秦 基博、歌とギターで生み出した奥深く豊かな音楽世界 活動の原点を感じさせたF.A.D YOKOHAMAからの配信ライブレポート

秦 基博、原点を感じさせた配信ライブレポ

 この日のライブでは、最新アルバム『コペルニクス』の楽曲も披露された。現行のR&B、ヒップホップにも通じるループ感のあるリフを軸にした「Lost」、ルーパーを使い、その場でトラックを作ったうえでパフォーマンスされたシングル曲「Raspberry Lover」。デビュー10周年(2017年)のタイミングでそれまでの活動を総括した後、それまでのパブリックイメージやジャンルに捉われず、自由な発想に従いながら制作を続けていたという秦。“転換点であり、新しい出発でもある”と位置づけられたアルバム『コペルニクス』の充実ぶりは、弾き語りというスタイルでも存分に味わうことができた。アレンジャー、プロデューサー的な資質を持ち、一貫してサウンドメイクにもこだわってきた彼だが、真ん中にあるのはやはり、歌とギター。アコギの弾き語りというスタイルで、こんなにも豊かな音楽の世界を生み出せるシンガーソングライターは本当に稀だと思う。

 爽やかで切ないポップチューン「スミレ」から、ライブは後半に向かう。

 「皆さん、どんなふうに観てくれてるんでしょうか? スマホとかパソコンとか、いろんな端末の前で、お酒を飲みながら......とか。普段のライブでは見られないような、僕の毛穴まで見てくれてるわけでしょ(笑)。配信ライブならでは楽しみ方をしてもらえれば」というMCに導かれたのは、「ひまわりの約束」。音源、ライブ、テレビ番組などを通し、数えきれないほど聴いてきた楽曲だが、この日、この場所でしか生まれない表現が加わることで、全く新しい感動へとつながる。これこそ“ライブ”が持ち得るパワーだと改めて実感させられた。

 さらに〈君に今 会いたいんだ 会いに行くよ〉というラインに胸を打たれた「鱗(うろこ)」、“たとえ離れ離れであっても、つながっている”という思いを届けた「朝が来る前に」でライブは終了。秦基博の普遍的な音楽性と現在のモード、今の時代にふさわしいメッセージを直接的に体感できる、素晴らしいステージだった。ライブ中のMCで秦は「『コペルニクス』のツアーも配信という形でしっかり構築したものを届けられればと考えています」とコメント。今後のオンラインライブにもぜひ注目してほしい。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

■セットリスト
『Hata Motohiro Live at F.A.D YOKOHAMA 2020』
1.シンクロ
2.フォーエバーソング
3.色彩
4.恋の奴隷
5.Lost
6.在る
7.Raspberry Lover
8.9inch Space Ship
9.スミレ
10. ひまわりの約束
11. 鱗(うろこ)
12. 朝が来る前に

秦 基博 OFFICIAL WEB SITE

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