“恋つづロス”の人にも届けたい 上白石萌音、心の琴線に触れる歌声の魅力

深く響く低音域の魅力

上白石萌音「From The Seeds」

 彼女が話す声は落ち着きのあるミドルだが、歌唱における音域は広い。なおかつファルセットの技術も高いため、聴き手に違和感を持たせることなく、地声とファルセットをクロスさせることもできる。

 声量は言うまでもない。最新曲「From The Seeds」(2020年2月25日リリース)でのパワフルな歌唱は実に爽快で心地よい。中毒性のある楽曲とうまく絡み合い、脳内リピートが止むことはない。

上白石萌音「From The Seeds」(ショートVer.)

 そして上白石萌音の「声の美しさ」は、深く響く低音域でさらに映える。

 彼女の楽曲で例を挙げるならば「一縷」(2019年10月14日リリース)をぜひ聴いてみてほしい。

 こうしたノスタルジックな楽曲と彼女の声は、また非常に相性が良い。

 高い語学力と美しいスピーキングを持つ上白石であるから、ミュージカルのスタンダードナンバーも聴かせどころなのだが、それについてはまた、機会があれば語りたい。

〈でもね せめて これくらいは持っていても ねぇいいでしょう? 大それた希望なんかじゃなく 誰も気づかないほどの小さな光〉(「一縷」)

 このフレーズに、ズキンと胸がしびれた。先述したような、どこか少年性を感じさせる声。それでいて、低音域で深く響かせる技術。セリフのように歌う歌詞。

 上白石の技術と感性、すべてが詰まったようなワンフレーズだった。

【好評配信中】上白石萌音「一縷」(映画『楽園』コラボMV)

 楽曲の世界に入り込む想像力と、それを表現する歌唱力、表情、仕草。それらを兼ね備えた上白石の歌声は、心の琴線にじんわりと触れる。芝居においてもそうだ。

 優しくて、あたたかくて、まっすぐで、品があって……そしてなにより、美しい。彼女の声の魅力は、女優・上白石萌音の魅力そのものだ。触れれば触れるほど、底知れず惹かれてしまう。

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