Gottz & MUD、KANDYTOWN発のタッグが押し上げるクルーの表現スケール 「Nice Booty」「Cook Good」を聴いて

Gottz & MUD「Cook Good」

 東京・世田谷エリアをフッドに活動するヒップホップクルー、KANDYTOWN。同クルーより、GottzとMUDが5月15日、Gottz & MUDの新名義で新曲「Nice Booty」「Cook Good」を配信リリースした。

 KANDYTOWNが結成されて以降クルー内でのタッグ結成は初となる。本人たちは以前より各所で明かしてきたものだが、その詳細に触れる前に、まずは2人のプロフィールを紹介しよう。

 アイコニックなドレッドヘアと、その風貌に似合ったワイルドな歌声の持ち主であるGottz。クルーのタフネスな部分を司るようなラッパーで、2018年10月には1stソロアルバム『SOUTHPARK』をリリース。当時のKANDYTOWNとしては珍しく、サグな雰囲気のあるトラップビートを大々的に採用し、その後も爆発力の凄まじい楽曲を次々に発表している。

 対して、どんな楽曲でも常に渋さが際立つMUD。いわゆるマシンガンラップを得意としており、クルーの“ラップ専門”的なポジションとして、ライブではたびたびアカペラを任されるほど。2017年7月にリリースした1stソロアルバム『Make U Dirty』では、収録曲「Dallaz」でウェッサイ全開なビートを乗りこなすなど、泥臭さが最高品質なラップに圧倒される。

 そんな彼らはこれまで、前述した『SOUTHPARK』など、Gottzのソロ作品を中心に共演機会を重ねてきた。電話のコール音を中毒性の高いフックに仕上げ、緊張感あるトラックに乗せたGottzの代表曲「+81 feat. MUD」を皮切りとして、「The Lights feat. Ryugo Ishida, MUD」では、Ryugo Ishida(ゆるふわギャング)を迎えて、彼のロックスター的なイメージに相応しい、ラフでラウドなバイブスのラップに振り切った。

 その流れは、Gottzが2019年3月にリリースした2ndアルバム『SAKURAGAOKA』にも受け継がれ、収録曲「Hot Box (feat. MUD)」ではトラップ色にさらなる激しさが加わることに。一方で「Special One (feat. MUD)」などでは、楽曲のセクシーな世界観に合わせるべく、香水のように色気を纏ったメロディアスなフロウを披露。彼らのフロウにはまだ未知の引き出しがあるのだと心底に魅了された。

 今回新たにリリースされた「Nice Booty」「Cook Good」は、どちらも上記の系譜にありながら、彼らの流暢なフロウとゲットーチックな雰囲気を強めたトラックのマリアージュを楽しめる作品である。「Nice Booty」はyung xanseiがプロデュースした楽曲で、深めでバウンスの強いビートが特徴的だ。MUDがバースの後半で披露する怪しげなフロウに新鮮さを与えられたほか、やたらと落ち着きのあるGottzの歌声が逆にいかつい。

 「Cook Good」は、ZOT on The Waveのプロデュースによるもの。こちらは退廃的なピアノのサウンドが終始鳴り続けるなど、いかにもゲットーチックな雰囲気に仕上がっている(ちなみに彼は昨年未明よりネームタグを「Wave Farewell」に変更しており、今回のビートはリリースからちょうど1年ほど前に制作したという)。また、“上手く調理する”というタイトル通り、ラッパーとしてのハングリー精神がリリックに反映されており、彼らがコックに扮したMVもその暗い色調からか、観ていて謎の緊張感に駆られるのがすごい。

Gottz & MUD - Cook Good

 そして、GottzとMUDが楽曲で示すバウンス感や熱量の高さは、ライブのステージでも期待を裏切ることはない。今やKANDYTOWNのライブでは、必ずと言えるほど2人の時間が設けられており、そのステージが始まれば自然とモッシュが巻き起こるほど。それを見越してか、彼ら自身も「お待ちかねの時間が来たぞ」としたり顔でヘッズを煽る姿は、ダイナマイトに今か今かと点火するかのようなにくい演出だ。

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