マカロニえんぴつ『hope』がチャート健闘 ユーモアとオマージュ溢れるポップセンス光る1枚に

 このユーモアといたるところに埋め込まれたオマージュの具合には、ユニコーンを思い起こした。というか、「この度の恥は掻き捨て」なんか、モロに「人生は上々だ」だよなあ。と思ったら、はっとりが奥田民生との対談で「 『人生は上々だ』みたいな雰囲気の曲もあって。この曲はキーがどんどん上がっていくから、自分たちはテンポを上げてみようと」と明言していた。(参考:音楽ナタリー

 2019年のミニアルバム『season』にも収録された人気曲「ヤングアダルト」は、曲調やひとつひとつのフレーズにいろんな名曲の面影が潜んでいながらも、今鳴るべきポップソングとして組み上がっている類まれなバランスの一曲だと思う。

マカロニえんぴつ「ヤングアダルト」MV

 「ブルーベリー・ナイツ」も既発のミニアルバムからの楽曲(2019年の『LiKE』収録)のキラーチューンだが、冒頭のピアノから細かいオルガンのフレーズ、間奏のキーボードソロなど、鍵盤の活躍に耳が惹き込まれる。それだけに限らず、バンドのパート各々の細かいフレーズ作りとアンサンブルが心地よく、柄にもなく聴き込んでしまった(といって、最大の理由は、ピアノのフレーズがクラムボン「シカゴ」じゃん! という身も蓋もないものではあるが)。

マカロニえんぴつ「ブルーベリー・ナイツ」MV

 どこか琴線に触れる近過去からのオマージュとバンド全体の活きの良さがケミストリーを起こしている本作。ディスコグラフィを改めて遡ってみても、やっぱりここに戻ってきてしまう。そのくらい思いがけずハマってしまったのだった。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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