宮本浩次、カバーアルバム『ROMANCE』が自身初のオリコン1位に 類稀なる表現力で刻み込まれた“歌い手としての生き様”

宮本浩次、カバーアルバム『ROMANCE』が自身初のオリコン1位に 類稀なる表現力で刻み込まれた“歌い手としての生き様”

  例えば、岩崎宏美「思秋期」の声の震えに滲み出る感情の昂り、研ナオコ「あばよ」が切なさや激しさと同時に感じさせる子守唄のような優しさ、そして「翼をください」の伸びやかさと自由奔放さ。宮本は優れた“聴き手”として楽曲のど真ん中の部分を掴み取り、それを一切の濁りなく歌い放つ。完全に自分のものとして歌っているから、それぞれの楽曲が生まれた時代背景やそこに込められたテーマは違っても、どれもが2020年、54歳(このデモを録っていたときはまだ53歳だったか)の宮本浩次が歌う意味を感じさせるのだ。

 それはアルバム本編を聴いても感じるところだが、こうしてラフな音源であればこそ、いっそう強く伝わってくるものでもある。〈どうにかなるでしょ ここの街の/どこかで私は 生きてゆくのよ/それでもたまに 淋しくなったら/二人でお酒を 飲みましょうね〉という梓みちよ「二人でお酒を」で山上路夫が書いた歌詞が、本来のアダルトな恋愛模様を超えてソーシャルディスタンスやらニューノーマルやらが叫ばれるこのご時世にぴったり寄り添っているように聴こえるーーというのはちょっと考えすぎかもしれないが、そうしたことを考えさせる力が、この歌にはあるのだ。「翼をください」(これも作詞は山上路夫)もそう。サッカー日本代表の応援歌になったり、小学生の合唱曲の定番でもあったりするこの曲の普遍性は言うまでもないが、このデモ音源では、終盤にかけてどんどん加速していく宮本のボーカルのエモさに、今の日本に向けたメッセージを感じてしまう。それが彼の本意かどうか定かではないが、そう受け取れること自体が、生きることと歌うことが密着した宮本浩次というミュージシャンの生き様の証なのだろう。

  単に歌がうまいシンガーならいくらでもいる。素晴らしいメロディを紡ぐソングライターだってたくさんいる。だが、このカバーアルバムに記録されているのは、「いい曲をいい歌手が歌ってみた」というような生易しいものではない。歌わずにはおれないひとりの男が、自分自身を形作ってきた楽曲ともう一度向き合い、生き様を刻んだアルバム。『ROMANCE』とはそういう作品であり、だからこそ我々はその歌にどこまでも惹かれるのだ。

■小川智宏
元『ROCKIN’ON JAPAN』副編集長。現在はキュレーションアプリ「antenna*」編集長を務めるかたわら、音楽ライターとして雑誌・webメディアなどで幅広く執筆。

宮本浩次 カバーアルバム『ROMANCE』

■作品情報
宮本浩次 カバーアルバム『ROMANCE』
2020年11月18日(水)発売
初回限定盤(CD+CD)¥3,500 +tax
通常盤(CD)¥3,000+tax

<収録楽曲>
01. あなた(作詞:小坂明子 作曲:小坂明子)
02. 異邦人(作詞:久保田 早紀 作曲:久保田 早紀)
03. 二人でお酒を(作詞:山上路夫 作曲:平尾昌晃)
04. 化粧(作詞:中島 みゆき 作曲:中島 みゆき)
05. ロマンス(作詞:阿久悠・作曲:筒美京平)
06. 赤いスイートピー(作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂)
07. 木綿のハンカチーフ-ROMANCE mix-(作詞:松本隆 作曲:筒美京平)
08. 喝采(作詞:吉田 旺 作曲:中村泰士)
09. ジョニィへの伝言(作詞:阿久 悠 作曲:都倉俊一)
10. 白いパラソル(作詞:松本隆 作曲:財津和夫)
11. 恋人がサンタクロース(作詞:松任谷由実 作曲:松任谷由実)
12. First Love(作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル)

<初回限定盤ボーナスCD>
『宮本浩次弾き語りデモ at 作業場』
1. September(作詞:松本隆 作曲:林哲司)
2. 思秋期(作詞:阿久悠 作曲:三木たかし)
3. 私は泣いています(作詞:りりィ 作曲:りりィ)
4. あばよ(作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき)
5. 二人でお酒を(作詞:山上路夫 作曲:平尾昌晃)
6. 翼をください(作詞:山上路夫 作曲:村井邦彦)

宮本浩次 カバーアルバム『ROMANCE』スペシャルサイト

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