IZ*ONE、“今”の心境を刻み込んだ新作『Oneiric Diary(幻想日記)』 サウンドの隅々から漂う刹那的なムード
新型コロナウイルスの流行が収まりつつある韓国では、そのタイミングを見計らったように人気アーティストのリリースラッシュが続いている。ガールズグループではBLACKPINKがレディー・ガガとのコラボレーション曲「Sour Candy」を5月末に発表したのを皮切りに、TWICEや宇宙少女といったビッグネームが新作を携えて活動を再開。そして6月15日、K-POPシーンをけん引するグループのひとつであるIZ*ONEも3枚目のミニアルバム『Oneiric Diary(幻想日記)』でカムバックを果たした。
誰もが予想できたことではあるが、本作はリリース直後にMelOnやBugsといった主要オンラインミュージックストアのチャートで1位を獲得している。また、CDの売り上げもかなり良いようで、このまま順調に行けば、歴代ガールズグループで最も売れたアルバムとなった前作『BLOOM*IZ』(48万枚)を超えるかもしれない。
とはいえ、過去の成功例を踏襲した無難な内容で勝負しないのが彼女たちらしいところだ。「La Vie en Rose」「Violeta」「FIESTA」といった花をモチーフにしたサウンドメイクは『BLOOM*IZ』でひと段落。今回は“優雅なカリスマ”と“日常の少女”というイメージを持つ12人のメンバーを、相反するふたつの要素ーー“幻想”と“日記”で表現した(PR用の資料から引用)という。言葉だけでは少々わかりにくいコンセプトだが、その狙いはリードトラック「Secret Story of the Swan(幻想童話)」を聴けばわかるだろう。
この曲のテーマは「夢は叶う」。IZ*ONEは“想像していたすべての瞬間が/目の前に近づくそのときまで/あなたのためにダンスを踊るわ”と熱く歌い、リスナーを励ます。“日記”を書くように地道に続けていれば、“幻想”だと思っていたこともいつかは現実になるというメッセージは、エキゾチックな香りが漂うEDMサウンドによってさらに説得力が増しているようだ。
『Oneiric Diary(幻想日記)』は他の収録曲も同様のカラーで仕上げている。ポジティブなオーラに包まれたダンスナンバー「Pretty」は、サウンドメイクの点ではそれほど新鮮さがないものの、歌詞は“私と夢を見よう/準備はできているよ”といった風に過去のどの作品よりも勢いがあるのが印象的だ。また、トライバルハウスの「Rococo」も“さあ、ここよ/私の手を握ってついてきて/もう退屈な観念から抜け出して”と、いつになく押しが強い。