ザ・ウィークエンド、ジェネイ・アイコ……部屋でじっくりと向き合いながら聴きたいR&B作品をピックアップ
誰もが反応するあの大ネタを使った大胆な意欲作!
John Legend「Actions」
「Love Me Now」などのヒットを生んだ『Darkness and Light』から早4年。クリスマスアルバム(傑作!)を挟みつつも最近は単発のシングルが目立ったジョン・レジェンドが、いよいよ本格的にニューアルバムへ向けて始動し発表したのが『Actions』。
1月頭に発表され、デヴィッド・ゲッタのリミックスでも話題になっているハートウォーミングなバラード「Conversations In The Dark」に続く最新シングル曲「Actions」は、イントロのド頭からドクター・ドレー「The Next Episode」のサンプリングでお馴染みのデヴィッド・マッカラム「The Edge」(というよりはドレーのビートそのもの)が使用され、のっけから驚きと期待をあおる大胆な一曲。プロデュースを担当したオーク・フェデラーは、アリシア・キーズとマクスウェルの名曲「Fire We Make」やケラーニのデビュー作を手がけた、2010年代の代表格プロデューサーチーム、ポップ&オークとしても名高い腕利きだ。
近年は幅広い曲調でポップフィールドにも受け入れられたり、スケールの大きい作風のイメージも強いジョンだが、デビュー当時を思い出させるスリリングなヒップホップソウルに胸を踊らせる人も多いだろう(個人的な好みも断然こっち)。“行動はラブソングよりも雄弁”というリリックの先に見えるのはもちろん、奥方の女優クリッシー・テイゲンで、レディ・ガガのキュレーションの元に開催されたチャリティー・コンサート『One World : Together At Home』内でも、その仲睦まじい家庭の姿は見受けられた。
また、人気オーディション番組『The Voice』で審査員兼コーチとして新しい才能を育て、今夏に自身の全米ツアーも敢行する予定のジョン。彼の愛はより優しく大きくなっていくばかりだ。
紆余曲折を経て再出発! これぞ男性R&Bボーカルグループのお手本
Dru Hill『What You Need』
シスコ、ノキオ、ウッディ、ジャズの4人で構成されたバルチモア出身の4人組Dru Hill。1996年のデビューシングル「Tell Me」のヒットをきっかけに激動の男性R&Bボーカルグループ時代を生き抜いた彼らは、シスコがソロ活動で大躍進した2000年初頭以降、メンバーを変動しつつも地道に活動を継続していた。2018年には、彼らと同じく90年代末にティンバランドのプロデュースの元、故アリーヤらと並んでフューチャリスティックR&Bの先駆けになったグループ、Playa(うちメンバーのスタティック・メジャーは、2008年に全米首位を獲得したリル・ウェインの「Lollipop」にフィーチャーされるも同年に逝去している)と合体する形で大変革が行われ、5人体制に。
こうして生まれた新Dru Hillは、今年に入ってTV Oneの人気ドキュメンタリーシリーズ『Unsung』で特集が組まれ再出発。順風満帆かと思いきや、番組放送直後にオリジナルメンバーのノキオを含む2人が脱退を表明。いきなり3人組になったうえに、結果的にはシスコとPlayaがくっついただけ、という何ともややこしい展開に。しかし騒動を度外視すれば90’sR&B好き垂涎モノの役者が揃っているわけで、最新シングルの「What You Need」は、男性R&Bボーカルグループかくあるべき! と拳をあげたくなるような、素晴らしい出来栄えになっている(録音時のメンバーはまだ5人)。
セクシャルな意味合いも強かったデビュー曲の「Tell Me」と共通するワードを使いつつも、“願望よりも今必要なことが知りたいんだ”と、より大人な関係の言い回しになっているのもニクい仕上がりだ。曲中の「Quality over quantity」(量より質)という言葉も妙に響いてしまうが、形は変われど名前を残すことにも意味があるはず。今後のグループの動向に要注目だ。
◾️Yacheemi / ヤチーミ
ダンサー / DJ / ライター / タコ神様。
国内~ジャマイカでダンスバトルでの入賞を経験後、 ヒップホップ・グループ「餓鬼レンジャー」 にマスコットとして加入。3密のナイトクラブを中心に年間100本近くのステージに立つ傍らで、地上波TVにも幾度か出演。またR&B音楽にまつわる座学や執筆活動も行うなど、独自のフリースタイル・グルーヴ道を歩む七変化系男子。