白神真志朗、新曲「ノスタルジア」制作に垣間見える“クリエイティブな発想の源” 「自分が作るものに責任を持っていたい」

白神真志朗、クリエイティブな発想の源

 ストリーミングサービスで躍進した次世代シンガーソングライター&マルチクリエイター、白神真志朗。12月9日、決定打となる配信シングル「ノスタルジア」をリリースした。本作は気鋭の映像作家、吉川詩歩による作品構想が発端のひとつとなり楽曲、そしてミュージックビデオが生まれたという。

 そもそもシンガー、ベーシスト、コンポーザー、アレンジャー、レコーディングエンジニアとして活躍する白神は美術にも造詣が深く、彫刻や絵画、写真などのアートワークも手がけている。ベーシストとして、“まふまふ”や“じん”など、様々なアーティストの作品やライブにも参加。さらに楽曲提供や劇伴制作などマルチな才能を発揮している。

 コロナ禍である2020年、定期的にオリジナル楽曲をリリースし続けてきた白神。今年6曲目となるのが「ノスタルジア」だ。ストリングスから始まる世界観の大きさを感じさせる大人シリアスな高揚感あるポップソング。それこそ、歌謡曲~シティポップを“いまの時代感”でアップデートしたかのような、研ぎ澄まされたサウンドスタイルに注目したい。取材時にわかったのだが、白神には常に自分の音楽活動を分析、そしてPDCAを回し続ける探求者としての側面が強くあるようだ。2021年、期待の才能であることは間違いない。(ふくりゅう)

白神真志朗

「映像として描きたい世界観を固めていった」

ーー2016年、ボーカロイドプロデューサー・じんさんが新レーベル<EDWORD RECORDS>を立ち上げたときに発表イベントが渋谷WWWでありましたよね。その時にオフィシャルレポートを書いたんですよ。

白神真志朗(以下、白神):そうなんですね。あの時、自分のバンド、ステラ・シンカと、感傷ベクトルやじん君のサポートもしていて。

ーーそして、2017年からはソロ活動も活発化して、Spotifyを軸に白神真志朗としての評価が高まってきていますよね。僕もSpotifyの公式プレイリスト『キラキラポップ:ジャパン』でよく選曲させてもらっています。この才能溢れるアーティストは何者なんだろうって感じで。

白神:そして、ふくりゅうさん主催の神泉のスタジオでやってたスナックイベントに呼んでもらって......。

ーー今に至るという感じなのですが、新曲「ノスタルジア」がとにかく素晴らしくて。歌心があり、表現レベルがとても高い。打ち出せるマーケットも広いですよね。今回、ノンタイアップではあるのですが超大型映画のエンディングテーマでもなんら遜色ないっていう。

白神:ストリングスパワーがかなりありますね。一番最初は、2つのプランがあって。ひとつは、生弦とピアノを録るという話があったのと、あと、今回ミュージックビデオを作ってくださった監督さんが普段は商業作品のディレクターをやられている方なのですが、自分の映像作品として映画祭などコンペに出す作品を作りたいという話を同時にいただいて。あと、もうひとつは、ダンサー事務所の方と知り合って、ダンサーを売り込むための映像作品を作りたいという話もあったんです。それらが結びついて話がまとまったという。

ーーよきタイミングが重なったのですね。

白神:ちょっと紆余曲折はあったんですけどね。映像作品のたたきの状態のプロットから、新曲へ取り掛かりました。歌詞の内容も監督さんに近い感覚というか、映像として描きたい世界観を通話しながら固めていって。例えば「このとき、この子はどんな心情で、今どこで生活していて、どんなシチュエーションで」みたいなことを確認し合って土台となる世界観、歌詞を作っていきました。

白神真志朗 (Mashiro Shirakami) “ノスタルジア(Nostalgia)” Music Video

ーー通常の楽曲作りとはかなり違うスタイルですよね。

白神:そうですね。サウンド面では弦とピアノは生に差し替えることができるだろうという想定のもと進めていきました。なので、僕が1人で作ったというよりはいろんな要素や影響が混ざり合って完成した曲ですね。偶然が重ならないと生まれなかった曲だと思います。家でラップトップで作るパターンとは大きく違いました。いろんな人の感性や美学が入っています。

白神真志朗

ーー今回、歌い方へのこだわりも強くありそうで。

白神:今年「あなたのことは全て」というシングルをリリースしたんです。そのときぐらいから自分自身、歌い方への転換があって。僕はもともとロックミュージックというか、ライブハウス、インディーバンドあがりなので、声なんて出せるようにしか出ないという感覚で歌っていたのが、この2年ぐらいでようやく「ああ、これが歌なんだ」という気づきがありました。その頃からいろんな可能性を探って、落ち着いた先がブレッシーな声でした。最近ベッドルームミュージックというか、ライブにおけるPA環境を想定しないボーカリストって増えているじゃないですか。ささやき系とか。

ーーああ、なるほどね。

白神:ファーストステージがそもそもイヤモニありきのアーティストが増えたんですよ。ネットで知名度が上がっていて集客力も最初からあるから、転がし(モニター)を必要としないボーカリストが増えているんです。なんとなく自分もそっちなのかなって。でも、そのままだと違うなと思っていた自分もいて。配信シングルの「あなたのことは全て」の頃から、ちょっとずつ変えていったんです。試しながら4曲を経て、たどり着いたのが「ノスタルジア」の歌い方でした。ちょっと強いバージョンというか。ただブレッシーなだけじゃなくて、腹式呼吸で下の帯域が出るようなパターンを探りながら、ある程度の音量を出しながらも質量として嫌味にならない感じを意識していますね。

ーーこれまで、イメージ的には作詞作曲編曲、演奏、エンジニアなど、マルチな表現者という真志朗さんだったのが、特にボーカリストとして気になったんですね。生楽器、ストリングスやピアノとともに負けていない感じで伝わってくるという。

白神:そうかもしれないですね。今回、作業量としてはいろんなことをやったんですけど。実際、でき上がった音に関して一番関わっていない作品ではあるんです。ストリングスやピアノを活かしたかったので、他の音を少しずつ消していきました。ミキシングでもボーカルが浮いて聴こえるようなミックスにしていて。葛藤もあったんですけどね。前作「持たざる者」ではスポークンワードっぽかったり、ヒップホップ系のループトラックをポップスに引き込んだみたいなノリにしていたので、その時のミックスに近いんです。声の輪郭が浮いて聴こえて、ディテールがよくわかるんですよね。本来「ノスタルジア」みたいな曲ではやらないんですけど、今回は映像もあって生々しい質感に合うかな、没入できるかなと思ったんです。

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