ヒゲダンのサウンドを日常のBGMに Official髭男dism『Traveler』インスト版の楽しみ方と新たな発見

ヒゲダンのサウンドを日常のBGMに Official髭男dism『Traveler』インスト版の楽しみ方と新たな発見

 Official髭男dismのインストゥルメンタルアルバム『Traveler -Instrumentals-』が、6月26日に配信リリースされた。昨年10月にリリースし、ロングセラーを続けるメジャー1stアルバム『Traveler』からボーカル藤原聡の歌声をあえて削ぐことで、バンドの類まれなサウンドセンスを堪能できるスペシャルな1枚だ。

Official髭男dism『Traveler -Instrumentals-』

 演奏力への評価も高いヒゲダンの4人。洋楽的要素もある緻密に計算されたアレンジだが、小難しさは感じさせずあくまでもキャッチーな聴後感を残すのが彼ららしさだ。アルバムでは日本有数のサウンドエンジニアである小森雅仁、井上うに、The Anticipation Illicit Tsuboiや、蔦谷好位置など豪華サポートミュージシャン含め、様々な楽器が織りなす多彩なアンサンブルが心地いい。一音一音に耳を傾けることで、快楽ポイントの高いサウンドの決めどころがより浮き彫りとなる。

 インストアルバムといえば、かつてYMOがボーカル部分をシンセサイザーに置き換えたインストゥルメンタルアルバム『浮気なぼくら(インストゥルメンタル)』(1983年)を思い出す。いわゆるコアファン向けのアイテムだが、今やSpotify、Apple Music、LINE MUSIC、YouTube Musicなど、気軽にリスニングをお試しできるストリーミング全盛時代。仕事で集中したいときやエクササイズ、食事中、バスタイム、眠れない夜など、インスト音楽の需要が高まっている。もちろん、ファンとしてはいつもの楽曲とは角度の違う聴き方を楽しめるメリットがある。公式音源でカラオケを歌えるのも嬉しい。

 緩急ある展開、初夏の爽やかな風のような弦楽器によるフレーズが心地良い「イエスタデイ」、どこかゲームミュージックのような楽しげなサウンド感によるアップチューン「Amazing」、せつなさを痛快に突き抜けていく「バッドフォーミー」など聴きどころいっぱいの名曲たち。なかでも、ホーンのカウンターメロディが印象的な「宿命」では、Bメロでディミニッシュコードを用いることで響き渡る神々しい音の調べに耳を傾けたい。

「イエスタデイ」
「Amazing」
「バッドフォーミー」
「宿命」

 イントロから心踊る「Stand By You」が解き放つ幸福感は、日常生活を彩るBGMにもぴったりだ。目覚まし時計の設定にもいいかもしれない。“あれ、こんなところ(1分39秒)で隠れキャラみたいな音がいるぞ”、なんて新しい発見もあった。アルバム『Traveler』の制作にあたりバンドは、ビンテージ楽器、アナログシンセ、ソフト音源などの導入で、様々なアプローチを実験的に試みたようだ。さらに、耳馴染みの良さや音の広がりを考え50Hz以下の低域を意識しながらサウンドメイキングしたというこだわりにも注目したい。

 2019年の邦楽シーンを語る上で絶対に外せない国民的ヒット曲「Pretender」では、あえて自分たちのルーツではない翳りあるUKサウンドを取り入れ感情の揺らぎを表現しているのだが、SE的に空間を柔らかに照らすシンセサウンドが効果的に機能していることがわかる。

「Stand By You」
「Pretender」

 世界的に日本のシティポップが演奏力やサウンド構築能力など再評価されているなか、現在進行形で進化系J-POP聴かせてくれるヒゲダンが、演奏や録音芸術という側面をフィーチャーしたインストゥルメンタルアルバムをリリースしたことに大きな意義を感じた。

『Traveler -Instrumentals-』

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