Official髭男dism「115万キロのフィルム」が親しまれてきた理由 映画『思い、思われ、ふり、ふられ』主題歌起用を機に考察

 もちろん歌詞だけでなくサウンドやメロディも魅力的だ。ミドルテンポの落ち着いた楽曲やバラードは、ストリングスを使ったり音を重ねて派手にすることで華やかで感動的な雰囲気を作り出すことがJ-POPでは多い。しかし「115万キロのフィルム」は派手な装飾は使われておらず、むしろバンドサウンドが際立っている。エイトビートのシンプルなリズムだが、音の隙間を上手く作ることで心地よいノリを作り、そのリズムに合わせるようにメロディをリズミカルに当てはめている。つまり音を華やかにして感動させるのではなく、前述した丁寧に物語を描くような歌詞を心地よいリズムに乗せて届けることで感動を生んでいるのだ。これはヒゲダンの他の楽曲でも共通している。リズムを大切にしたポップな演奏に、J-POP的な起伏が大きいメロディをリズムに合わせて綺麗に当てはめる。それが彼らの作風の個性ともなっている。

Official髭男dism - 115万キロのフィルム[Official Audio]

 1stシングル『ノーダウト』リリース以降はテレビドラマや映画、CMなど多くの大型タイアップが付いた。それが彼らを人気バンドに押し上げた理由の一つかもしれない。しかし、魅力的な楽曲でJ-POPとして新しい価値観を成立させたことが人気を獲得した最も大きな理由だ。だからリリース当初はタイアップもなくMVも制作されなかったアルバム曲の「115万キロのフィルム」も多くの人の心を掴んだのだ。

■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。‬ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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