LiSA「炎」、勢い止まらぬ『鬼滅の刃』旋風でバイラルチャートも首位奪取 “炭治郎の瞳”を通して聴く者の心揺さぶる歌詞

 「炎」の歌詞を紐解いていくと、「紅蓮華」同様に竈門炭治郎の瞳を通した世界が語られていることがわかってくる。そこには煉獄杏寿郎との出会い、そして別れを示唆するようなラインが垣間見える。たとえば〈僕たちは燃え盛る旅の途中で出会い/手を取りそして離した 未来のために〉というラインでは衝撃的な物語の展開を暗示しているし、冒頭歌い出しの〈さよなら ありがとう 声の限り〉という言葉はまさに竈門炭治郎から煉獄杏寿郎に宛てられた胸を締め付けられるような心情の吐露であるように感じられる。「紅蓮華」とは対照的に重厚なバラードに仕上がった本楽曲は、言うなれば鎮魂歌のような楽曲だ。別れの辛さや前に進むしかない葛藤は、これまでも多くの楽曲で触れられてきた普遍的な題材だが、無限列車編を鑑賞した後に本楽曲に触れると、映画のテーマと強く呼応したメッセージがより立体的に浮かび上がる。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は「炎」があってこそ完全なものになり、やっと消化できるようになるのではないだろうか。映画を鑑賞し、絶望感や悲しみをはらんだ観客へ救いの手を差し伸べるのが「炎」なのかもしれない。

LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

 年末に向けて流行語大賞へのノミネートやクライマックスが迫るコミック最終巻の発売など、『鬼滅の刃』旋風の勢いはとどまることがなさそうだ。そして、昨年『NHK紅白歌合戦』へ初出場を果たしたLiSAの2年連続出場を期待せずにはいられない。国民的コンテンツに成長した『鬼滅の刃』が、暗いニュースの多かった2020年を大きな炎で明るく照らし出していく様子を全集中の呼吸で追いかけたいと思う。

■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
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