Destroyer、Andy Shauf、Cindy Lee……US/カナダのインディーシーンで個性的な歌を聞かせる5作

Cindy Lee『What's Tonight To Eternity』

Cindy Lee『What's Tonight To Eternity』

 ギタリストの死によって解散したカナダのインディーバンド、Woman。そのフロトマンでボーカルだったパトリック・フレーゲルが女装してスタートさせたソロプロジェクト、Cindy Leeの最新作。リバーブをたっぷり効かせた空間のなか、ギターのフィードバックノイズが吹き荒れ、シークエンサーが淡々とリズムを刻むなか、性を超越したCindy Leeことパトリック・フレーゲルのエンジェリックな歌声が降り注ぐ。暴力性とロマンティシズムが溶け合った甘美な歌は、Suicideに通じる感触もあり。ローファイなサウンドからは、60年代のガレージロックやガールズポップの幻影も浮かび上がってくる。亡くなったWomanのギタリト、クリストファー・ライマーに捧げたラストナンバー「Heavy Metal」に涙。

Cindy Lee - Heavy Metal

John Moreland『Lp5』

Cindy Lee『What's Tonight To Eternity』

 テキサス生まれの巨漢のシンガーソングライター。10代の頃はハードコアバンドで活動していたが、スティーヴ・アールの音楽に出会ったことで、フォーキーなサウンドにシフト。自主制作でアルバムをリリースしてきた。前作『Big Bad Luv』で老舗インディーレーベル<4AD>と契約したのには驚かされたが、新作は<4AD>を離れた模様。アコースティックギターの弾き語りにドラムやキーボードを添えたミニマムなサウンドながら、アレンジはモダンでアメリカンゴシックな美しさも感じさせる。そんななか、しゃがれた歌声は無骨さのなかに叙情を感じさせて、聴けば聴くほどルーツミュージックの旨味が染み渡っていくアルバムだ。

John Moreland - East October

Ryan Power『Mind The Neighbors』

Ryan Power『Mind The Neighbors』

 エレクトロ、R&B、ヒップホップなど、多彩な音楽性を自由自在に取り入れたカラフルなポップセンスで奇才ぶりするバーモント出身のシンガーソングライター、ライアン・パワー。前作『They Sell Doomsday』でアコースティックなサウンドに変化。新作『Mind The Neighbors』は、その路線をさらに追求したものになった。思いついたアイデアをそのまま実行していたような初期に比べて、メロディを大切にしつつ、ストリングスやホーンを盛り込んで丁寧に練られたアレンジが曲にデリケートな質感を与えている。その洗練されたサウンドはジャズやボサノバからの影響を感じさせて、ライアンのボーカルも繊細で内省的。こうした緻密なプロダクションに、もともと持っているポップセンスが加わったら面白いことになりそうで、今後の展開が楽しみだ。

RealSound_ReleaseCuration@Yasuo_Murao

■村尾泰郎
音楽/映画ライター。ロックと映画を中心に『ミュージック・マガジン』『レコード・
コレクターズ』『CDジャーナル』『CINRA』などに執筆中。『ラ・ラ・ランド』『グ
リーン・ブック』『君の名前で僕を呼んで』など映画のパンフレットにも数多く寄稿す
る。監修/執筆を手掛けた書籍に『USオルタナティヴ・ロック 1978-1999』(シン
コーミュージック)がある。

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