「Free feat.MOP of HEAD」インタビュー
fumika×George(MOP of HEAD)特別対談 異色の初タッグで両者が感じた音楽の自由さ
「曲を作ろうと思ったら、家事とか無理だし、鍵とかすぐ忘れちゃう」(George)
――Georgeくんは最近いろんなボーカリストと仕事をしていて、もちろんそれぞれのよさがあるわけですけど、「上手さ」という意味ではfumikaさんは特別ですか?
George:「歌が上手い」って難しいですよね。自分がボーカリストじゃないっていうのもあって、ボーカルについてはドライに考えてるというか、僕は音楽を聴くときに、「歌だけを聴く」っていうことはないんです。音楽そのものを聴いてるから、「どこがメイン」っていう考え方じゃない。だから、その曲に対して上手く歌える人が、僕にとっての「歌の上手い人」。そういう意味では、すごく表現力が高かったから……レコーディングが早く終わりましたね(笑)。
――「Free」というタイトルであり、歌詞の内容は自然に出てきたそうですね。
fumika:デモを一聴した時に、咄嗟にサビの〈I’ll be free〉っていう言葉がインスピレーションで浮かんできて。そこで「一体何でこの言葉が浮かんだんだろう…わたしは無意識に窮屈さを抱えているのかな…」って考え出してしまって(笑)果たしてそれは社会なのか、SNSなのか、自分のイメージなのか、自意識なのか…いろいろ考えていくうちに、結局自分で自分を勝手に縛ってしまっているんだなって気づいて。そこからはもう自然にスムーズに言葉が生み出されて、あっという間に歌詞完成、となりました。
――新しい歌い方を発見できたのも、自分を解放して、自由に歌ってみたからでしょうしね。ただ、さっきfumikaさんも言ってくれたように、今って何かに対して不自由を感じる瞬間って結構多い気がして。Georgeくんは今何に対して不自由を感じますか?
George:僕はあんまりないですけど……音楽がいっぱい聴けるようになって、音楽を聴くってこと自体が作業化し始めてるなっていうのは思います。みんな口に入れるものに関しては、生産者とか生産地を気にするけど、音楽はどこで誰が作ったかを気にする人ってあんまり多くないと思うんです。どうやったらもっと音楽を大事に扱ってもらえるかなっていうのは、漠然と思ったりして。作業化が進むと、どんどんリリースのスパンが短くなって、アーティストが苦しくなる。そういう時代がもうすぐそこに来てるような気もするから、それを全体で変えていかないと。そこが不自由というか……どうなっちゃうのかな? って。
――たくさんの音楽が聴けるようになった分、「この曲好きだけど、誰の曲かは知らない」みたいなことが普通になってる感じもありますもんね。
George:どのスタジオで録音したかまでは知らなくていいけど、誰が作曲して、アレンジして、演奏してるかってわかると、自分の好きな音楽の傾向がわかるし、その曲がもっとよく聴こえるとも思うんです。まあ、それを僕らが求めてしまうのも違うと思うから……まずはミュージシャンの側が自分の音楽をちゃんと大事にすることからかなって。
――リスニング環境の変化の功罪について、fumikaさんはどうお考えですか?
fumika:ただシンプルに音楽ファンとしていろんな音楽が聴けるのはありがたいことだと思います。逆にいうと自分の好きなタイミングで発信できるのも今の時代の良さだと思うし。ただ、それによって音楽の価値が下がるかもしれないというのは思わざるを得ないというか……だけど、もっと根本でいうと私の歌が安かろうが高かろうが、自分は歌に救われてると思っているので、それで誰かをハッピーにしたり、繋がったりできたら、私はそれ自体が価値かなって思います。自分にとって、音楽はそういうものですね。
――fumikaさんは今後もいろんなアーティストとコラボレーションを続けていくのでしょうか?
fumika:そうですね。こういった刺激や変化はもっと追い求めて行きたいですね。もちろん、MOP of HEADさんともまた作りたいですしね。
George:いいねえ、楽しみじゃん。
fumika:楽しみでしかないですよ。
――Georgeくんもここ数年はホントにいろんなアーティストと関わりながら音楽を続けていますよね。George:毎日音楽をやってたい人間なんで、いろんな人といろんな音楽を作りたいです。僕、音楽以外に関心あることが少なすぎて、家にも機材しかなくて、電子レンジとか炊飯器もないし、今洗濯機も捨てようと思ってるんですよ。食事もUber Eatsで持ってきてもらって、音楽だけやってると調子がいいんです。たぶん、同時にいろんなことができないんですよ。曲を作ろうと思ったら、家事とか無理だし、鍵とかすぐ忘れちゃうし、市役所とか行けないし(笑)。ひとつのことしかできないんだなって、諦めたというか、気づいたので、音楽だけをやってたいなって。
fumika:私は市役所には行きますけど(笑)、その感覚、わかる。
ーーfumikaさんも、きっと歌を歌い続ける人でしょうからね。
George:シンディ・ローパーみたいになるのもかっこいいよね。
fumika:ライブパフォーマンスが全然衰えないんですよ。あんなおばあちゃんになりたい。理想ですね。
George:なってそうだけどね。おばあちゃんになって〈I’ll be free〉って歌ってたら、超かっこいいよ。「まだ自由求めてるんだ?」って(笑)。そうなるともう哲学だね。人間はいつまでも自由を追い求めるのかって……いい歌作れたね。
■配信情報
fumika 「Free feat. MOP of HEAD」
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