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ヤなことそっとミュートはアイドルシーンで異彩放つ存在に? “歪んだ音”が与えるインパクト

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 夜空を旋回する4機の飛行体か、はたまた深海にたゆたう4つの生命体かーー。

 ヤなことそっとミュートのライブを観ているとそんな感覚に見舞われる。暗闇の中、白を纏い、マントを翻しながら舞う姿は神秘的で美しく、ときに猛り狂う姿は人間的で勇ましい。

 ヤなことそっとミュート(以下、ヤナミュー)は、激しいロックを打ち出したグループも珍しくなくなった現在のアイドルシーンの中でも異彩を放っている。音楽性とサウンドの土台となっているのはグランジやシューゲイザーといったオルタナティヴ・ロック。攻撃的ながらもどこか内包的な趣のあるロックと真っ白な衣装を着たメンバーが、一般的なあでやかできらびやかなアイドルとは相反する、退廃や耽美と神秘性を合わせたような混沌とした非現実的世界観を創り上げているのだ。

「ヤなことだらけの日常をそっとミュートしても何も解決しないんだけど、とりあえずロックサウンドに切ないメロディーを乗せて歌ってみる事にする。」

 一見何を言っているのかわからないこのコンセプトも、人によっては心の隙間にスッと入ってきてしまうことだろう。得体の知れない焦燥感に駆られながらも、聴いているとなんとなく落ち着く、そんなグループだ。

ヤなことそっとミュート – Lily【MV】

 耳にへばりつくようなギター、地を這うようなベース、有機的な暴れっぷりを生み出すドラムが絡み合って、ギシギシと大きな軋みを立てながら歪んだ世界を構築していくーー。アイドルと知らずに音源だけ聴けば、間違いなくバンドと思うことだろう。デスクトップ上で完結するような音楽とはまったく異なるサウンドと音像はロックバンドのそれなのだ。実際にそうしたバンドが楽曲制作や演奏を担っていたりする。そこに「歌い手+バックバンド」という構図はなく、バンドサウンドの中にボーカルが埋もれてしまうところも少なくはない。しかし、そんな轟音の中で己の存在を知らせるかのように、歌が突き抜けてくる瞬間も多くあり、彼女たちの歌声に宿る人間らしい強さに思わずハッとさせられるのだ。

 彼女たちの歌はストレートだ。そこに可愛いらしさであるとか、歌い上げるような飾りはなく、まっすぐに歌声を響かせている。なでしこの力強さ、間宮まにの透明感を軸に、南一花とレナの多重に織り重なっていくコーラスが、蠢めく獰猛さの中に一滴の冷水を落とした様な、轟音の渦中でこの上ない美しい調和を保っているのである。

 ヤナミューの音楽を説明する上で、よく引き合いに出されるのは、90年代〜00年代のオルタナティヴ・ロックバンドや、エモ、ポスト・ハードコアのバンドであたったりする。そうしたある種、マニアライクな音楽性をベースに、日本人らしい情緒のあるメロディが乗る。疾走感とキメを合わせた展開、尖ったフレージングで攻めながらも美麗な歌メロを損なわないサウンドプロダクトは、どこかヴィジュアル系黎明期のバンドを彷彿とさせたり、轟音の中で感情の赴くままに歌声を響かせる様は、負の感情を叩きつけるようなあの頃の女性ボーカルバンドのシーンを思い出してみたりする。具体的に何が似ているというわけではないのだが、なんとなくそういうにおいがするのだ。メインストリームから少しズレた、“歪んだ音”が好きなロックファンであれば、世代はどうであれ自分が聴いてきた音楽にヤナミューを照らし合せて思わずニヤリとしてしまう、そんな要素が多くあるのだ。

      

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