Base Ball Bear 小出祐介が考える、コロナ以降の音楽シーンの変化 仮想ライブ企画で感じた“表現の可能性”
リモートとライブ現場との違い
難しくもあり、この縛りがあるから開き直ってやれるというのは、いちばんに電子ドラムの音色ですね。
ドラムがどんな音であるかが全体のサウンドを決める上での要なんですが、DAW上でドラムの音色を決めるとなると、まずここにかなり時間がかかります。いくらでもやれてしまう部分なので。
ただ、堀之内さん(堀之内大介/Dr)の使っているプラグインを僕が持っていないので、技術的にそれが出来ないんですね。買えよって話なんですけど(笑)。なので、ドラム音色はすべて堀之内さんに全部作ってもらい、データも2Mixでもらってしまっています(もちろん最初の音決めは細かくやりとりしましたが)。
ということは、僕の元には、出来上がったドラムの音と堀之内さんのOKテイクしかないので、ドラムについて僕ができるのはコンプとEQ(イコライザー)くらいしかないんですね。スネアとかキックとかそれぞれの音量調節もできないんです。何ならドラムにはやんわり空間の響きもくっついていますが、そのパラメータも触れない。その上で、ベースとギターと歌をどう乗せていくか、最終的な音像を作るかという勝負をしています。でも、ドラムの音決めが上手く行ったのかずっといい感じなんですよね。よかったよかった。
逆に通常のレコーディングとも違うのは、様々な補正ができないという点です。自分にそういう技術もソフトもないので(笑)。自力でいいテイクを録るしかないという、最終的にアナログなことをしています。
現場でのライブと違うことは、当たり前ですが目の前にお客さんがいないことと、他のメンバーも楽器もそこにないことです。僕らは普段イヤモニを使わないバンドなので(良い悪いの話ではないです)、その空間でどんな風に音が鳴っているか、お客さんがどんな風に聴いてくれているかを感じたり読んだりしながら演奏しています。それがない時点で全く別物であるというのは確かです。
今後のリモートライブの可能性
“自分たちの中で”という話であるのと、これを書いている段階ではまだ6曲目の作業をしているところというのを踏まえてですが、過去の曲をしっかりリアレンジすることができるのは大きなメリットだと思います。
例えばリハーサルスタジオでライブアレンジをする場合、その場で録った音源を確認したりはしますが、ある程度決まったところで「あとはその場でだな」みたいになることが多いので、実は曖昧な部分もあったりするんですね。
その点、今回はまずアレンジを確定させるので、時間はかかるし作業のカロリーは高いですが、今後のライブにおける確実な持ち曲を増やせます。
また、通常のライブだと、全体の感想は聞けても曲単位ではわからなかったりするので、曲単位の感想を知ることができるのは参考になります。
今後としては、現場でのライブと仮想ライブとで、相互関係が作れると面白いかもしれませんよね。仮想ライブでのアレンジを、現場で披露したら「あ、あれだ!」となってくれそうな気がします。
ゲストを呼んだりしてもいいのかもしれません。……めちゃくちゃ大変そうですが(笑)。