あいみょん、『私の家政夫ナギサさん』主題歌がチャート健闘 幅広い世代を虜にするバラードシングルに

幅広い世代に響く“懐かしい”サウンド

 そして忘れてはならないのが、彼女の音楽性の大きな特徴でもあるどこか“懐かしい”雰囲気である。

 「ピアニカが肝で、あれがすごい歌謡曲っぽさを出してる」と本人が指摘するのは主にサビの部分。それまでのアコギとピアノが作り上げた爽やかな世界に、すうっと鍵盤ハーモニカが呼ばれたように顔を出し、儚げにゆっくりと去っていく。この音色が作品に絶妙な“懐かしさ”や“安心感”のようなものを与えていて、詞の世界がじんわりと広がっていくのを感じる。

 編曲したトオミヨウは、近年多くのアーティストの楽曲を担当している音楽家。最近ではaikoの新曲「青空」でのアレンジも光っていた(参考:aiko「青空」レビュー:新境地の失恋ソング、苦しさと明るさの“両面性”がもたらす切ない響き)。「裸の心」のアレンジについて彼は「“素朴さ”が心地いい違和感を醸し出すように仕上げました」と明かしている。あいみょんの楽曲が幅広い世代に支持される背景には、こうしたサウンド面の工夫もひとつの要因となっているのだろう。

 バラードであっても私的な雰囲気にこだわった“むき出し”のアレンジ、そして幅広い世代に響く“懐かしさ”を漂わせるサウンド。あいみょんの楽曲がデジタルでもフィジカルでも好調なのは、こうした広い世代を視野に入れた作風が理由なのかもしれない。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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