米津玄師、サカナクション、never young beach......奥山由之が手がける驚きと温かみが詰まった映像作品
他にも奥山が手掛けたユニークなMVは多く、そのどれもが創意工夫に満ちている。
サカナクション「スローモーション」のMVは、サイケデリックなテレビ番組テイスト。突然のダンスや謎の装置のシュールさを強調する解像度低めな映像が脳を揺さぶる作品だ。シンセポップなサウンドから自由に連想したような遊び心たっぷりの映像で、繊細な表現だけではなく、大きなインパクトを放つアプロ―チも提示している。
カネコアヤノ「ロマンス宣言」のMVはモノクロ映像だ。幕開けから飾らない佇まいや少し笑い出しそうな表情を捉え、ズームやコマ撮りを用いてエネルギッシュに仕上げたユーモラスな逸品。歌謡曲に根差した「ロマンス宣言」のイメージを膨らませ、カネコアヤノのチャーミングな魅力を躍動させている。
奥山由之は過去にインタビューで、自身の写真について「ビジュアル表現ではなくて『人に何かを伝える』人と何かを共有する』ための術」と語っている。それは映像作品でも近い印象を受ける。楽曲から得たインスピレーションや着想した場面を具現化することが、聴き手と曲世界を共有しながらイメージを高める作品へと繋がっているのだろう。日常に宿る温かみと未知なる驚き、両極端などちらをも描いてくれる奥山由之の作品にこれからも目が離せない。
■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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