ZOCメンバー徹底分析:巫まろ
ZOC 巫まろ、イノセントでなくてもアイドルになれることを証明したメンバーに 大森靖子に共鳴する“因子”とは?
巫まろはおそらく天性のアイドルである。彼女の以前の活動――本名である「福田花音」として過ごしてきた時間――をまったく感知していなかったZOCファンでも一見して出で立ちから醸し出される、月並みな言葉で表現するならオーラのようなものを視た者も多いだろう。彼女はただ者ではない。アイドルの中のアイドルとして思い浮かべられることも多いであろうハロー!プロジェクトに約10年にわたって在籍し、アイドル道のなんたるかを骨身に染み込ませて過ごしてきた。故に、ZOCという「アイドル界の異端児」のなかではかえって異質な存在として映る。少年院に入所した過去を持つ戦慄かなのや堂々と煙草を喫んでいる姿を見せる香椎かてぃをはじめ、一般的なアイドル像から逸脱したメンバーが大きな特徴のひとつとなっているこのグループでは、身を置く上である種の屈折が鍵となってくる。一方で巫まろはデビューシングルでのレコード大賞新人賞の受賞から武道館での煌びやかな卒業コンサートまで、覇道をいき、王道を背骨に通し、「誰にも言えない人生」なんて背中に隠していないし、後ろ暗い過去なんてどこにも置いてきていない……ように見える。だが、本当にそうだろうか?
周囲からは「ZOCへの加入が意外な行動に映った」との声が聞こえてきたが、正直私にはそうは思えなかった。なぜなら彼女が大森靖子その人に共鳴する「因子」を持っていることはすでに証明済みだったからだ。例えば高校時代から大森靖子の音楽を好んで聴いていたこと、以前から公言していた神聖かまってちゃんやアカシック、銀杏BOYZなどの生きることの息苦しさや痛さを生々しく歌うバンドへの愛。彼らは過激なワードを歌詞に織り交ぜることでも知られている。過激な音楽に共鳴出来ることを表明していただけでも彼女が敷かれたレールからなんとしてでも自らのトロッコに飛び移ろうという意志を握りしめていたことがわかる。彼女は彼女なりに、一足早く純粋無垢=イノセントでなくてもアイドルで在れるということを証明したかったのかもしれない。