松田聖子『SEIKO MATSUDA 2020』で振り返る“40年の軌跡と新たな魅力” 往年の名曲から今を象徴する新曲まで、深く味わう
さらに初めて全編日本語で歌われた「SWEET MEMORIES 〜甘い記憶〜」や「赤いスイートピー English Version」など、松本隆の作詞による名曲の新バージョンも収録。キャリアを代表する楽曲の新たな魅力を味わえるのも、このアルバムの聴きどころだろう。特に心に残るのは、「セイシェルの夕陽〜40th Anniversary〜」。松田聖子の音楽をアレンジャーとして支えてきた大村雅朗(1997年没)の作曲によるこの曲は、アルバム『ユートピア』(1983年)に収録されたAORテイストのロマンティックなナンバー。松田聖子と大村雅朗の絆が感じられることも、このトラックの魅力だ。
また、大瀧詠一が手がけた楽曲「いちご畑でFUN×4」も収録されている。この楽曲は、大瀧の「FUN×4」(1981年リリースの大瀧詠一のアルバム『A LONG VACATION』収録)と松田聖子の「いちご畑でつかまえて」(1981年リリースの松田聖子のアルバム『風立ちぬ』収録)をエディットしたもの。どちらも大瀧自身がプロデュースを手掛けた楽曲で、テンポ、コード感を含めて共通点が多い“姉妹曲”と言っていいだろう。大瀧が自身のラジオ番組で一度だけオンエアした“幻の楽曲”「いちご畑でFUN×4」は、ナイアガラファンにとっても垂涎の音源だろう。
松田聖子が作詞、財津和夫が作曲した新曲「風に向かう一輪の花」も、このアルバムの軸になる楽曲だ。支えてくれたファンに対する想いを反映した歌詞、心地よい三拍子のリズムと大らかに響くメロディが溶け合うこの曲からは、40周年を迎えた彼女自身のリアルな感情が伝わってくる。この2人による共作は、実に37年ぶり。時の流れのなかで再び邂逅した両者が生み出した、新たな名曲だ。
さらに“終わったことは振り返らず、前を向いて進んでいこう”とエールを贈る「La La!! 明日に向かって」、華やかなホーンを取り入れたダンスチューン「40th Party」など、彼女が作詞・作曲を手がけた楽曲もある。1980年代から2010年代までに培ってきたものを糧にしながら、松田聖子は今、新たなフェーズに向かおうとしている。そのことが真っ直ぐに伝わる記念碑的アルバムだと思う。
アルバムのリリースに先がけ、9月22日にNHK総合で『松田聖子スペシャル 風に向かって歌い続けた40年』が放送。松本隆、松任谷由実、篠山紀信、財津和夫のインタビュー、デビュー当時からの貴重な映像によって40年のキャリアを紹介する内容は、ファンを中心に大きな話題となった。この番組のなかで彼女は「素晴らしい方々に曲を書いていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです」「感謝を忘れず、歌い続けていきたい」と涙と笑顔を浮かべながらコメント。アルバム『SEIKO MATUDA 2020』から始まる2020年代の松田聖子にも大いに期待したい。
■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。
■作品情報
松田聖子 40周年記念アルバム『SEIKO MATSUDA 2020』
2020年9月30日(水)発売
<収録曲>
01.瑠璃色の地球 2020
02.セイシェルの夕陽~40th Anniversary~
03. 赤いスイートピー English Version
04. SWEET MEMORIES~甘い記憶~
05.いちご畑でFUN×4
06.風に向かう一輪の花
07.La La!! 明日に向かって
08.40th Party
09.そよ風吹いたら~I can hear the sound of the waves~
10.赤いバラ手に抱え
※Bonus Track ※
11.瑠璃色の地球 2020 Piano Version(初回限定盤・UM STORE盤のみ収録)