トラックメイクから演奏・歌唱もこなす若き才能、SPENSR “夏の終わりのラブソング集”『MOIST FUTURE』を語る

マルチな才能 SPENSRの楽曲作りに迫る

「女性らしい言葉で歌うことによって普遍的なものを作りたい」

ーーリード曲の「LIPS」は、複数のリズムが混じり合うのが印象的でした。いい意味で引っかかりがあって、何度も聴きたくなる。

SPENSR:基本のリズムは三連符なんですけど、サビだけ普通の4拍子になるんです。しかも、ビートは完全に手打ちでやってるから規則的じゃないし、後ろにモタった感じが好きなんで、なおさら普通の感じに当てはまらないという。ウチのバンドメンバーも「ライブですげえやりづれえ」って言います(笑)。

ーー自分でも歌いづらくないですか?(笑)。

SPENSR:自分でやるぶんには、自分のビート感があるからやりにくくないんですけど。これはサビ以外の三連のトラックに合わせてメロディを考えて。サビは一旦ビートを抜いて別のメロディを考えて、そのトラックを4拍子のビートに差し替えるっていう作り方をしたんです。

LIPS

ーーSPENSRさんは、トラック制作、楽器演奏、作詞作曲、ボーカルとマルチにこなしますが、制作するときはどこから始まることが多いんですか?

SPENSR:ビートが最初にできるパターンが多いですね。手打ちでビート打ち込んでいって、そこに他の楽器の音をどんどん重ねていってトラックを作り、メロディをあとでつけることが多いです。で、最後に歌詞。

ーー作っていくときに決まりの手順はありますか?

SPENSR:Ableton Live(DAWソフトウェア)を使ってるんですけど、ビートを何種類もストックしていけるんです。だから、ビートとかベースラインとかシンセフレーズのストックをいっぱい作っておいて、それを組み合わせていくっていう作業を最初に絶対やりますね。

ーーSPENSRさんの作る楽曲はシンセの音色がすごく特徴的ですよね。70年代感もあるし、時にトランシーだったりノイジーだったりする。メロウな曲調でも、シンセが派手で主張してくるところがあるように思います。

SPENSR:シンセはAbleton Liveに入ってる音をいじって編集してるだけなんですけど、音色としてはそういう音が好きで、どうしても選びがちですね。でも、エフェクトはいろいろかけて、他にはないシンセの音にしようとしてます。あと、基本的に歌をメインに考えて作ってるんですけど、歌のない部分……間奏とかを作るのも好きなんです。だから、トラックを作るときに、そっちに意識を向けたり、時間をかけちゃうことも結構ありますね。

ーー歌詞も特徴があって、今回の4曲は、主語が「私」で、語尾が「の」とか「わ」とか女性語になっています。

SPENSR:今回だけじゃなくて、前のアルバムもそういうふうに作ってます。男が歌う女性目線を意識してるんです。歌詞を考えてる僕は男なので、男の感性は入るんですけど、「これ、女性が歌ったら合うだろうな」とか、その女性っぽさを男の自分が歌ったらどうなるか? って考えながら書いてますね。女性らしい言葉を使うことによって、男性だけじゃなくて女性でも受け取れる普遍的なものを作りたいんです。どっちの性別の人が聴いても当てはまる感じにしたいなって。

ーーそれに歌声も独特ですよね。少しこもり気味で、それこそMOISTな感じというか、湿り気と粘り気がある。

SPENSR:UKロックに影響を受けたバンドをやっていた頃に、英語で全部歌ってたんです。KIWILIPSで初めて日本語で歌ったので、英語っぽいイントネーションとか発音が染みついちゃってるんだと思います。前はもっとポップな声がいいなと思ってたんですけど、ライブをやってると「声が独特でいいね」って言われるようになったんで、今はこの声が武器だなと思ってます。

ーーその声が、今回のEPでは垢抜けた印象を受けました。

SPENSR:今回のEPではメロディのピッチを少し上げて作ってるんです。歌ってて一番気持ちいいところをちゃんと探して作っていて。たぶんピッチが上がっているぶん、今までより声が明るい感じになってるんだと思います。あと前回のアルバムを作ってるときに、もっとメロディを考えようというふうに意識が変化してきたんです。今回もメロディにこだわったし、今後もメロディにもっと力を注いでいきたい。発声や歌い方も含めて最強のメロディを作りたいです。

ーー今回のEPはすべてラブソングですが、今後、歌うテーマに変化はありそうですか?

SPENSR:基本的にラブソングに仕上げるのが好きなんです。元になる話は友達との会話でもそれをラブソングのように書くとか、恋愛に見立てて書くとか。今後もそういうスタイルで書いていくと思います。

ーー今後のライブ活動については、どのように考えていますか?

SPENSR:本当は5月にアルバムを出したあと、ライブを結構やる予定だったんです。それがコロナの影響でできなくなったから、今はオンラインライブを月イチくらいのペースでやっています。

ーー現在、バンドはどのような編成で演奏することが多いんですか?

SPENSR:ドラム、ベース、キーボード、マニピュレーターと僕の5人でやっていて、僕は曲によってギターを弾きながら歌ってます。あと、少人数のエレクトロセットもやっていて、ドラム役がパットとサンプラー、マニピュレーターがシンセ系の音を出して、あとは僕という3人編成もあります。リスナー目線で考えると、コロナによってオンラインで楽しめる娯楽が1個増えたと思うんです。だから、デジタルコンテンツは凝ったものを作っていきたいという思いが今はいちばん強いです。配信ライブもそうだし、音楽じゃなくてもネット上で見られるコンテンツをいろいろ作っていきたいと考えてます。

SPENSR『MOIST FUTURE』

■リリース情報
SPENSR『MOIST FUTURE』
2020年9月9日(水) ¥1,300+税

<トラックリスト>
1. LIPS
2. U&I
3. Polyline
4. MOIST

■ライブ情報
『MOIST FUTURE Release Party』
2020年9月17日(木)
会場:clubasia
時間:OPEN&START 18:30
出演:SPENSR / DinoJr. / all about paradise / JUDGEMAN / 斎藤雄
料金:ADV ¥2,000 / DOOR ¥2,500(+1D)

『mona records「S.W.I.M.」PARTY』
日時:2020年9月26日(土)
会場:東京・下北沢 mona records
時間:OPEN 14:00 / START 14:30
料金:来場¥2,400(1D代別途) / 配信¥500
出演:asmi / SPENSR / 碧海祐人 / カメレオン・ライム・ ウーピーパイ……and more

■関連リンク
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