fumika×George(MOP of HEAD)特別対談 異色の初タッグで両者が感じた音楽の自由さ

fumika×George(MOP of HEAD)特別対談

 歌手のfumikaがインストゥメンタルバンド・MOP of HEADをフィーチャーした新曲「Free feat.MOP of HEAD」を配信でリリースした。1万人のオーディションをきっかけにメジャーデビューをし、数々のドラマ/映画主題歌やCMソングを歌ってきたfumikaと、ダンスミュージックを人力で演奏し、ライブハウスとクラブを横断しながら活動を続けてきたMOP of HEADというのは、かなり異色の組み合わせだと言っていいだろう。しかし、そんな意外性のあるコラボレーションだからこその化学反応が起き、fumikaは新しい歌い方を発見して、極上のポップスが誕生した。fumikaとMOP of HEADのGeorgeに制作を振り返ってもらい、それぞれの音楽との向き合い方について話を聞いた。(金子厚武)

今回のコラボで「自分の型をあっさり外せた」(fumika)

fumika、George(MOP of HEAD)

――まずは今回のコラボレーションの経緯を教えてください。

fumika:私はずっと一人で歌を歌ってきたんですけど、一昨年くらいからふと誰かと一緒に作品を作りたいと思うようになって、相手を探していたんです。そんな中で、MOP of HEADのことを知って、めちゃめちゃかっこいいインストバンドだなって思ったので、こちらからラブコールを送らせてもらいました。すごく音楽的自由度が高くて、インストバンドなのにまるで歌が存在しているかのような作品を生み出す人たちだ!と思ったから、こういう人たちと一緒にやったらどうなるんだろう? ってとてもワクワクしました。

――「誰かと一緒に作品を作りたい」と思うようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

fumika:ウクレレですね。楽器を通して様々なアーティストやミュージシャンとセッションをしたりしてるうちに、自分一人ではない、誰かの要素を介在させて音楽を作る楽しさを知って、もっと濃く、深く、創作をしたいと思うようになりました。しかも、せっかくなら新しいアプローチをしたいと思って、MOP of HEADに声をかけました。

George:オファーをいただいて、超びっくりしたけどね。「俺らにこんな正統派のシンガーからオファーが来るんだ?」って。だから、正直最初はメンバーみんな「こんなに歌が上手い人、(バンドが)俺らじゃなくていいんじゃない?」って思ってたけど、面白そうなことはとりあえずやってみたいし、実際一緒に演奏したらすごく楽しかったです。

fumika:私もめちゃめちゃ楽しかった。

――初めて会ったのはいつ頃だったんですか?

George:一昨年に初めて会って、すぐ曲を作り始めました。「こういう曲がいい」っていうのを聞いて、2日後くらいにラフなトラックを1コーラス送ったんじゃないかな? あれ、作ってあったのを送ったわけじゃないからね(笑)。

fumika:(トラックが届くのが)早過ぎてびっくりしたのは覚えてます(笑)。最初にインストで送ってもらって、そこからやりとりをしながら、メロディをつけていきました。

――曲調のリクエストはどの程度あったんですか?

George:「何が好きなの?」みたいなことを聞いたら、「シンディ・ローパーが好き」って言ってて。

fumika:80年代の洋楽が好きなんです。あとは、「これまでやったことがないことをやりたい」というのもお伝えして。そうしたら、すぐにデモが来て、聴いた瞬間めちゃめちゃかっこいいと思ったので、「これで行きましょう!」ってすぐ決まりました。

George:最初は「何曲か送ろうか?」って言ってたと思うんですけど、結局1曲しか送ってないもんね。1曲送って、返事もらって、「じゃあ、これを詰めましょう」って。

――fumikaさんは以前からシンディ・ローパーをフェイバリットに挙げていらっしゃると思いますが、最近だとどんなアーティストがお好きですか?

fumika:今はまってるのは……アリシア・キーズの「Underdog」これは同じボーカリストとしての文脈ですね。あとは……The Chemical Brothersとか。

Alicia Keys - Underdog (Official Video)

George:一気に(MOP of HEADに)近くなった(笑)。fumikaちゃんはビリー・アイリッシュとかどう思うの? 俺はかっこいいと思うけど、めっちゃ声小っちゃいじゃん? 歌上手い人からすると、あれはアリなの?

fumika:もちろんボーカリストとしても最高だと思います。それこそ、今回のレコーディングで驚いたのが、「こんな小っちゃい声で歌ってもアリなんだな、わたし」ってこと。

George:「声張らなくていいよ」っていうのはずっと言ってました。声を張っちゃうと、楽曲の到達地点の印象が変わっちゃうんで、程よい力の抜き加減で仕上げたくて……そこはすごく頑張ってくれて。

――J-POPのバラードは張り上げるのが基本だから、fumikaさんとしてはチャレンジだったでしょうね。

fumika:そうですね。最初はそもそもの自分の歌い方だったんですけど、「張らなくていいよ」っていうディレクションをしてもらったことで、自分の型をあっさり外せたというか。楽曲のグルーヴの心地よさにある意味、そのまま連れていかれた発声になりました。それによって、新しい自分を見つけられたような気がします。もともと表現可能な領域だったのかもしれないけど、自分一人では見つけ出せなかった部分を、Georgeさんたちと一緒にやることで気付かせてもらった。その経験は「Free」の歌詞にも繋がりますね。

――「他者を通じて自分を再発見する」っていうのは、コラボレーションの醍醐味ですよね。Georgeくんとしても「普段とは違うfumikaさんを引き出したい」という狙いがあったわけですか?

George:そうですね。意図してたのは、00年代初頭のハウスとかクラブジャズのトラックだったんです。あの時代の、力は抜けてるんだけど、ちゃんと踊れる感じのものを作りたかった。熱量のある音源だと、そこからは離れてしまうから、感情を入れ込み過ぎない方がよかったんです。あとイントロに関しては、作ったのが結構前ということもあって、当時チャンス(・ザ・ラッパー)とかBrasstracksとかが、面白いホーンのアレンジとかゴスペルっぽいのをやってて、今聴くと、影響受けてたんだなって思います。

――00年代初頭の感じっていうのは「確かに」と思って、僕はMONDO GROSSOとかを思い出したりもして。

George:曲を作るときに誰かと誰かを組み合わせるのが好きなんですけど、この曲はJazztronikの感じと、チャンスっぽい音と、あと一時期Coccoさんとくるりの岸田さんが一緒にやってたじゃないですか?

――SINGER SONGERですね。

George:あの時代のJ-POP感も入れたくて、そういうのをゴチャッと混ぜた気がします。それをさらに4人で消化すると、また違うものになるんで。

――今回はそこにfumikaさんのボーカルも加わって、より面白い混ざり具合になりましたよね。

George:いいポップスとダンスミュージックが近い距離にあるっていうのがすごくいいと思ってたから、そういうのを作りたかったんですよね。

――fumikaさんは00年代初頭のJ-POPに対する思い入れってありますか?


fumika:両親が洋楽好きだったのでその環境で育って、デビューして、自分で歌詞を書くようになってからはJ-POPの日本語歌詞の魅力に惹かれて、年代問わず邦楽もいろいろ聴くようになったんですけど……なので00年くらいはまだ創り手としての音楽ではなかったのでそんなにJ-POPを聴いてなかったですね。洋楽ばかり聞き漁ってたのと、あとミュージカルばっかりやってたので。

George:だからあんな声が出るんだ。

fumika:ミュージカルの発声方法はもう身に沁みこまされてしまってますね(笑)

George:なるほどね。「遠くに届く声だな」って思ってて、ライブハウスというよりホール、なんならスタジアムでも抜けるような声の出し方だと思ってたから、その理由がわかった気がする。

――そんなfumikaさんが張らずに歌うっていうのは、やっぱりチャレンジですよね。

George:ただ、今回ダブルもコーラスも入れてて、歌はメイン一本では考えてなかったから、メインがいいトラックである必要はあんまりなかったというか。メイン、ダブル、コーラス、全部が重なったときに、一番気持ちいいものにしたくて、それが上手くハマったなって。でも、それをfumikaちゃんに軽く言っただけでできちゃうのがすごい。自分の歌い方を崩したりしづらいボーカリストも多いから、臨機応変に対応できる人は案外少ないと思うんですよね。

fumika:今回は「従来のJ-POP メインストリーム=fumikaのイメージでは無いことをやりたい」っていうのが前提だったので、遊び心を大事にして、レコーディングでもいろいろ”実験型”で行いました。

――その前提があったからこそ、自分のスタイルを崩すことも厭わなかったと。

fumika:「とにもかくにも全力で楽しんじゃえ」って感じでした(笑)。すごく印象に残ってるのが、2番の〈プライドなんて傷つくほど 持っているはずもないのに〉の部分って、最初ただ単に間違って歌って、メロが崩れたんですよ。でも、「これよくない?」ってなって。

George:アドリブ的な感じになって、「間違えた方がいいじゃん!」ってね。俺が歌録りですごく覚えてるのは、エンジニアとメンバーみんなで「これ超早く終わるね」って言ってたこと。こんなにスムーズにボーカルが録れるなら、早く終われるから、正直途中から飲みに行くことしか考えてなかった(笑)。

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