King & Prince「I promise」、“5つの恋物語”が変えた楽曲の印象 アイドルの等身大を映し出す、ドラマ仕立てのMV

嵐「アオゾラペダル」も “等身大”を映し出すドラマ仕立てのMV

 King & Princeとしては初の試みながら、先輩ジャニーズアーティストも、数々の楽曲でドラマ仕立てのMVを制作してきた。

 直近でいえば、Hey! Say! JUMPの「Your Song」もそのひとつ。CD特典のビデオクリップとショートフィルムが連動した3部作で、メンバーの関係性や歴史を感じさせるノスタルジックな作品だ。ロードムービー風の柔らかな映像が、楽曲の優しい世界観にマッチしている。

 嵐の名曲「アオゾラペダル」のMVも良作だ。仲間と汗を流し、笑い合い、ときにもどかしい恋に胸を痛めながら、過ぎてゆくひと夏を描いた作品。「これもひとつのハッピーエンドなのだろう」と思わせる、温かい結末も印象的だった。

 MVのなかではしゃぐ5人は、嵐であって嵐ではない。もしも彼らがアイドルではなく、ごく普通の青年だったなら。平凡だけれど大切な、思い出せばふと泣けてくるような、こんなありふれた青春を過ごしていたのかもしれない。ほろ苦いミディアムナンバーに、ふとそんなことを考える。

 本作は、当時20代だったメンバーの、眩いほどの若さと美しさを映し出している。“この時間を真空パックして、永遠に閉じ込めていられたら”。そう願うほど尊い時間は、きっと誰にでもあるもの。あの夏の嵐は「アオゾラペダル」の物語に大切にしまわれた。だからいつだって取り出して、想いを馳せることができる。

 アイドルの“等身大”を映し出す、ドラマ仕立てのMV。ときには歌詞の世界観を可視化することでメッセージ性を高め、ときには別の解釈を投げかけることで楽曲にさらなる深みを生む。歌、ダンス、表情、仕草……それらと同じように、アーティストが楽曲を表現するひとつの手段だ。

 そうして、またひとつ生まれた「I promise」という物語。今はただ、世界が嫉妬する恋の結末を、祈りながら待っている。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。
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