origami PRODUCTIONS 対馬芳昭氏が音楽シーンに起こしたアクション 楽曲無償提供、ドネーションを通じた思いを聞く

origami対馬氏、音楽シーンへのアクション

「音楽は絶対に必要なもの」

ーーまた、対馬さんは4月3日に音楽関係者に向けたドネーション(寄付)「White Teeth Donation」を立ち上げ、自己資金2,000万円を全て音楽シーンに寄付されたんですよね。これはコロナウイルスの影響に関係なく、2年以上前から計画していたとのことですが、何かきっかけになる出来事があったんでしょうか。

対馬:日本の音楽シーンに対する危機感ですね。素晴らしいアーティストがいてもバックアップが少ないことで埋もれてしまうことが多いんです。それは色々な問題が積み重なっているので時間とお金をかけてしっかり考えていかないといけない。また、世界の音楽シーンと日本は残念ながらかけ離れているのが現状です。そこを変えていくためには技術とセンスを持ったアーティストを見捨てずに一緒に戦い続ける必要があります。White Teethはそのために立ち上げました。

ーー今回の一連の活動で、対馬さんの音楽関係者に対する強い思いが伝わってきました。改めて“アーティストを守る”という思いについて聞かせてください。

対馬:今回のコロナのような状況はとにかく金銭的な補助をすることに尽きます。ただ、通常時に関してはとにかく土壌を作ることだと思います。たとえばサッカーチームがあってもJリーグやワールドカップのような大会がないと切磋琢磨できませんよね。敷居もクオリティも高いリーグ、大会があってそこを目指して頑張る。そういった仕組みが必要です。音楽は世界を相手にお金を稼がないとアーティストがやっていけない日が必ず訪れます。たとえば同じアジアでも韓国やフィリピン、シンガポールはもうそこに向かっています。日本でも、今後はさらにアーティストが世界へ発信してパフォーマンスで戦えるように、同時にそういったアーティストのサポートがしっかりできるスキルを持ったスタッフを育て、流通網や仕組みも日本の音楽関係者全員で作っていくことが大事だと思います。それが結果、アーティスを守ることにつながります。

ーー現状のコロナの影響によってエンタメ業界が揺れるなかで、origamiはどんな思いを第一にアクションしようとしていますか?

対馬:origami PRODUCTIONSが発足して10年になるのですが、2011年の東日本大震災の時に「僕らがやっていることって必要なのかな……」と自らを問うような状況になりました。今回も、その時と同じ感覚に陥りそうになったんです。震災の時には「(音楽なんて)不謹慎だ」という言葉も飛び交っていたし、少し時間が経ってからあの時のことを思い返したりもするんですが、僕たちの世代でいうと今回のライブ自粛は音楽業界にとって二度目の“壁”に当たっている時なのかなと感じます。だけど僕が今思っているのは、音楽や僕たちのしていることは絶対に必要なことなんです。震災の時は、「人から必要とされていないんじゃないか」、「今音楽をやったら嫌われちゃうかな」と悩んだこともありましたが、今はまったくもってそんなことは思わなくて、完全に僕らは必要なことを仕事にしているんだという自負を持っています。

 音楽ではお腹を一杯にすることも病気を治すこともできないけど、なぜボブ・マーリーは「One Love」と歌っていたのか。それを伝えることのできる僕たちがまず一つになる、協力していこうというマインドを音楽を通して届けたいし、音楽は心を豊かにできるということを示していければいいなと思っています。僕は演奏はしないので、その「One Love」をリスナーの皆さんに伝えていくということが、僕に課せられた使命だと思っています。

ーー事態は想像以上に長引きそうですが、長期的に考えていることや見据えているものはありますか?

対馬:この事態がいつ終わるのか、今本当に誰もわからないですもんね……。origami PRODUCTIONSはレーベル機能としてはインディーズですごく小規模なスタイルなので、小回りが利くというのがまずあります。アーティストもスタッフも常に休まず動いてきたことが結果として筋力になっている会社です。それが今回みたいな事態の時に、アーティストに電話したらその日のうちに皆がパラデータを用意してくれたりして、日々の積み重ねが繋がっているのかなと。

 また、弊社所属のアーティストの音楽スタイルとして、日本ではJ-POPのようにフロントラインに立ってお茶の間まで届くという音楽をやっているわけではないですが、逆にそれが僕たちの強みだと思っています。今はとにかく「この事態が1カ月続くならこうしなきゃ」、「3年続くならこう考えなきゃ」と臨機応変に動くことを考えています。先を見据えすぎて日々状況が変わる世の中の動きについていけなくなってしまうのではなく、目の前のことをどんどん解決し続けていくことが元々の僕たちのスタイルだし、今後もそれは変わらずに、音楽で心を豊かにできる方法を模索していきたいと思っています。

「origami Home Sessions」
対馬芳昭 note
origami PRODUCTIONS
origami PRODUCTIONS Twitter

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる