ヤなことそっとミュート、メジャーデビューまでの軌跡 出会いと別れが刻まれた『Afterglow / beyond the blue.』に見えるもの

ヤなことそっとミュート、メジャーデビューまでの軌跡 出会いと別れが刻まれた『Afterglow / beyond the blue.』に見えるもの

 歪んだ音、蠢く低音、けたたましく鳴らされるリズム。煌びやかさとは相反する退廃美、胸を抉る焦燥感ーー。どれを取ってみても、世間的なアイドルのイメージとはかけ離れたものであり、“陰”を感じさせる表情の奥から醸し出す神秘性は、ロックを武器とするアイドルの中でも異彩を放っている。

 そんなヤナミューこと、ヤなことそっとミュートがついにメジャーデビューした。

 2016年の結成以来、降り注ぐ轟音の中で彼女たちが魅せつけてきたものは、アイドルファンのみならず多くのロックファンの心をも動かした。2017年に渋谷WWW、マイナビBLITZ赤坂、2019年にはZepp DiverCity(TOKYO)と、着実に動員を広げていったワンマンライブが物語るように、インディーズアイドルシーンでの稀有な存在感を実力とともに確固たるものとしてきた。派手なプロモーションもなければ、奇抜な戦略があったわけでもない。ただひたすらに良質な楽曲と、他を圧倒するライブで魅了してきたのである。だからこそ、メジャーに行くことは必然であったし、長い間見守ってきたファンにとっては待ちに待った出来事だ。

 3月25日にリリースされたメジャーデビューシングル『Afterglow / beyond the blue.』は、静と動を司るバンドサウンドと、切なさを感じさせる歌が聴き手の心の隙間にスッと入り込んでくる。物悲しくて美しい、ヤナミューらしい2曲だ。

 「Afterglow」は、2018年6月、恵比寿リキッドルームにて行われた2周年ライブ『ヤなことそっとミュート 2nd Anniversary~YSM TWO~』で初披露されて以来、何度もライブで歌われてきた、ファンにとっても馴染みの深い楽曲である。しかし、ライブ音源は世に出ていたものの、スタジオ音源としてはリリースされていなかった。今回のメジャーデビューにあたり、まったくの新曲ではなく、こうした音源化が望まれていた既存曲を持ってきたことは、ファンの期待に応えることと同時に「メジャーに行っても変わらない」という意志を形で示したものでもあるだろう。

ヤなことそっとミュート – Afterglow

 イントロのピアノの調べが鳴った瞬間、楽曲に新たな息吹がもたらされたことに気づく。そこから、堰を切ったように一気に溢れ出していく轟音。目一杯に歪んでいながらも淀みを感じさせないギターと、優美なストリングスが混ざり合いながらとめどなく流れ出る。物憂げな歌声は、その歪んだ清流に溶け込みながら、次第に大きな強さを見せていくーー。この広闊とした幽玄な音世界を創り上げるために、「Afterglow」はこれまで2年近く、ずっとあたためられていたのかもしれない。そう思えるほどに美しく、気高い響きである。インディーズからメジャーというフィールドにスケールアップしたのだと、高らかに掲げているような音像だ。結成当初から貫き通してきた音楽性のまま、サウンドにこだわり続けてきたヤナミューらしい業である。

 ヤナミューの音楽はグランジやシューゲイザーといった、オルタナティブロックがベースにある。しかし、単に尖ったロックをアイドルが歌っているわけでもなければ、アイドルソングをロックテイストにアレンジしたわけでもない。硬派なロックの音楽性と、女性ボーカルの歌モノとしてのポップセンスの共存である。ロックファンを唸らせるサウンドと、“Female Vocal=女性ボーカル”ファンの胸を打つメロディが見事なまでに調和しているのだ。さらに4人の美麗なボーカリゼーションが絶妙なハーモニーを生み出しながら、シームレスにメロディを紡いでいく。

 優しく語りかけるように歌う間宮まにの澄んだ声、凛としていて力強くて、なのに突然消えてしまいそうな儚なさも漂わせるなでしこの声。そんな2人のコントラストの間を無邪気に行き来する南一花。クールな表情から発せられる凛つかさの色香。4人それぞれの歌声が、織り重なりながら楽曲の面差しをくっきりと浮かび上がらせていくのである。

ヤなことそっとミュート – レイライン【MV】

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