jon-YAKITORY、てにをは、柊キライ......SNSでブレイク中の新世代ボカロPたち 癖になるサビと言葉遊びに注目
最後は、てにをはと同様に、歌い手界隈で旋風を巻き起こしている柊キライを紹介したい。2019年1月10日に公開した「ビイドロ」より、ボカロPとしての活動を開始した柊キライ。彼の楽曲は、全体的に暗鬱で、不安定な要素が強い。同年8月19日に公開した「オートファジー」以降、MVの動画・イラストをWOOMAが担当するようになってからは、再生回数も100万回を超え、大きく伸びていく。そんな中、どこまでも落ちるような柊キライの世界観が揺るがないものになるきっかけとなったのが、今年4月26日に公開した「ボッカデラベリタ」。まるで暗闇の中、ブランコがゆらゆらと異様な音を立てて揺れ続けているかのようなドラスティックなサウンドが鳴るイントロから始まる同曲のMVは、7月6日現在には、390万回再生を記録した。また、TikTokでは、「ボッカデラベリタ」の音源の使用だけではなく、MVに出演する女性(魅朕)に扮して歌っている女子のユーザーが多数見られることから、WOOMAのイラストが楽曲に植え付けているインパクトの大きさを知ることもできる。サビにある〈アイアイアイヘイチュー な な な な なんですの〉〈あ あ あ あ あるべき場所へ/あ あ あ あ あたし導く/あ あ あ あ 奈落の底で〉など、柊キライの楽曲は、特にサビで、母音を意識しながら、同じ音をリピートする傾向にある。そこに確かな中毒性が生まれているのだ。
上記の3曲がTikTokで使用されていたのは、遊び心のある歌詞を綴ったサビを中心としたフレーズ。そこから言えるのは、ボカロ曲には、共感を呼ぶ歌詞以上に、サビへの爆発力と言葉遊びが長けている歌詞が多いこと。ボカロシーンのリスナーの年齢層が、TikTok主要ユーザーの10代、20代と合致していることも踏まえれば、今後ますます、彼らをはじめとしたボカロPの楽曲が聴かれていく未来を描くことはできるだろう。
■小町 碧音
1991年生まれ。歌い手、邦楽ロックを得意とする音楽メインのフリーライター。高校生の頃から気になったアーティストのライブにはよく足を運んでます。『Real Sound』『BASS ON TOP』『UtaTen』などに寄稿。
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