乃木坂46×小室哲哉による「Route 246」レビュー:“TKサウンド”を深く知る人から若いリスナーまでを繋ぐ楽曲に

 「Route 246」を聴いてみると、これぞ“王道のTKサウンド”という雰囲気の楽曲だった。イントロの電子音、サビのキャッチーさ、すっと楽曲に落ち着きを持たすようなAメロ、フックとなるBメロ、突然の転調……4分弱の楽曲だが流れるような展開が見事で「もう1度聴きたい……」と思わせてくれるような中毒性のあるサウンドだ。乃木坂46が好きで、TKサウンドを通っていない若いファン層にはむしろ新鮮さを感じさせてくれるのではないだろうか。

 なによりライブ映えするのは間違いない。ミュージックビデオのティザー編がYouTubeで公開されたが、メンバーたちが、クールな表情だったり、不敵な笑みを浮かべたりしながら小室の手がけるダンスチューンに合わせてキレのあるパフォーマンスを繰り広げている。新型コロナウイルスの影響もありファンの前でお披露目するのは難しい時期だが、いつかライブで披露された際に会場を熱くさせることは疑う余地がないだろう。

乃木坂46 『Route 246』Teaser

 小室が説明している通り、今回の楽曲のコンセプトは「友情」だ。楽曲の所々に散りばめられている〈Hang in there〉という歌詞は「頑張れ」という意味で、新型コロナウイルスがもたらしたこの状況下で、多くの人の心に素直に響いてくる言葉だと思えるし、秋元が友人の小室へと向けたメッセージのようにも聞こえてくる。〈いつかの場所から 歩き出せばいい 誰も変われるんだ 人は進化する やがて過去を忘れ そして明日を生きる〉という歌詞も、どこか小室の状況にリンクするように感じる。

 事の真相はわからないが、例え秋元が小室に向けたメッセージソングだとしても、乃木坂46というフィルターを通すことで大衆に向けた楽曲となり、多くの人の共感を呼んでいくことだろう。

 2020年に生まれた新たなTKサウンド「Route 246」は、90年代の“TKブーム”を深く知る者から、令和を生きる若者を繋いでくれるような楽曲になるのではないだろうか。「懐かしい」と感じる者、「新鮮」だと捉える者……「小室哲哉×乃木坂46」という掛け合わせによって起きた化学反応で、様々な受け方が出来る作品に仕上がっているのだ。

 そしていつかこの曲で乃木坂46とファンが一体となり心を通わせ、会場を熱くする日を待ち望んでやまない。

■中山洋平
1983年生まれ。フリーランスの編集・ライター。ボウリング、洋服、ギター、サウナ好き。Twitter

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