Year Of The Knife、Bury Tomorrow、DIR EN GREY……2000年代ヘヴィサウンドの“今”が刻まれた新作6選

Static-X『Project Regeneration Vol.1』

Static-X『Project Regeneration Vol.1』

 Static-Xは1999年にアルバム『Wisconsin Death Trip』でメジャーデビューを果たした、USニューメタルバンドの代表格的存在。グルーヴィなバンドアンサンブルとデジタルエフェクトを施したアレンジが魅力で、特にここ日本ではコーイチ・フクダ(Gt)という日本人メンバーを擁することで話題となりました。しかし、2014年に主要メンバーのウェイン・スタティック(Vo/Gt)が急逝。バンドとしての復活は絶望的となりましたが、コーイチ、トニー・カンポス(Ba)、ケン・ジェイ(Dr)のオリジナルメンバーが2018年にバンドを再始動。“Project Regeneration”と題したプロジェクト名とともに、覆面シンガーのXer0を迎えて新作制作をスタートさせました。

 当初の予定より1年以上遅れてのリリースとなった再始動アルバム『Project Regeneration Vol.1』は、ウェインが2004〜5年頃に制作したバンドのデモテープと生前制作途中だったソロアルバムのデモテープに、残されたメンバー3人が演奏を重ねていったもので、曲によってはウェインのボーカルがそのまま使われているものも含まれています。サウンド的にはこのメンツで演奏しているだけあって、聴けばすぐにStatic-Xのそれだとわかる“らしさ”全開。新フロントマンのXer0の歌声もウェインに近いものがあるので、違和感なく楽しめると思います。スタイル的にはひと世代前といった印象が否めませんが、これも2000年代ならではの音。温故知新という意味も込めて、この並びで紹介させてもらいました。

Static X - Bring You Down (Project Regeneration) Official Video

Black Veil Brides『Re-Stitch These Wounds』

Black Veil Brides『Re-Stitch These Wounds』

 Black Veil Bridesは2010年代のUSメタルシーンの中でも、セールス的に成功を収めた数少ないグラムメタルバンドのひとつ。KISSや初期Motley Crueを彷彿とさせるグラマラスなメイク&衣装は、旧世代リスナーにはグラムメタル/L.A.メタルなどとイメージを重ね、2000年代以降のリスナーにはMy Chemical Romanceあたりのエモと並列の印象があるのではないでしょうか。しかし、その派手な見た目のわりに鳴らすサウンドは骨太のメタルコア。アンディ・ビアサック(Vo)の中音域がベースのボーカルもあって、唯一無二の個性を発揮し続けています。

 今回紹介するのは、2010年にインディーズレーベルからリリースされたものの、いきなり全米36位という好成績を残したデビュー作『We Stitch These Wounds』のリレコーディングアルバム『Re-Stitch These Wounds』です。これは同デビューアルバムの発売10周年を記念して制作されたもので、新たに契約した<Sumerian Records>からの初アルバム。オリジナル盤と同じ構成、同じアレンジながらも、10年前からリズム隊が交代していること、またミュージシャンとしての経験の積み重ねが功を奏し、新鮮な気持ちで触れることができる1枚となっています。音質も格段にレベルアップしており、慣れ親しんだ楽曲群ながらもニューアルバムを楽しむ気分で聴くことができるはずです。

BLACK VEIL BRIDES - RE-STITCH THESE WOUNDS FULL ALBUM TEASER

Sharptooth『Transitional Forms』

Sharptooth『Transitional Forms』

 今回最後に紹介するのは、アメリカ・メリーランド州バルチモア出身の5人組バンド・Sharptoothの2ndアルバム『Transitional Forms』です。最初に取り上げたYear Of The Knife同様、2014年結成と若手に部類するバンドですが、ローレン・カーシャーン(Vo)という女性フロントの緩急に富んだボーカルと、メロディックハードコアを軸にしながらもヘヴィさが際立つバンドアンサンブルで注目を集め始めています。

 <Pure Noise Records>からのデビューアルバム『Clever Girl』(2017年)以来、実に3年ぶりに届けられたこのアルバムは、まだまだパンク色の強かった前作から急激な成長を遂げ、その重心の低さや音の鋭さはメタルコア側へと接近。ローレンのボーカルもより凄みを増し、スクリームだけを聴いたら性別が認識できないのではないでしょうか。そこに、メロウに歌い上げるパートを絡めることで、このバンドにしか出せないゴツさと華やかさを同時にアピール。その個性を急速に強めることに成功しています。また、Anti-Flagのジャスティン・セイン(Vo/Gt)がゲスト参加した楽曲も用意されており、パンク魂も忘れていない。そういった意味で本作はメタル/パンク/ハードコア/ラウドをつなぐ稀有な1枚になるかもしれません。今後の成長が楽しみでならないバンドのひとつです。

Sharptooth "Say Nothing (In The Absence Of Content)" Official Music Video

■西廣智一(にしびろともかず)Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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