樋口楓が語る、音楽の楽しさとメジャーデビューへの挑戦 「VTuber文化を1人でも多くの人に伝えていきたい」

樋口楓、VTuberとしてのメジャーへの挑戦

 「にじさんじプロジェクト」の公式バーチャルライバー(VTuber)の樋口楓が、3月25日リリースのシングル『MARBLE』でメジャーデビューする。樋口楓は、"でろーん"の愛称で親しまれている注目のクリエイター。今回のインタビューでは、VTuberとしての活動から、音楽のルーツや歌への思い、そしてメジャーデビュー作を通じて、発信していきたい理想のVTuberとしての生き方について語ってもらった。(編集部)【最終ページに読者プレゼントあり】

VTuber文化に対しての偏見をなくしたい 

ーー樋口さんがVTuberとして活動をスタートさせてから約2年が経ちましたね。

樋口楓:体感的にはあっという間でしたけど、あらためて振り返るとめちゃくちゃ濃い日常だったなって思います。そもそもは2次元のモデルを動かすスマホアプリを世の中に広めるために活動を始めたんですけど、いつの間にかたくさんのファンの方々が応援してくださるようになり。その中には私のために曲を作ってくださる方もいて、それが結果的に今の音楽活動に繋がっていったんですよね。そんな当初は予想もしていなかった展開になったことも含めて、周りのありがたい環境のおかげでここまで歩んでこれたんだと思います。

ーーその活動の中で樋口さんならではの個性が明確になってきたところもあります?

樋口楓:いやー、私が所属しているにじさんじっていうグループはめちゃくちゃ濃い人ばかりなので、個性の食い合いみたいな感じになっていて(笑)。その中にいると私の個性なんて全然薄いなぁって思っちゃうんですけどね。ただ、ファンメイドの曲をたくさん歌っているという部分はひとつの大きな個性になっているような気はします。

ーー樋口さんにとって音楽という表現は大事なものですか?

樋口楓:そうですね。私は口下手なので、普段の配信なんかでもちょっと暴言を吐いちゃうようなタイプの人間なんですよ(笑)。しかも関西弁っていうのもあって、口調がキツく聞こえて怖がられてしまったり。でも音楽にはメロディがあるから、みなさんの心にスッと入り込めるような気がするんですよね。

ーー誤解なく樋口さんの思いが伝えられる媒体であると。

樋口楓:はい。そこに気づけたのは、ファンメイドの曲をたくさん歌ってきたからだと思います。ファンの方は私に似合うであろう曲を作ってくれるし、歌詞には私自身の活動をそのまま盛り込んだりしてくれるんですよ。そういった曲を歌うことで、私自身、自分のことを客観的に知ることができたところもあったんですよね。「あ、私ってこういうふうに見られてるんだな」って。そういう気づきがあって以降は、他の方の曲を聴いていても「きっとこういう思いでこの曲を書いたんだろうな」みたいなことがなんとなくわかるようになってきたりもして。音楽って深いものなんだなっていうことをあらためて感じるようにもなったんですよね。

ーー樋口さんはこれまで音楽とどう触れ合ってきた感じなんですか?

樋口楓:お父さんとお母さんが大学の軽音部でドラムをやっていたこともあって、小さい頃から音楽にはたくさん触れてきていたとは思います。3歳くらいからピアノをやってましたし、小学校からはトランペットを始めました。顧問の先生に勧められた曲を演奏することで、J-POPの曲をいろいろ知るようになったりもして。あんまり意識はしてこなかったけど、よく考えてみると常に音楽の存在が隣にある人生を過ごしてきた感じですね。

ーーご自身のルーツになっている音楽はどんなものなんでしょうね?

樋口楓:好んで聴いていたのは歌詞がないインストの曲が多かったです。トランペットをやっていたっていうのもあるし、インストの曲を聴いて「このギターのカッティングはドラムのノリとピッタリ合ってて気持ちいい」みたいな聴き方をするほうが楽しかったんです。

ーーその年齢にしてはかなりマニアックな聴き方をしていたんですね。

樋口楓:そうですね。インスト曲のベースラインには思いっきり感動してしまう、みたいな。「なんでこんなフレーズが弾けるの? おかしいでしょ。鳥肌立ったわ!」っていう(笑)。今は歌詞の意味もしっかり理解して、その良さを感じられるようにはなったんですけどね。

ーー歌うことに関してはどうですか?

樋口楓:音楽の授業のときに声がデカくて褒められた覚えしかないですね。声量だけはあったっていう(笑)。インストばっかり聴いていたせいで歌の入った曲をあまり知らなかったので、カラオケにもあまり行ってなかったですしね。そういう意味では、今の活動を始めてファンメイドの曲を歌うようになってからだと思います、その楽しさに気づいたのは。

ーー昨年1月には初のライブ『Kaede Higuchi 1st Live ”KANA-DERO”』がZepp Osaka Baysideで開催されました。その経験はどんなものをもたらしてくれましたか?

樋口楓:自分のことを応援してくれている方々が本当にこんなにもたくさんいるんだっていうことを実感できたのが一番うれしかったことですね。私のオリジナル曲は、樋口楓のVTuber人生をある程度知ってもらっていないと理解できない部分があると思うんですよ。だからライブ前には「みんな予習してきてね。そうすれば盛り上がるところがわかるはずやから」みたいなことを言っていたんですけど、正直なところ2000人くらいの方々全員が予習してくれるはずないよなっていう思いもあって。でもふたを開けてみたら会場に来てくださった方はもちろん、ネットチケットを買ってコメントで応援してくださった方も含め、みなさんがコールや煽りの場所をしっかり把握してくださっていて。それにはビックリしたし、ほんとにありがたいなって思いましたね。

ーーリアルでの交流には、ネット上だけでは味わえない感動がありますよね。

樋口楓:そう思います。あの日のライブには家族にも来てもらったんですけど、やっぱりすごくビックリはしていて。うちの親は私の普段の配信を見ていて、「このコメントをくれたのは果たしてどういう人間なのか?」みたいなことをよく言っていたんですよ(笑)。でも実際ライブに来たことで、目の前で泣いたり笑ったりしているファンの方々の姿を目の当たりにしたことで考え方が変わったみたいなんですよね。「楓はちゃんとみんなに応援されているんだね」って。それを知ってもらえたことも私にとってはすごく大きなことでした。

ーーご自身の活動を通してVTuberへの理解度を高めたいという思いも強いですか?

樋口楓:そういう気持ちはありますね。私としてはVTuber文化に対しての偏見をなくしたいんですよ。VTuberを見たときに「何これ?」って不思議に思う人も絶対にいるし、アバターとお話することが恥ずかしいと思う方もきっといると思うんです。でも逆に言えば、生身の人と面と向かってしゃべることが得意ではない人も確実にいるわけで。そういう方はVTuberとおしゃべりすることで楽しい気持ちになったり、前を向いたりすることができるんですよね。

ーーなるほど。

樋口楓:外に出るのがめちゃくちゃ苦手でずっと引きこもってた子が、私のライブに来るために久しぶりに美容室に行き、久しぶりに洋服を買い、久しぶりに外に出れたってコメントをくれたことがあったんですよ。「私が外に出れたのはでろーん(樋口楓の愛称)のおかげです」って。それを見たときに私はめちゃくちゃ嬉しかったし、そういう方がリアルの方々と一緒に生活を営んでいくための手助けが私にはできているんだなって実感できた。そういう役割を担えるということは、すごく大事なことだし、先進的なことだとも思うんです。だからこそ先入観だけでVTuberのことを否定してほしくないし、3次元にしか興味がない人たちの気持ちが少しでもこちらに向いてくれたらいいなっていう気持ちは強いんですよね。

ーー今こうやって樋口さんと面と向かってお話ししてますけど、見た目がアバターということ以外、生身の人間とまったく変わらないですからね。ことVTuberに関して言うならば、リアルとバーチャルの境界線はすごく希薄なもののような気はします。

樋口楓:私は自分のことを「2.9次元の人」だとずっと言ってきているんですけど、やっぱりリアルに近いところで存在していたい、キャラクターとして見られたくはないっていう気持ちがあるんですよね。単なるキャラクターであればどんなことを言われたとしても傷つくことはないじゃないですか。でも私の場合、心ないコメントがくれば「なんでそんなこと言うんねん!」って傷つきもするし、怒りもする。カラダはVTuberだけど、生身の心で毎日生活してますから。そういう部分もしっかり伝わっていったらいいなと思いますね。

ーー今回、音楽でメジャーデビューすることの裏にも、VTuberの偏見をなくし、その存在を世に広めたいという思いがあったんでしょうね。

樋口楓:そうですね。メジャーの世界に出ることで、一般の方々への認知度も高まると思ったので。私はアニメと主題歌の関係性や、それをライブで表現するエンターテインメント性がすごく好きだったので、ランティスさんにお世話になることに決めました。もちろん目の前にはたくさんの壁があるとは思いますけどね。結局受け入れてもらえないという未来が待っているかもしれないわけだし。

ーーYouTubeのチャンネル登録数が約30万人に迫る勢いにもかかわらず、そこはシビアにとらえているんですね。

樋口楓:シビアですよー。全然気軽な気持ちではできないです。私は歌が好きだから活動を始めたわけでもないし、そもそも歌が誰よりも好きだからといって成功が約束されている世界でもないと思うし。とは言え、樋口楓のストーリーと曲を繋げて表現していく、そんなVTuberの生き方もあるんだよっていうことを提示していくことは私にしかできないと思うんですよね。なので、そこを大事にこれからがんばっていきたいですね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる