Lucky Kilimanjaroが伝える、“おどる≒ダンスミュージック”の新解釈「自分と向き合って楽しむことであり、日々の中で楽しむこと」

ラッキリが語る、“おどる”ことの本質

「日常をちゃんと楽しんで生きてきた実感はある」(熊木)

ーー先ほど松崎さんが仰っていた、今作がメッセージだけではなく、もっと生活に寄り添う部分があるというポイントを掘り下げたいなと思うんですけど、「とろける」や「350ml Galaxy」などはまさに、そういう曲だと思うんです。「HOUSE」以降のムードの曲というか。

熊木:そもそも、メジャーデビュー前は「かっこいい歌詞を書きたい」と思っていたようなタイプだったから、「HOUSE」みたいな曲は、僕にとってはNGだったんですよね。「HOUSE」を書いたきっかけも、「ちょっと疲れたから、楽なのを書きたいな」と思ってサクッと書いたくらいのものだったんです(笑)。でも、あの曲を書いたことで、インドア派な僕自身の感性も表に出てきたし、「HOUSE」を聴いて「これは私の歌だ」と言ってくれる人も多くて。結果として「HOUSE」は、Lucky Kilimanjaroのいい意味での「ゆるさ」を伝えることができる曲になったし、こういう表現が自分にもできるんだなと思ったんです。

ーーなるほど。

熊木:それが、さっき挙がった「とろける」や「350ml Galaxy」につながっていったと思います。日常の気持ちいいシーンを、ちょっと強くしてあげるような曲にできたんじゃないかと思うんです。僕自身、別にお洒落な服に興味があったわけでもないし、アート方向に触れてきたわけでもない。かっこいい文化に触れてきた人間ではないんですよ。でも、日常をちゃんと楽しんで生きてきた実感はあって。そういう感覚をそのまま歌詞に入れ込むことができたなっていう感じもありますね。

ーー「350ml Galaxy」は特に、見事な歌詞ですよね。〈コンビニ寄ってこ/新商品の9%/うずらの燻製と一緒にレジへGO!〉という部分とか、本当に情景が具体的で、でも重くなりすぎず、軽やかに曲に乗っているのが素晴らしいなと。

熊木:こういうタイプの歌詞は、サクサクっと書けるんです。「350ml Galaxy」は、2時間くらいで書いた気がする。この曲ができたとき、メンバーに「これ、RIP SLYMEっぽいよね」って言っていたんですけど、僕、そもそもRIP SLYMEめっちゃ好きだったんです。「ふざけてモノを言っているんだけど、めっちゃ踊れる」っていう感覚は、RIP SLYMEからの影響が大きいかもしれないですね。

ーー自分たちの音楽がその人の生活の中に流れている……そういう光景をイメージできていることが、とても特別なことだと思います。特に、「おどる」って、非現実的な行為だと思う人もいると思うんです。でも、人は日常生活の中で「おどる」ことができるんだって、このアルバムを聴くと感じることができます。

熊木:僕ら自身、クラブカルチャーにどっぷりと浸かってきた人間ではないし、どちらかというとロックのカルチャーのなかで生きてきたんですよね。このバンド自体、普通にサークル活動で遊んでいた中からできたバンドだし。でも、だからこそ、「おどる」ということに対しての解釈が、「自分と向き合って楽しむこと」であり、「日々の中で楽しむこと」なんだっていう感覚が強くあるんです。そういう部分が、今の自分たちの曲には出ているのかなと思います。

ーー人それぞれ、日常のなかで「おどる」瞬間も違うでしょうからね。

ラミ:僕はサウナで熱波を浴びているときが一番、体の悪いものが殺菌されているようで、心おどりますね。

ーーなるほど(笑)。

柴田:僕は犬の散歩ですね。

大瀧:私はゲームやっているときと、ご飯作っているときとか、外食するとき。

熊木:僕もゲームだなぁ。ジーコさんは?

松崎:僕はもう、プロ野球ですね。好きな選手が3打席連続ホームランとか打ったら、もうねぇ。

ラミ:ずっと野球のこと調べてるよね。

山浦:僕は今、週一でフットサルをやっているので。みんなでパスを回していって、最後にゴールを決めると、おどりますね。

大瀧:え、実際に踊るの? 

山浦:いや、心が。

ーー(笑)。見事にそれぞれキャラが違いますね、Lucky Kilimanjaroは。

大瀧:バンドやっていなかったら、絶対に友達になっていないと思います(笑)。

熊木:それぞれ、生きている領域が全然違うからね(笑)。

「他の人に作用できるような表現をできれば」(熊木)

ーー今回のアルバムが優れたポップアルバムである由縁は、熊木さんや、Lucky Kilimanjaroというバンドの人生観みたいなものが、ものすごく実直に、作品に反映されているからだとも思うんですよね。

熊木:このアルバムを作って思ったんですけど、僕は熱くなれる瞬間が好きなんですよ。昔はそうでもなかったんですけどね。昔はスポーツを見て熱くなるタイプじゃなかったんですけど、去年のラグビーワールドカップとか、すごく感動して。努力して、なにかに挑戦して、それが成し遂げられる瞬間の熱って、あるじゃないですか。

ーーありますね。

熊木:僕も「ひとりの夜を抜け」を作ったときに、自分が積み上げてきたもののうえで、「みんなになにかを与えることができた」っていう感覚があったんですけど、僕はそういう熱くなれる瞬間を求めているんですよね。自分が熱中することで、なにかを成し遂げることって、すごく幸福度が高いと思う。でも、熱いばかりだとダメだから、熱くなった自分をクールダウンさせるために「350ml Galaxy」や「とろける」みたいな瞬間も必要だし、それも曲にするし。そうやって人生のバランスを取りながら生きているんだと思うんです。音楽で煮詰めて、それをゲームや映画でクールダウンさせる、みたいな(笑)。そういう自分の日常の感覚がそのまま作品の作りに出ているのかなと思います。

Lucky Kilimanjaro「ひとりの夜を抜け」Official Music Video

ーーその中には、もちろん「ロケット」のような内省もあるし。

熊木:そう、僕自身、すごく不安になるタイプだし、自分のなかでこんがらがってしまうタイミングが日々の中であるんですよね。でも、僕だけじゃなくて、そういう人ってたくさんいると思うんですよ。それですべてを諦めてしまう人もいるのかもしれないけど、でも、「こうすれば、もっと人生を楽しめるかもしれないよ」っていう提案はしていきたいので。昔の自分が作った曲のなかには、自分の暗い部分を切りとって、それを美しく見せたいっていう気持ちもあったと思う。でも今は、その1歩先で、「人になにかを与えたい」と思うようになったんだと思います。

ーー「与える」って、前提に「豊かさ」があるからこその態度だと思うんです。もちろん豊かさって経済的な面だけじゃなくて、気持ちの問題でもあって。今、20代前半くらいの若者に話を聞くと、「不安」という言葉をよく口にするんです。その不安感は、今の時代感や社会の在り様に起因する部分も大きいとは思うんですけど、その不安感に、Lucky Kilimanjaroの「与える」という態度が、なにかしらの示唆になるかもしれない、とも思うんですよね。

熊木:僕も、そういう若い人たちが感じる不安感みたいなものは、漠然と伝わってきている感じがしていて。でも、その不安感を受け入れすぎてしまうと、アンニュイでい続けてしまうような気がするんですよね。それが悪いわけではないんだけど、そういう不安のなかにいる人が、他の人になにか作用できるようなきっかけを与える表現を、自分たちはできればいいなと思っていますね。

『!magination』
Lucky Kilimanjaro『!magination』

■リリース情報
Major 1st Full Album『!magination』
2020年3月4日(水)リリース
¥2,700+税

<収録曲>
01.Imagination
02.Drawing!
03.350ml Galaxy
04.グライダー
05.RUN
06.時計の針を壊して
07.とろける
08.君とつづく
09.春はもうすぐそこ
10.DO YA THING
11.ロケット
? Bounus Track ? ※CD ONLY
ひとりの夜を抜け -Live at Shibuya WWW Nov.23 2019- HOUSE -Live at Shibuya
WWW Nov.23 2019- FRESH -Live at Shibuya WWW Nov.23 2019-

■東名阪ツアー情報
LUCKY KILIMANJARO ONEMAN TOUR『!magination』
2020年5月2日(土)東京・恵比寿Liquid Room OPEN/START:17:15/18:00
2020年5月8日(金)愛知・名古屋CLUB UPSET OPEN/START:18:30/19:00
2020年5月9日(土)大阪・大阪Music Club JANUS OPEN/START:17:15/18:00

LUCKY KILIMANJARO ONEMAN TOUR『!magination -もう一杯- 』
※追加公演
2020年6月21日(日)東京・渋谷Club Quattro OPEN/START:17:15/18:00
チケット:前売り3900円 ※ドリンク代別
イープラス

オフィシャルサイト

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