the GazettEが明かすライブ美学と、バンド活動への信念「“ヴィジュアル系のあり方”を示していきたい」

the GazettEが振り返る『NINTH』ツアー

 the GazettEが、2019年6月13日にリリースした9thアルバム『NINTH』を掲げて1年以上に渡り行ったツアーライブ『LIVE TOUR18-19 THE NINTH』の全ての模様を収録したDVDが3月4日に発売される。

 今回のDVDには、『Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-』からライブハウスで行われた『Live Tour18 THE NINTH / PHASE #02-ENHANCEMENT-』、そして約12年ぶりに高田馬場AREAや目黒鹿鳴館で行われた小箱ライブ『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE #03 激情は獰猛』、ワールドツアーを行った『WORLD TOUR19 THE NINTH PHASE #4 -99.999-』、横須賀芸術劇場で行われた『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE #5「混血」』そしてツアーラストを飾った横浜アリーナで行われた『LIVE TOUR18-19 THE NINTH TOUR FINAL「第九」』までの全61本のライブの模様とその裏側が収録されている。

 今回は、戒(Drums.)、REITA(Bass.)へインタビューを行い、ツアー当時の思いを振り返りながら、ライブに対する美学や、ファンに対する思いを語ってもらった。(編集部)

技術の進歩と時を経て可能となった小箱ライブ

――『LIVE TOUR18-19 THE NINTH』は長さにして1年以上、本数にして61本というロングツアーだったと思います。振り返ってみてどんなツアーでしたか?

戒:いつも通りの回り方ならホールツアーから始まってライブハウスツアーを行う感じなので、小さいハコまで網羅するツアーはいまだかつてなかったと思います。なので、内容はなかなか濃かったですね。

REITA:『NINTH』を完全に昇華するにはこのくらいの本数は必要だったなと思います。どのタイプの会場でもthe GazettEのライブを魅せられると証明したかったし、単純に楽しみでもあったし、そこはすべてクリアできたかなと思います。

――今回のツアーにキャパシティの小さいライブハウスも組み込んだのは『NINTH』がthe GazettEの歴史を紐解くようなものだからこそ、これまで歩んできた道をキャパシティの面でも辿るような意図があったのでしょうか?

戒:そうですね。言ってもらったように『NINTH』が今までのthe GazettEの歴史を綴ったようなアルバムなので、自然な流れで小さいハコもまわろうかとなりましたね。

――作品内でも各メンバーがコメントしているようにホールで行われた『Live Tour18 THE NINTH / PHASE #01-PHENOMENON-』(以下、PHASE #01)の段階でライブのスタートがよかったそうですね。やはりこれは『NINTH』がライブを意識して作ったからなのでしょうか?

戒:前作の『DOGMA』が特殊すぎて、今までのスタイルに戻ったような感覚ではあるんですけど、それを差し置いても今回がすごく想像通りにスタートが切れました。なので、早い段階からより内容を濃くしていくことに力を注げたのは大きかったですね。

――REITAさんも同様の発言を作品内でされていましたね。

REITA:みんなノリを掴むのが早かったし、僕らの“ライブで映える”という意図をファンの子たちは理解して初日から体を動かしてくれていたので、スタート位置が高いとさらに高いところまで行けたというのがありますね。

――そんな想像通りのスタートを切った『PHASE #01』ですが、ドキュメンタリーには演出や音響、曲間のタイム感など、かなり綿密な打ち合わせをしているところが映っています。

戒:曲間に関しては『DOGMA』のツアーの方が難しかった記憶がありますね。というのも『NINTH』の曲に対して過去の曲含めていろんな候補曲を出すんですけど、結構どの曲ともマッチして扱いやすかったので曲間が難しい印象はなかったです。ただ、早くにそういうところに力を注げたのはよかったし、そのおかげで過去のどのツアーより完成度が高かったと思います。

――『NINTH』の曲が過去の曲とマッチするのはやはり歴史を紐解くうえで、過去の楽曲のエッセンスを感じるがゆえの親和性なのでしょうか?

戒:『DOGMA』のコンセプトが強すぎたこともあって、前回のツアーの候補曲に制限が多かったんです。それがなくなって通常に戻ったとも言えるんですけど、言われている通り過去の曲に近い空気感があったんだと思います。

――それでいて『DOGMA』の曲とも違和感なく並んでますよね。

戒:そこともなぜか合うという(笑)。そこがすごく不思議なんです。

――続く『Live Tour18 THE NINTH / PHASE #02-ENHANCEMENT-』はライブハウスツアーですが、『PHASE #01』に対してどのようなものになりましたか?

REITA:ホールではイメージを固めてノリを掴むセクションでしたけど、ライブハウスではそれを放出するような感じでライブができたかなと思いますし、演出面よりも曲の間とか、セットリストや自分のステージングに力を注げたセクションでした。

戒:『NINTH』の曲自体に可能性がすごくあったので、1曲1曲に対するアプローチの仕方を掘り下げていきました。より『NINTH』の曲が際立つようにセットリストの候補曲も一新して、アルバムの世界観をどっぷり深く魅せられたセクションだったと思います。

――そして小箱ツアーとなる『LIVE TOUR18-19 THE NINTH PHASE #03 激情は獰猛』(以下、PHASE #03)は話題を呼んだと言いますか、告知の際はかなりざわついていた記憶があります。

REITA:告知するのが楽しみでした(笑)。どうだ! みたいなところはありましたね。

一同:(笑)。

――高田馬場AREAや目黒鹿鳴館でのライブは2007年以来約12年ぶりだったかと思いますが。

REITA:僕らの技術の進歩もそうですし、昔から時々こういう話が出ては機材が乗らねぇだろっていう問題に直面してたんですけど、時を経て大人になったこともあって機材をコンパクトにする余裕も出来て、ステージに乗る規模でちゃんとできるようになったと。

――ステージが小さいと機材が乗らないおそれがありますもんね。

REITA:戒がやっとドラムをコンパクトにしてくれてね。これまで頑なでしたから(笑)。

戒:(笑)。機材面以外にも昔のthe GazettEは小さい箱では世界観を表現しきれないんじゃないかという考えはありましたね。でも、その心配が今回なかったというのは見てくれよりもそこで世界観を作れてしまう『NINTH』の曲のインパクトが強さのおかげだと思います。

――これまでも小箱でやる話は出てたんですね。

戒:やりたい気持ちももちろんありましたけど、そこはバンドなので誰かひとりが「ならん!」って言ったら話はそれまでですし。

――それは誰かの「ならん!」があったということですか(笑)。

戒:そういうわけではないですけど(笑)、バンドの空気感的に。実際『DOGMA』の時も話は出たんですけど、やらなかったっていうのはそういうことだろうし。

――そういう意味では過去作品の『-再定義-』ツアーや、『十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』、ファンによる投票でセットリストを決めた『BURST INTO A BLAZE 3』という過去を振り返るようなタームがあって、『NINTH』というアルバム出た後というのはタイミング的に必然のようにハマっていますよね。

戒:そうですね。自然な流れだったと思います。

――思い出深い場所はありますか?

戒:どこも懐かしかったよね。

REITA:初ライブをやった目黒鹿鳴館はもちろん、高田馬場AREAなんかも。

――AREAは初めてお客さんからチケット代を取ってワンマンをやった場所ですよね。

REITA:そうですね。当時の動員は220人くらいだったかな。

――箱のキャパシティに対して半分くらいですが、the GazettEにもそういう時代があったということですよね。今回のAREA公演のことは覚えてますか?

戒:意外とお客さんのほうが恥ずかしがってた印象はあります。

REITA:初日は特にね。

戒:「え? どうしたお前ら」ってなりました(笑)。たぶん距離が近すぎて恥ずかしかったんでしょうね。ということもあって初日はマジで酷かったよね?

REITA:酷かった! 全然盛り上がらなかったですからね!

――個人的にはAREAが壊れちゃうんじゃないかと心配しましたが、まさかの展開ですね。

REITA:僕らもこりゃとんでもないことになるぞと思って、いざ挑んだらファンとの距離がゼロ距離なわけじゃないですか。お互いはじめまして感が出ちゃって合コンかよ! みたいな(笑)。

戒:そこに関してはダイレクトにRUKIがMCで言って翌日から直りましたけど、初日は変な空気でした(笑)。

REITA:だからライブ中に柵の前まで行っても僕に触らないんですよ。昔だったらジャックとかも引き抜かれたりしたんですけどね。まぁ、みんな大人になったからだと思うんですけど、ちょっと思ってたのと違ったなって。

――想像通りのライブでも、そこだけは想定外だったと。

REITA:想定外でした(笑)。

――鹿鳴館のスタッフに“売れない”レッテルを張られた話もありましたね。

REITA:鹿鳴館に限らずいろんな人に“売れない”って言われましたね。

戒:それで今ここに立ってるからね。

REITA:僕らを“売れる”って言ったのは社長くらいでしたよ(笑)。

――でもそういう過去を現在の姿をもって肯定するようなツアーでもあったのかなと思いました。

戒:たしかにいつからか周りの声とか周りの人たちのことは気にならなくなりましたね。

――『PHASE #03』のファイナルでもあったTSUTAYA O-EASTで「自分たちが間違ってないと思ったことをやるのがこのバンドの理念であり信念」というMCの通り、バンドとしての芯のブレなさは一貫していますし、その媚びない姿勢がthe GazettEらしさでもあると感じます。

戒:そうですね。周りはこうだからウチはこうとか、そういうのは関係ないと思えるようになりました。

――そしてワールドツアーのセクションとなる『WORLD TOUR19 THE NINTH PHASE #4 -99.999-』(以下、PHASE #04)では、そのバンドとしての信念が海外のファンにもしっかりと伝わっている様子が伺えました。もはや日本人と同じような感性でthe GazettEを見ているような感じさえしますが、そういったものは肌で感じるものですか?

REITA:どの国でも日本と変わらない感覚でライブを出来ているってことはありますね。ライブが始まっちゃうとどこの国か気にしてないというか。

――その感覚は珍しいような気がしますが、それは昔の海外ツアーの頃からですか?

REITA:いや、最初は海外にもこれだけのファンがいるんだって浮かれましたよ(笑)。

――「その声は脆く」で涙してるファンの方がいたりして、そういうところも日本人のファンと同じなんだなと思わされました。

REITA:たぶん歌詞を翻訳してくれてると思うんですけど、真面目に聴いてくれてるんだなっていうのは感じました。

戒:海外の子たちは研究熱心ですよね。

――逆に終演後の握手会での反応は海外ならではという感じでしたね。

REITA:日本だと恥ずかしいのか目も合わせてくれないのでうれしいのかわからないんですよね(笑)。その点、海外の子は正直に反応してくれるので僕らもやってて気持ちいいです。

――その他にもthe GazettEがきっかけで日本の文化に興味を持ったという方もいらっしゃいました。

戒:俺らが入り口で大丈夫?(笑)。

REITA:日本の文化を勘違いされてないか心配です(笑)。

――もう当たり前のようにヴィジュアル系=日本の文化という図式が成り立っていますよね。

REITA:海外に行ってライブをすることはできるんですけど、セット系の機材は持って行けなくて、だからこそ1万人規模の会場で、セットも100%な状態での僕らのライブを一度は見てもらって、作り込まれたヴィジュアル系のライブというものを海外の方にも体験してほしいなと思いますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる