Utena Kobayashi、小田朋美、AAAMYYY......先鋭的なソロ作から劇伴・CM曲まで、カルチャー牽引する幅広いソングライティング

 また、ポップ、ジャズ、R&Bの間を行き来する音楽性を持つピアニスト&ボーカリストの小田朋美も取り上げたい。東京藝術大学・作曲科出身の彼女のクラシカルな素養と、ジャズやポップスにもリーチできる才能を菊地成孔が共同プロデューサーとして引き出し、定着させた作品である。近年、ceroのサポートやCRCK/LCKSのメンバーとして、複雑なリズム構築とジャズのコード進行をポップに昇華できるソングライターとして、彼女の参加しているプロジェクトに注目するようになったリスナーも多いはず。映画の劇伴でも菊地成孔とともに『東京喰種 トーキョーグール【S】』や『素敵なダイナマイトスキャンダル』を手掛けており、小田のスリリングなピアニズムが生かされた楽曲が楽しめる。また、資生堂のCMやプロジェクトで様々なインスト曲を奏でていたり、「パンパース」のCMでは安藤裕子の歌う楽曲で暖かなピアノの音色を添えている。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』特別メイキング映像&主題歌MV

 さらに、TempalayのメンバーであるAAAMYYYは、ソロアーティストとしても今の日本のシーンでオルタナティブと称して間違いない感性の持ち主だろう。D.I.Y.センスあふれるエレクトロニックなトラックメイキングから、最近ではよりシンガーソングライターとしてのパーソナリティを曲に落とし込んだ「HOME」、スケール感のある「Utopia」など、音楽的なレンジの広さを証明。サウンドの細部を操れるがゆえに、1人で空気感を作れることが強みと言える。また、DAOKO「チャームポイント」や木村カエラ「clione」など楽曲提供も行っているが、どちらもドリーミーなシンセミュージックという、AAAMYYY登場当時の個性が際立つ仕上がり。作家的にアーティストに合わせた曲作りをするというより、彼女自身の個性を取り入れたい同性のアーティストが多かったのだと思われる。

AAAMYYY - HOME [Official Music Video]
Utopia

 自身名義の作品以外に劇伴などで活躍するソングライターは、大御所の菅野よう子、そして数多くの邦画のサントラで引く手数多な世武裕子の活躍も目覚ましい。今後も幅広いソングライティング、コンポーズで時代を牽引するクリエイターに注目したい。

■石角友香
フリーの音楽ライター、編集者。ぴあ関西版・音楽担当を経てフリーに。現在は「Qetic」「SPiCE」「Skream!」「PMC」などで執筆。音楽以外にカルチャー系やライフスタイル系の取材・執筆も行う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「音楽シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる