『It’s so fine!/雨やどり』インタビュー
Machicoに聞く、“笑顔”を伝える歌声ができるまで 『このすば』『プリキュア』楽曲で実感した歌手としての成長
「歌声と作品をリンクできるような表現が出来るようになった」
ーーメロディの高低差も大きくて、特にAメロは低い音から入りますが、それでもMachicoさんの歌声からは前向きさを感じ取れるところに、表現の巧みさを感じました。
Machico:ありがとうございます! 私は声が基本的に高いので、歌が暗くなり過ぎないところが自分の強みだと思うんですけど、下の音を出すのが苦手ではあるので、Aメロの部分は何度か歌い直させていただいて。特にAメロの前半は挑戦的な感じにしてほしいということだったので、歌声に小生意気な感じを乗せるようにしました。『このすば』楽曲はいつも難しいですけど、今回はまた別の難しいテクを織り込んでいただいたので、自分も出来ることが増えて、その分楽しいんですよ。きっとライブで場数を踏むとさらにいい感じに仕上がると思うので、自分のものにしていきたいです。
ーー歌詞に目を向けると、まさに「It's so fine!(=気分は上々!)」といった内容ですね。
Machico:全体的に迷いがなくて強気ですよね。私は性格的に結構ネガティブなので、この曲みたいに悩みや問題に対して常に「いや、できるっしょ!」って突き進んでいる感じが羨ましくて。“そう思わない?”なんて人生であまり言ったことないですから(笑)。そんなこと、自分に自信がある人じゃないと言えないと思うんですよ。私だときっと「えーと……そう思うよね?」ぐらいのテンション感になると思うので(苦笑)。歌っていて「私もこんな人になりたい!」と思いました。
ーー逆にこの曲を歌うことによって、自分が強気になれる感覚もあったのでは?
Machico:たしかに自分がみんなを引っ張っていける力を持てたような気持ちになりました。私は私生活でも賑やかではあるんですけど、リーダーシップを発揮するタイプではなくて、リーダーとして突き進んでくれてる人の隣でワーワー言ってるのが自分の人生の立ち位置なんです(笑)。
ーーでも、最近はリーダー的なポジションになる機会が多いですよね。それこそ今年7月より参加している『IDOL舞SHOW』のNO PRINCESSでは、他のメンバーの先輩格となる不破ひかる役を担当されていますし。
Machico:そうなんです……私もついにそういう世代になったのかと思って(苦笑)。でも、そういう立場にはまだ慣れていないですね。NO PRINCESSでも、自分が最年長ではありますけど、みんながしっかりしているから何とかなっている感があって。誰かの横で賑やかしたい気持ちは常に持った状態なので(笑)。私、頼りに出来そうな人をすぐに見つけられるんです。それは私がこの人生の中で唯一手に入れた才能だと思っていて(笑)。自分が可愛いがってもらえそうなところに行く能力。しかも私は年上の人だけでなく、年下の人にも「甘えるぞ!」という気持ちで生きているので。
ーー甘え上手なんですね(笑)。そういえば兄弟はいるんでしたっけ?
Machico:お兄ちゃんがいます。
ーーということは、きっと妹気質なところがあるんでしょうね。
Machico:しかもお兄ちゃんとは幼稚園の頃から高校までずっと同じ学校だったので、入学してもすぐ「〇〇の妹だよね」みたいな感じで先輩から可愛がられていたから、逆に私が後輩の子を可愛がるという文化が全然なくて(笑)。それに私が出会う年下の子たちは、しっかりした子が多くて、私を頼りにするというよりも、いい意味で適当に接してくれるんです。その意味ではNO PRINCESSのときは新鮮でした。「自分が引っ張っていかなくちゃ」という気持ちにもなりましたし、自分が今まで経験してきたことが少しでもみんなの役に立てればいいなと思ったので。なので、これからは先陣を切っていかなくちゃいけないという気持ちもあるんですけど……う〜、苦手だなあ(苦笑)。
ーー逆に言うと、もう一方の『このすば』タイアップ曲「Happy Magic」は、「It's so fine!」よりも自分の心情に近い部分があったのでは?
Machico:近いですね。ネガティブな気持ちから入りつつ、でも、もっと頑張ろうとなる歌詞なので。実際、この曲の歌詞は自分の中にスッと入ってきましたし、情景が浮かびやすくて、挿絵のある物語を朗読しているような気持ちで歌えました。歌詞が〈雨上がりの 水溜まり浮かぶ〉というセンチメンタルな気持ちから始まるので、そこから全体的に優しさが出るように意識して。スタートがうつむきから始まる明るさだったので、そこから順序だてて優しい歌い方ができましたね。「Happy Magic」と「It's so fine!」では歌い方のテンション感が全然違うものになりました。
ーー曲調もアップテンポで明るいですが、どこかエモーショナルな部分があって、みんなで力を合わせて困難を乗り越えていくような一体感がありますよね。
Machico:ハッピーではあるけど、ちょっと涙が似合うような感じで……そこがズルいところですよね。『このすば』もいつもはすごく賑やかなギャグ作品ですけど、劇場版(『映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』)のときは泣かされましたもん。「あの『このすば』に泣かされた……!」と思って(笑)。「Happy Magic」自体は映画の曲ではないですけど、『このすば』のそういう一面を見たうえで歌ったので、より感情移入できました。(『このすば』の主人公の)カズマたちもいつもはあんな感じだけど、泣かせるときには泣かせにくるんだよなあと思いながら。この曲も「賑やかに見えるでしょ? でも実はね……」という気持ちを込めながら歌いました。
ーーMachicoさんが歌う『このすば』タイアップ曲はこれで8曲になりましたが、それらの楽曲を通じてファンやリスナーに届けたい気持ちを言葉にするとしたら?
Machico:『このすば』は、難しいことを考えなくても、いま目の前にあることを楽しもう! という作品なので、私も曲を聴いてもらっているときは前向きになってほしい気持ちがありますし、重いものを軽くしてくれるような楽曲になればいいなと思っています。それは作品を通してでも、ライブでも思うことで、みんなにはこの曲を聴いているときだけは自由な気持ちになってもらえればと思いますね。
ーー『このすば』楽曲におけるMachicoさんの歌を聴いていると元気をもらえますし、きっとその前向きさこそが『このすば』楽曲らしさなんだと思います。
Machico:たしかに自分の歌声で笑顔感を伝えられるようになったかもしれないです。そう考えると「fantastic dreamer」のときは、まだ自分が歌で感情を表現でき始めたぐらいの頃だったけど、そこから作品への理解も深まって、新しい曲を歌うごとに、歌声と作品をちゃんとリンクできるような表現が出来るようになりました。私はデビュー当時、マネージャーさんに「歌はうまいしピッチは合ってるけど、抑揚がないし、感情が伝わってこない」とよく言われていたんです。その頃は言葉を大げさに言うことが抑揚だと思っていたんですけど、今は同じメロディでも上から入ったほうがにっこりしたふうに聴こえるとか、歌い方のアプローチの種類が増えてきて。明るさや笑顔感をちゃんと伝えられるようになったのであれば嬉しいです。