ドラマ『3年B組金八先生』配信スタート 風間俊介、亀梨和也、加藤シゲアキ……出演ジャニーズの光る名演

柔軟でバランス感覚に優れた岡本圭人

 最後に取り上げたいのは、『金八先生・ファイナル〜「最後の贈る言葉」4時間SP』(2011年)に登場する不良・景浦裕也に扮した岡本圭人だ。

 桜中学校はエリート校化を目指し、能力面や生活態度において落ちこぼれな生徒は排除する教育方針へ傾いていく。問題のある生徒と親身に接してきた金八先生は、画一的な教育方針に異議を唱える。規則と個性の折り合いについて考えさせられ、集団の中で違ったことをする影響について、多面的に論じたストーリーとなっている。

 このファイナルで異分子として扱われるのが、裕也である。この役のポイントは、とにかくキレまくるところ。金八先生を躊躇なく殴る場面は、裕也の暴力性が見てとれる。金八先生も「37年間の教師生活でこんなこと初だ」としょげるほど。ただ、人としての心を完全に失っているのかというと、決してそうではない。

 立場を利用して偉ぶり、自分たちの都合で子どもを振り回す。そんな大人たちへの反発。正義感のねじまがりが暴力へと発展。大人をまったく信用できなくなった裕也のモヤモヤを、岡本は絶妙なバランス感覚で演じている。

 金八先生と共同生活を送ることになり、坂本宅へ初めて入ったとき、金八先生の妻・里美の遺影を見つめる表情。手のつけようのない悪ガキだが、そのとき浮かべる顔つきは、彼のことを理解してあげたくなるものだった。裕也は、金八先生との生活の中で変化していく。自分自身が変わるだけではない。まわりの気持ちも変えていく。これは非常に難しい役回りだ。岡本は、意外にも柔軟な演技力で景浦のさまざまな側面を見せていく。そして、憎めない人物像を作り上げていく。

 今ではすっかりスターになったジャニーズの出演者たちにとって、『3年B組金八先生』はまさに学びの場だったのではないだろうか。当時はまだまだ経験が浅くて、芝居はがむしゃら。でも、きらりと光るものが必ずある。この配信の機会に、彼らの才能の片鱗を見つけ出して欲しい。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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