ヒゲダンが『HELLO EP』を通して伝えた情熱とパワー 『CDTVライブ!ライブ!』『SONGS』出演にも期待
2020年上半期Billboard JAPAN総合ソング・チャート“JAPAN HOT100”では「Pretender」と「I LOVE...」がワン・ツー・フィニッシュ。5位に「宿命」、7位に「イエスタデイ」と1アーティストで4曲がランクインするというぶっちぎり記録を叩き出したOfficial髭男dism。ちなみに各種ストリーミングサービスにおいて「Pretender」は2億再生、「I LOVE...」は1億再生を突破し、いまだその記録を更新中だ。また、残念ながら延期になったが、3月からはバンド史上最大キャパの『Official髭男dism Tour 2020 -Arena Travelers-』も組まれていた。名実ともにトップバンドとなった彼らがフィジカルCDとしては『I LOVE...』に続く4曲入りEP『HELLO EP』を8月5日にリリースした。
大型タイアップを携えた話題の3曲「HELLO」(フジテレビ系『めざましテレビ』テーマソング)、「Laughter」(映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』主題歌)、「パラボラ」(2020年「カルピスウォーター」CMソング)に加え、アマチュア時代の楽曲「夏模様の猫」の新録を収録した本作。
デジタルリリースされた順番で言うと「パラボラ」。ドリーミーな鍵盤とゆったりしたビートからギアが入るように8ビートに変化するアレンジに乗せて、未来の自分が放つ光をよすがにするような強い思いが歌われる。4月リリースだったこともあり、普段の年とは異なり、新生活にもより不安な気持ちを抱いていた人を確かに勇気づけたことだろう。
「Laughter」はお馴染み『コンフィデンスマンJP』と3度目のタッグ。低音弦から始まる淡々としたギターリフから、徐々に揚力を与えるようなストリングスアレンジがサビで〈翼は動きますか?本当に飛べますか?〉と自問しつつ飛翔する心算である主人公の姿を強く印象付ける。スケール感のあるミディアムバラードの中に緩急をつけ、〈今日も歌い続けた〉で終わらず、~〈告げるための歌〉と同じメロディで繰り返すことで思いを自分の中に深く持ち続けさせてくれる効果を生み出している。この楽曲のMVはこれまでも彼らの作品を手掛けてきた新保拓人が監督を務めているが、メンバーは登場せず、映画のような世界観で少女二人の冒険物語と友情を表現。そのことで聴き手に様々な受け取り方を許容するスタンスが見えた。
さらに3月末から『めざましテレビ』のテーマソングとして馴染んでいた「HELLO」が7月に先行配信を開始。EPのテーマとも言える新しい世界へハローと告げる、まさに2020年のヒゲダンのニューフェーズを示唆したこの曲。ソウルフレーバーのあるロックナンバーだが、ビートの重さやギターのソリッドなコード感が明るさの中にもタフな側面を見せる。ちなみに歌詞に〈あのビルの屋上見下ろす街中の景色は1つの模様〉とあり、配信前日の『ミュージックステーション3時間半スペシャル』では、とある建物の屋上からこの曲と、長く愛されているライブの定番ナンバー「115万キロのフィルム」を演奏したことも記憶に新しい。
一方、ピアノ弾き語りで新録した「夏模様の猫」はシンプルであるがゆえに藤原聡(Vo/Pf)の表現力や息遣いが繊細に伝わる仕上がりだ。このEPのCD+DVD盤の映像には『Official髭男dism Tour 19/20 -Hall Travelers-』2月10日のパシフィコ横浜公演から主にアルバム『Traveler』の楽曲を収録。音源とはすでに違うライブアレンジや、ホーン隊やパーカッション、キーボーディストらサポートメンバーとの重奏的かつ、緩急を押さえたプレイが楽しめる。メンバーの演奏力の高さや、楽器をスイッチして演奏する面白さ、そしてファンとのコミュニケーションも堪能できる仕上がりがますますライブを渇望してしまう。