寺嶋由芙に聞く、ディアステージ卒業とソロアイドルとしてのこれから「びっくりさせるけど、がっかりさせないことが大事」
ソロアイドルとして活動を続ける“ゆっふぃー”こと寺嶋由芙。6月末に、4年間所属した事務所・ディアステージを卒業することを発表した。今回リアルサウンドでは発表後の彼女にインタビューを行い、卒業を決めた経緯や現在のアイドルシーン、配信でのライブ活動、そして今後についてまでを聞いた。本来であれば直接伝えたかった、という寺嶋のファンへの思いも明かされた貴重なインタビューになっている。【記事最後にオリジナル動画とプレゼント情報あり】
今は“ソロのメリット”が生かせる時期かもしれない
ーーディアステージの卒業はいつ頃から考えていたんですか?
寺嶋由芙(以下、寺嶋):2年くらい前になるのかな。2018年10月に5周年記念ワンマンライブを開催した時に、ソロアイドルとして5周年を迎えて、30代が見えてきて、「もうちょっとオタク以外のところにも届く活動がしたいな」と思えるようになって。周りに年下の子が増えてきていたので、その子たちが長く続けられるように、というのもあります。アイドルはある程度の年齢になったら辞めちゃう子も多いので、そうじゃなくて、「ゆっふぃーさんみたいにやれば、長く続けられるんだ」と思ってもらえる活動を見せたいな、と。そのために「今のままでいいのかな?」と考え始めました。
ーーこのタイミングで卒業に至ったきっかけは何かあったのでしょうか?
寺嶋:きっかけがあったというよりは、だんだんと、ですね。活動していく中で窮屈に思う、と言うと変なんですけど、ディアステージはグループアイドルの多い事務所だったので、どうしてもグループ基準で進んでいく部分があって。そろそろ画一化されていないところでやっていくべきかなと感じるようになりました。そういうことを徐々に周りに話すようになったのが、ここ1年くらいです。
ーー卒業されて、今後はフリーでやっていくんでしょうか?
寺嶋:いや、事務所に入りたいです。本当に、入りたいです(笑)。
ーー今は探し中、ということですね。
寺嶋:そうですね。独立しなよ、と言っていただくことも多いですし、里咲りさちゃんみたいに自分で社長になったりする方もいますが、私は会社を作って寺嶋由芙をプロデュースしていきます、他のアイドルをプロデュースします、ということは全然考えていなくて。どちらかというと、今後長く活動するために、大人のアイドルをプロデュースしたい、そしてソロアイドルをどう動かすかを一緒に考えてくださる方がいたらぜひ一緒にやりたいし、むしろそういうことをやっていきたいから、ディアステージを卒業したのもあります。全部自分でできるからやめます、というわけではなくて、ディアステージのやり方でやるべきことはたくさん経験させてもらったから、まだ手が届いていない分野で、もうちょっとお茶の間に届くような活動をするにはどうしたらいいかも含めて、ご一緒できる人を探したいなと思っているところです。
ーー最初に発表を見たときは、自分でできることを増やしていきたくてフリーになるのかな、と思ったのですが。
寺嶋:もちろん増やしていきたいし、経験もしたいです。今までは事務所に任せきりで、お仕事がどうやって決まるのか、決まった後に誰が動いてくれているのか、そこにいくらお金がかかっていたり、動いたりしているのかが、正直あまりわからなかったんです。でも、自分の仕事がどうやって動いているのか分からない状態でやっているって、すごく無責任だなと思って。だから1回フリーになることで、実際にどう物事が動いていくのかを知る機会は作りたいなと思ったんです。とは言え、それを今後10年続けていく、とはあまり考えていないです。
ーーディアステージに所属した4年間を振り返ってみて、印象的だった出来事や成長したと思う部分はありますか。
寺嶋:ソロアイドルになってから、最初の1~2年はバンドが多い事務所にいたんです。なので、アイドルが私だけだったし、同世代の女子も少なかったので、ある意味ちょっと特別扱いをしてもらっていた部分がありました。でも、ディアステージはみんなアイドルだから、同じステージ、立ち位置で色々なことを教えてくれる子がいたり、私を好きだと言って入ってきてくれる子がいたり……そうやってアイドルにまみれる経験が実は初めてでした。そういう事務所に入らないまま、ソロアイドルとしてずっと活動していたら、ちょっと経験不足な部分もあったと思うので、グループに所属していない分、ディアステージという大きなグループに入れてもらったことがすごく良かったなと思っています。
ーーソロデビュー当初はグループアイドルの全盛期だったと思うのですが、そこから7年、活動を続けられている理由は何でしょう?
寺嶋:戦国時代と言われていろいろなグループが生まれた中から、やっぱりスキルがあったり、志のあるグループが残っている感じがするので、自分もそこはしっかり磨いて、持って、残っていかなくちゃいけないなと。それはグループ、ソロ、関係なく思っています。あと、オタクのみんなが楽しくついていっているグループが楽しく残っているような気がします。私も7年活動していると、オタクたちが結婚したり、子供が生まれたりするんですよ。そういう人生のステップを経ても付いてきてくれるオタクがいるって、すごくありがたいなと思います。
ーー側から見ていても、寺嶋さんはファンと良い関係性を築いているように感じます。でも本当に、ソロアイドルはなかなか増えないですよね。
寺嶋:「令和はソロの時代だ」と言ってもう2年経つんですけど、相変わらずあまり増えないですね(笑)。小桃音まいちゃんは卒業したので、吉川友ちゃんくらいじゃないですか? グループだとどうしてもみんなのバランスを考えて、メンバーカラーがあって、とかあるじゃないですか。ソロだったらずっとセンターだし、衣装も好きなものを作ってもらえる、と言うと語弊がありますけど、曲も含め、自分に合ったものを作ってもらえるから「ソロはいいぞ」と思っているんですけどね。
でも、ソロアイドルって動きやすいから、コロナの影響で増えるんじゃないか、という意見もありますよね。“密”がないので。移動も大所帯のグループよりは、多少気持ちが楽ですし。ソロだと自分の体調管理を気をつけていれば良いというか、10人、20人とかになってくると、全員がいつもベストコンディションというのは難しいと思うから、今はソロのメリットが生かせる時期かもしれないなと。ソロだからできることを考えておこうと思っています。
ーーグループを卒業したら、“もうアイドルではない”という感じもありますよね。
寺嶋:1人になる時は女優とか、別の道に行く時と思っている子が多いかもしれないです。まぁでも、そのグループがすごく良い環境だったということじゃないですかね。鈴木愛理ちゃんはアイドル時代のことを否定せずにアーティストとして活動しているから、めちゃくちゃ希望だなと思います。「アイドルのことはもう忘れます」と言われたら悲しいけど、℃-uteだったこともBuono!だったことも背負ってやっているから、かっこいいなって。
ーー最近は“清純派”だけでないアイドルも増え、シーン全体で多様化が進んでいます。寺嶋さんの理想のアイドル像はデビュー当初と変わらないですか?
寺嶋:私は安倍なつみさんの清純なオーラというか、純な感じが好きで。自分もそこを目指したいなと思っています。もちろん、モーニング娘。の中にいた“なっち”と、まだ何者でもない寺嶋由芙だと、同じところを目指すのがまず無理があるので、そのまま目指すというよりは、今の自分の位置から何ができるかな、という感じです。過激なことや飛び道具的なことができる子を正直羨ましく思うこともあるんですけど、私は本当に真面目に、人と争わず、楽しく、仲良く生きていきたいなと思っていて。
ーー寺嶋さんの平和主義者的な部分はアイドルシーンの中では貴重なものなのかもしれません。
寺嶋:私はそんなに戦うことが得意じゃなくて。それこそディアステージにいた時は、自分をアピールすることが上手で、どんどん前に出ていく子がいっぱいいる中で、「どうぞどうぞ」って遠慮しちゃって(笑)。だから、ディアステージでは、後列にいたメンバーが前に行く、みたいな頑張りに間近で刺激をもらえたのがすごく良かったと思っています。私はソロだからいつもセンターだし、常にマイクを持っているから、甘えちゃいけないというか、これが普通だと思っちゃいけないんだろうなと思います。
ーーなるほど。アイドルとして大切にしていることや、アイドル活動の軸になっていることはありますか?
寺嶋:オタクが喜んでくれることです。びっくりさせるけど、がっかりさせないことが大事。ずっとディレクションしてくれている加茂啓太郎さんが「予想は裏切り、期待に応える」と言っていたので、それも大切だなと思っています。