マカロニえんぴつのリスナーと一対一で向き合う姿勢 グッドミュージックを響かせた『マカロックツアーvol.8』ファイナル

マカロニえんぴつ『マカロックツアーvol.8』ファイナルレポ

 マカロニえんぴつが1月12日、マイナビBLITZ赤坂にてワンマンツアー『マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~』のファイナル公演を行った。本会場は彼らのワンマン史上最大キャパだが、ツアーは全公演圧巻の即完だった。

 毎回恒例、The Beatlesの「Hey Bulldog」をオープニングSEにメンバーが登場。1曲目は、若い頃の果てしない退屈を愛し抜けと歌う「青春と一瞬」。冒頭から、ファイナルであることを感じさせる堂々たる演奏だ。つづく「トリコになれ」は、〈なんかな、アレっぽいよな(どれ 売れそうで売れないね〉とブレイク直前の自分たちを歌ったような曲だが、この曲のリリースから半年あまりで彼らは完全なる「ブレイク」を果たし、今に至る。MCではっとり(Gt/Vo)は、最新アルバム『season』はメンバー全員が曲を書いた初めてのコンセプトアルバムであると語り、「とはいえ初めての人も大勢いらっしゃると思うから、新旧まんべんなくセトリを組んだので楽しんでもらえると思います」と意気込んだ。

 田辺由明(Gt)作曲の「恋のマジカルミステリー」は、〈君が花でおれは水 かっこいいだろ 男なんだからね 皿洗いなら任せといてくれな〉と実際に料理が得意な田辺をイメージしたような歌詞も楽しい。続けてライブ定番曲「眺めがいいね」。はっとりが田辺の肩に頭を乗せたり、長谷川大喜(Key)がエアベースを披露しながら、高野賢也(Ba)とタイミングを合わせてジャンプする場面も。常に楽しそうに演奏している点も、彼らの魅力の一つだ。はっとりが「ミュージクラバーのあなたたちと、マカロニえんぴつをつなぐ歌」と紹介し「MUSIC」へ。〈愛を知ったあなたなら きっと分かる、あなたなら グッドミュージック〉という歌詞に、ファン(マカロッカー)への信頼が詰まっている。

 ここで声出しがてら男女比をとろうと「女子!」「男子!」と声をかけ、返事の声量を比べるはっとり。「まばらだがメンズの勝ちだ。時を戻そう」と昨年のM-1グランプリ決勝戦で活躍したぺこぱのネタを真似、なすのへたのように頭を揺らし、会場は大爆笑。その後定番の「ワンドリンク別」へ。期待以上の〈ワンドリンク別!〉の合いの手に、はっとりも「やればできるじゃん」と満足げだった。「ちょっと懐かしい歌やります」と「幸せやそれに似たもの」へ。メンバー全員が音大出身という技術力の高さを証明するように、見事なソロを披露。そこからなめらかに曲に戻っていくさまに、バンドの一体感を感じた。

 その後、最近自分たちのことを知って人柄を知らない人もいるだろうからと、自己紹介タイムへ。まずはっとりは、自身の風貌について「インド人と言われています。ナマステ~!」とおちゃらけ、「お酒が大好き。奥田民生さんが大好き。変なツイートばかりする」と簡潔に紹介した。続いて田辺について、おにいさん的存在・家族の分のご飯を毎日作っている・尽くすのが好きで「コンビニいくけどなんかほしいものある?」といつも聞いてくれる、と優しい人柄をアピール。高野については、最近大御所感が出てきたので内輪で「御所」と呼んでいる・アニメオタク、と紹介し、「おすすめのアニメは?」と聞くと、「今朝見たプリキュアで泣いた」と高野も自身のキャラを発揮した。サポートドラムを務める高浦''suzzy''充孝は、大学の後輩であり、高浦のバンド・Flight Academyも「かっこいいから聴いてみて!」とオーディエンスに薦めた。最後に長谷川は「高3まで80キロあって、45分950円焼き肉食べ放題で食べ過ぎて出禁になった」というエピソードを披露。最近は自炊男子になり、クックパッドも始めたと告知した。

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 ここではっとりは、大学入学後、いち早くバンドがしたいとメンバーをかき集めたというエピソードを明かし、「あのミュージシャン、あのステージに憧れて、全ての土台には「あこがれ」がいつもあった」と語り、「バンドを結成したあのときの自分に、「ありがとな」と言ってやりたい、だからこのツアーでどうしてもやりたい曲があります」と言って始めたのは「あこがれ」。〈頑張ってあなたよりもすごくなろう いつか誰かの憧れになろう〉と歌っていたバンドが、すっかりみんなの「あこがれ」になったことを感じ、胸が熱くなった。

 「最低限の生活には!」というはっとりの掛け声から始まった「洗濯機と君とラヂオ」で会場の空気は一変。メンバーも前に迫り出し演奏し、オーディエンスもフロアを目一杯揺らして応えた。「あらゆる後悔を引きずっている人たちでしょう。だけど、その後悔、全部なかったことにしてあげる、魔法の歌があります!」と「Supernova」へ。〈これからどうなってくのが正しくて 誰の期待を背負うのが真っ当だ〉とはバンド自体の迷いであり、私たちの迷いでもある。胸に手を当てながら〈自分に期待をしてやれば真っ当だ〉と歌う姿を見て、彼らと私たちの未来、両方が照らされているような気がした。

 「いつまでもあなたの大事な逃げ場であり続けたい!」と始まった「ハートロッカー」は原曲よりもハイペースで披露され、メンバーも会場も感情が前へ前へ推進していくよう。〈形にならないこの気持ちの 逃げ場所になってくれ〉が〈なってやる〉にかえて歌われ、想いが心臓の奥まで届いてくるようだった。

 「マカロニえんぴつが必要ですか? 必要でしょう。でもね、俺たちもあなたがいなきゃ意味が無いんです。同じ人間がここにいるよって、それだけです。絶望だらけです。生きていくってめんどくさい。マカロニえんぴつです。全部、わかってます。絶望の縁で、その裏側にある希望を、見いだせるのは、あなたのセンスです。みんなは、生きる力をたくさん知っています。ナイスセンス。これからもこの音楽をよろしく」と、はっとりが告げて歌い出したのは、最後の曲「ヤングアダルト」。〈夜を越えるための唄が死なないように 手首からもう涙が流れないように〉とは、マカロニえんぴつの唄がもつ「愛」そのものであるような気がした。ずっとポケットにいれておきたいような愛ある一曲で、本編は幕を閉じた。

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