Base Ball Bear 小出祐介が考える、コロナ以降の音楽シーンの変化 仮想ライブ企画で感じた“表現の可能性”

Base Ball Bear 小出祐介が考える、コロナ以降の音楽シーンの変化 仮想ライブ企画で感じた“表現の可能性”

 緊急事態宣言が解除され、少しずつ日常が戻りつつあるように見える。しかし、音楽業界の状況は未だに厳しい。6月13日にはライブ開催におけるガイドラインが発表されたものの、実際にライブを行うことが困難な状況は続いていきそうだ。そんななか、新たなライブのあり方を考えているアーティストも多い。なかでもBase Ball Bearが、5月21日より開催した仮想ライブ企画『LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~』は印象的だった。同ライブでは、メンバーそれぞれが自宅で録音、小出祐介(Vo/Gt)がミックスを行なったパフォーマンス映像を配信しており、さらにはライブグッズも販売している。コロナ禍において様々なライブ配信が行われているなかでも、このような企画は斬新に感じられた。

 リアルサウンドでは、Base Ball Bear 小出にメールインタビューを行う機会を得た。現在の音楽シーンに対して感じていることやポップカルチャーの存在意義、また、ライブ現場にこだわりがある小出が感じた仮想ライブの可能性についても答えてくれた。(編集部)

新たなライブの形も見え始めている音楽シーンに対して

 これまで「ライブ配信」は、「ライブ現場」に対しての副次的なものとして位置づけている方が多かったと思います。

 自分たちを例にすると「ツアーファイナルの生配信」は、すでにライブを観た方やファンの方にはライブの追体験やファンサービス的な意味となり、まだライブを観たことがない、最近は行っていないという方には興味を持ってもらうチャンスとなります。「ライブ配信」はこの先につなげるために行うものであり、ゆえに、出し惜しみしたいものでもあるわけです。「いつでもネットで観れるじゃん」と思われてもいけないので、「ここ!」という場面で設定したいものだったんですね。

 ところが、コロナの影響でライブ現場に出られなくなってしまったため、自分たちの活動を見せる、メッセージを伝える、表現する場所をどこかに、というか、どこにも行けないのでネット上に設ける必要が出てきました。売上を立てなければいけない、純粋に何かを表現したい、など理由は様々かと思いますが、自宅からの生演奏やリモートセッション、商品化されているライブ映像を特別公開するなど、これまでやらなかったようなことをやっているアーティストの方が多かったですよね。

 ちなみに、動画のバトンが流行ったのも、人を元気づけたいという気持ちはありつつ、自分自身の「何かを表現する機会(理由)が欲しい」という、アーティストならではの気持ちにフィットしたのもあったのではないかと思っています。

 そんな段階を経て、最近は「ライブの有料配信」を行うアーティストも増えてきました。副次的なものではなく興行として、「現場としての『配信』」が行われるようになってきたということです。

 この意識は配信内容だけではなく、どう音楽をやるのかということにも影響を与えると思います。

 お客さんがいる現場でのライブと、“画面の向こうにお客さんがいる”配信ライブでは、セットリストの組み立て、サウンドメイクはもちろん、盛り上げ方も変わってくるでしょう。配信用のメソッドの構築が必要になってくるわけです。今後もし配信ライブがライブ様式として広まったとしたら、それを念頭においた楽曲制作をするアーティストが出てくるかもしれません。夏のイベントが中止になり、年内のライブ開催にも雲がかかってきたなかで、配信でのやり方・在り方を多くのアーティストが模索していくんじゃないかと思います。

 また、これはそれこそ「コロナ以降」という価値観において、どのようにライブが、音楽があればいいのかを考えることにつながってきます。

 音楽文化のパラダイムシフトとなる可能性も大きいのではないでしょうか。

コロナ禍で改めて感じたポップカルチャーの存在意義 

 スティーブン・キングが「もしアーティストが不要だと思うなら、自宅にいる間、音楽、本、詩、映画、絵画無しで過ごしなさい」とツイートしていましたよね。「まじでそれな」と思いました(笑)。

 Netflixでドラマやアニメや映画を観るのも、無料公開されていた漫画を読むのも、『あつまれ どうぶつの森』も無し。かなり辛いのではないでしょうか。

 東日本大震災の時に僕は「音楽は必要ないのかも」とかなり悩みました。もちろん、それどころじゃない局面があるとは思います。でも、いまは胸を張って「文化芸術はまじで必要」と言えます。

 10代の頃、音楽があったからどうにか生きてこられたように、映画や小説にたくさんのビジョンを与えてもらったように、漫画で夢を見たり恋に憧れたように、すべての文化芸術はこれまでもこれからも人の心の灯火です。苦しいときほど、心を照らしてくれるものです。

 人命は大切です。生活も経済も大事です。ただ、それは文化芸術を置き去りにしていいという理由にはならないはずです。コロナ禍を、すべての生命も文化芸術もまるっと乗り越えることを目指し努めるべきだと思っています。

『LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~』について

 少し前まで配信でライブを行うということに意味を見出せていませんでしたが、いまはこれはこれでどう楽しむか、ここで何をどう表現していくかを考えています。

 今回の企画のこだわりのようなルールとしては、「あえて完全生演奏にはしていない」ということがあります。Zoomでセッションもできる(?)ようですが、メンバーが各々自宅にいることと、機材がフルセットでは使えないことを縛りとして楽しんだ方が面白そうだと思いました。

Base Ball Bear – LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M5「どうしよう」(7/17まで期間限定公開)

 なので、DAW(PCで音楽制作するためのソフトウェア)上で、“アコースティックアレンジ”ではなく、バンドのライブアレンジとして詰めながら録音(と自力でのMix)をし、あとから映像を撮影(編集はプロの方に)、という方法をとっています。

 こうすることで、スタジオ作品ほどかっちりしてはいないけれど、ライブ生演奏ほどラフでもないという、中間点のような音源が作ることができます。

 僕らは楽曲制作もこれに近いスタイルでやってきましたが、ただ、こうして作った音源を世に出せるほどアリだとは思っていなかったので、この変化だけでも結構大きなことだと思っています。

Base Ball Bear – LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ M6「新呼吸」(7/24まで期間限定公開)

 また、セットリスト仕立てにすることだったり、MCをしてみたり、物販を作ったり、「みなさんのお家をめぐるツアー」みたいなキャッチコピーなどで空気を作ることは意識していまして。

Base Ball Bear – LIVE IN LIVE~IN YOUR HOME~ 「MC」(7/10まで期間限定公開)

 それによって、観てくれているみなさんがだいぶ乗ってきてくれたんじゃないかと思っています。「次は何をやるんだろう?」とか、先の展開の予想や考察をしてくれるのも嬉しいですよね。

 YouTubeのコメントも「こういう風にライブを観ている」と捉えると、途端にライブ感が出てきますし、あと単純にこちらもだいぶ制作に追われているので、そういう仮想ライブ感もありまして(笑)。同じ“長い”時間の共有は出来ているんじゃないかと思います。

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