松任谷由実×あいみょん、ソングライティングの共通点は“第六感”を描いた歌詞に? 『ANN GOLD』のトークから考察

 それは、あいみょんのソングライティングにも共通しているように思える。例えば、あまりも有名な「マリーゴールド」の〈麦わらの帽子の君が/揺れたマリーゴールドに似てる〉というワンフレーズ。実際に自分が体験したわけでもないのに、その一文だけで雲ひとつない夏の青空や、“麦わらの帽子の君”に対する愛しさで胸が痛まないだろうか。現在『淡麗グリーンラベル』のCMで弾き語りバージョンが話題になっている「ハレノヒ」に関しても、〈北千住駅をフワッと歩く/藍色のスカート/いつになく遠く遠くに見える/加速する足音〉という視覚的な描写が盛り込まれ、ストーリー性に富んでいる。

あいみょん「マリーゴールド」
あいみょん「ハレノヒ」

 これは以前にインタビューであいみょんが、「『マリーゴールド』を作る時に、麦わら帽子の女の子の後ろ姿が、揺れたマリーゴールドに似てるなっていうイメージが頭に浮かんだんです。その瞬間っていうのは、どこからの情報でもないんですよ。味覚でもないし、触感でもない。それって第六感としか思えなくて」(参照)と表現したように、シックスセンス=第六感からくるものではないだろうか。瞬間的に心に残る情景。特に二人はその感覚に優れているようで、松任谷はあいみょんと初めて出会った時のことを会話の内容ではなく、まず「赤いオーバーオールを着ていた」と振り返っていた。

 番組の終盤、松任谷があいみょんが好きだというジブリ作品『魔女の宅急便』に出てくる、カラスと共に暮らす画家の少女(ウルスラ)に自分たちが似ていると語る場面があった。どのあたりに共感を得たのかまでは説明されなかったが、「重なるところがある気がする」という松任谷の感覚は理解できる。突然魔法が使えなくなり、空を飛べなくなったキキに「(自分が絵を描けなくなったら)描くのをやめる。散歩したり、景色を見たり、昼寝したり、何もしない!そのうち急に描きたくなるんだよ」とアドバイスしていたウルスラ。彼女もやはり、日常の中で出現する第六感を大事にしている人物だからではないだろうか。

 この日、あいみょんがリクエストした曲は、松任谷が1977年にリリースした「潮風にちぎれて」。自身がパーソナリティを務めるラジオでも度々かけていたという同楽曲について、あいみょんは「強がりな女の子の切なくて、可愛らしい歌詞に惹かれてしまって、最後の歌詞にやられちゃったんですよね」と思いを明かした。

〈吹きすさぶ潮風に/わたしは まぶた閉じていた/あなたと来なくたって/わたしはもとから この海が好き〉

松任谷由実「潮風にちぎれて」

 第六感から浮かんだ情景から感情を表現し、聴く人の心を揺さぶるシンガーソングライターの松任谷由実とあいみょん。二人が互いの感性に影響を与えた結果、これから新たに生まれてくる音楽に注目したい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

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