映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』日本語吹替版主題歌、LMYK「Unity」 作品のテーマ体現した透明感溢れる1曲に

『羅小黒戦記』主題歌「Unity」、映画のテーマを体現

 11月7日、映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)ぼくが選ぶ未来』の日本語吹替版が公開となった。昨年、小規模ながらも日本国内で字幕版が上映されるとすぐに口コミで評判が高まり、満を持して吹替版が全国上映された形だ。

 そしてそれは、日本語吹替版主題歌「Unity」でデビューとなるアーティスト、LMYKがベールを脱ぐ時でもあった。

 『羅小黒戦記』は中国・北京の寒木春華スタジオのMTJJ監督が制作したWEBアニメシリーズが原点で、その劇場版として制作されたのが本作だ。2019年9月に中国で公開された劇場版は興行収入3.15億人民元(49億円)のヒットを記録。日本では、まず全国数カ所の映画館で字幕版が公開されると、高い評価が口コミで広がって話題になり、吹替版を制作、拡大公開されることとなった。

 『羅小黒戦記』の舞台は、妖精と人間が生きる世界。黒ネコの妖精・シャオヘイ(CV:花澤香菜)は、住んでいた森が人間に開発され、居場所を失ってしまう。街や村をさまよっていたシャオヘイが出会ったのは、同じ妖精のフーシー(CV:櫻井孝宏)だった。彼はシャオヘイを仲間とともに暮らす島へ連れてきて、「これからここは君のうちだ」と言ってくれる。ところが、そこに人間のムゲン(CV:宮野真守)が現れ、フーシーたちを襲ってくる。ムゲンは人間でありながら妖精たちの集う館に所属しており、不穏な動きをする妖精たちを法に基づいて捕える「執行人」だった。戦闘中にフーシーとはぐれたシャオヘイは、ムゲンに捕まってしまう。フーシーたちを襲い、引き離したムゲンにシャオヘイは反発するが、館へ向かう旅をするなかでムゲンのさりげない優しさに触れていく。一方、人間を憎み、自分たちの居場所を取り戻そうとするフーシーの行動は過激さを増していく。2人の間に立つシャオヘイは、激化する妖精と人間の対立の真ん中で選択を迫られることになる。

 そして、今回日本語吹替版の主題歌「Unity」を歌うのがLMYKだ。ドイツ人の父と日本人の母を持ち、アメリカで音楽制作を開始したLMYKは、先述の通り「Unity」でのデビューとなるが、その経緯は異例だ。デビュー前にYouTubeに楽曲をアップしていたLMYK。マイケル・ジャクソンやビヨンセなどを手がけてきたJimmy Jam and Terry Lewisが、その歌声に可能性を見出してプロデュースを申し出、さらにそのデモ音源を聴いた映画制作関係者が日本語吹替版主題歌の制作をオファーし、今回のデビューに至っている。

 『羅小黒戦記』で描かれているのは、妖精になぞらえられた自然と、発展を続ける人間がいかにして共生するかという、シンプルかつ普遍的なテーマだ。人間から妖精の居場所を取り戻したいフーシーと、妖精と人間の間に立って共存を目指すムゲンは対立していくことになるが、それぞれに大義があり、仲間への愛情を持つ彼らに対して、どちらが正義でどちらが悪である、と簡単に切り分けるのは難しい。

 主人公シャオヘイは幼い妖精であり、まだなにものにも染まっていない、ピュアでフラットな視点を持っている。それゆえに、初めて自分に手を差し伸べてくれた同族のフーシーと、共存の意思を持つ異種族であるムゲンとの間で価値観を揺さぶられることになる。そんなシャオヘイの視点を借りながら、観ている側もまた、自分が何を見て、何を選んでいくかを問われることとなる。

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