怒髪天が今“がんばれ”を歌う意味 『チャリーズ・エンジェル』『THE JAPANESE R&E』で届けるシリアスとユーモア
打って変わって「ポポポ!」は軽快なリズムに乗せた、怒髪天の伝家の宝刀〈またまた出ました お酒の歌〉である。〈ポポポ ポイポイ ズズンズン〉と語呂よくキャッチーに攻め立てながら、〈緊急事態だ!アルコール消毒だ〉と、これまたこのご時世にかけたフレーズをぶつけてくる。「スキモノマニア」の〈このアブノーマルども 世間からすれば 悪趣味の極み〉と罵倒したる相手は、これを聴いている“俺達界隈(怒髪天ファンの総称)”のことだろう。ハードコアライクなビートといい、挑発的で捲し立てていくサビといい、大盛り上がりするライブの様子が目に浮かぶ。
こうした、皆が不安な状況だからこそ自らを鼓舞する言葉が染みる「孤独のエール」、風刺を効かせながらの陽気な毒曲「ポポポ!」、献身と忍耐の今だからこそ、あらためて言える自分たちのファンへの感謝と「平穏な日々が訪れたらまた一緒に騒ごうぜ!」という愛情表現をたっぷり込めた「スキモノマニア」。この3曲を聴けば、緊急事態宣言下、“ほぼ一発録り”の“即出しデモ状態”で、すぐにでも皆に届けたかった怒髪天の心意気が感じられるはずだ。
さらに、今回の『チャリーズ・エンジェル』には、オールディーズな雰囲気たっぷりのノリノリのロックンロールナンバー「や・め・と・き・な」と、怒髪天のどデカイ人生観を鷹揚に歌う「タイムリッチマン」という、これまた毛色の違った楽曲が収録されており、怒髪天の音楽表現の豊さと、各メンバーのプレイヤーとしての余裕がありありと感じさせる作品になっている。
『THE JAPANESE R&E』には、うつみようこが英語訳を担当した「SUPPON-PON(裸武士)」「GREAT NUMBER」の2曲を収録。よりによって男くさくて“日本の歌”らしい選曲で、“THE JAPANESE R&E”の魂を感じざるを得ない。英語になっても怒髪天は怒髪天でしかなく、増子直純のドスの効いたダミ声は変わらず耳に響いてくる。和情緒の旋律と独特な発音の増子節が絡み合う、奇妙な異国情緒が心地よい。
これまで怒髪天は思いっきりふざけながらも、キメるところはビシっとキメ、我々の思いを汲み取っているかのように歌にしてくれた。そして今回もまた、聴きたい時に聴きたい歌を届けてくれた。今、この状況がいつまでつづくのかはわからないが、また怒髪天と一緒に歌い、笑って泣いてバカ騒ぎができる日が来るまで、自分に「がんばれ!」とエールを送りながら待っていよう。
■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログ/Twitter
■配信リリース情報
『チャリーズ・エンジェル』
配信日:5月15日(金)0:00
<収録曲>
1. 孤独のエール
2. ポポポ!
3. スキモノマニア
4. や・め・と・き・な
5. タイムリッチマン
『THE JAPANESE R&E』
配信日:5月15日(金)0:00
<収録曲>
SUPPON-PON (English version) (裸武士 英詞Ver)
GREAT NUMBER (English version) (GREAT NUMBER 英詞Ver)