火曜日更新で選曲中。Twitter
■リリース情報
Siip Digital Single「Cuz I」
12月24日(木)配信 ダウンロードはこちら
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