BAROQUEがヴィジュアル系シーンに持ち込んだ鮮やかなカウンターカルチャー 音楽や芸術を追求し続けた姿勢に迫る
歴史に残る新たなジャンルを築き上げたBAROQUEだが、シーンにオサレ系が流行りだした頃、時代を先取りする彼らは新たな音楽を求め、すでに進化を遂げていた。2004年にリリースされた1stアルバム『sug life』は、シューゲイザーやエレクトロニカ、ヒップホップなどの要素を取り入れた画期的な作品で、エモーショナルな音楽が好まれやすいヴィジュアル系シーンでは当時戸惑う声も多かったが、コアな音楽ファンからは高い評価を得ており、ギタリストのCazqui(Cazqui's Brutal Orchestra/猫曼珠)もこのアルバムに影響を受けたと明かしている(参照:Vif)。
良質な作品をリリースし、絶頂の人気を誇る中、2004年にBAROQUEは一時解散。怜と圭(Gt)は前身バンドであるkannivalismを再始動させて音楽活動を続け、7年後の2011年にBAROQUEを復活させる。復活後に初めてリリースしたシングルが、オリコンチャートのトップ5内に3作同時ランクインするなど輝かしい記録を残すが、2012年のツアー中に万作(Ba)が失踪し、脱退へ。その後晃(Gt)も脱退し、激動の末、BAROQUEは怜と圭の2人のみになってしまう。
しかし、その後も彼らの新たな音楽を追求する意志は揺るがず、洗練された楽曲たちを次々と世に送り出していく。視覚的なアプローチにも力を入れ、2015年にはアルバム『PLANETARY SECRET』の楽曲イメージに合わせてプラネタリウムでの先行試聴会を行ない、2018年の全国ツアーのファイナルではフラワーアーティストをステージ演出に迎えるなど、音楽のもつ世界観をさらに強く感じられる新たな楽しみ方を追求した。新型コロナウイルスの影響が出始めた2020年4月には、新曲「STAY」のミュージックビデオをファン参加型で作成し、ライブで実際に会えないファンとも音楽を通して心を通わせるなど、どんなに苦しいときでも、彼らは音楽や芸術を追求することを諦めなかった。その姿は、彼らが自身の行動指針のように公式ホームページに掲げた言葉を体現しているようにも感じた。
“音楽、芸術本来の持つ力を信じ、人々に希望を与え、この世界で生きるということの素晴らしさを伝えていきたい。” (引用:BAROQUE オフィシャルホームページ)
2004年に一時解散した際に彼らは、“baroqueは君たちに預ける”という言葉を残した。無期限活動休止が発表された今、メンバーはもうBAROQUEの音楽を進化させることも、新しく生み出すこともできない。できるのは、私たちリスナーが彼らの音楽を愛し、その魅力を発信することだけである。BAROQUEの音楽は、いま再び私たちに預けられた。彼らが残した作品たちがいつまでも色褪せないよう、愛し続けていきたい。
■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。