HMLTD、Blossoms、King Krule、The Orielles……若手アーティストの動向から考察する、2020年UKロックの展望

Blossoms『Foolish Loving Spaces』

 2020年2月10日発表のUKアルバムチャートの1位は、Blossomsの『Foolish Loving Spaces』だった。新人や若手が厳しいと言われて久しいUKの音楽事情、ロック事情であるが、それを打破する一撃のように思える。2020年、UKロックは果たしてどうなるのか? 本稿では、筆者の期待を込めながら、2020年のUKロックの展望を描きたいと思う。

 そのBlossomsのアルバムはシンセポップやファンクの影響下にあるといっても過言ではないが、相も変わらず、70~80年代を参照点とすることが一つの傾向としてあるように思う。

Blossoms – If You Think This Is Real Life

 2月28日にアルバムリリースを控えるThe Oriellesだが、先行リリースされているタイプが異なる2曲ーージャズの静けさと旧来のギターポップが持っていた高揚感を行き来する「Come Down On Jupiter」、Average White Bandを想起させるようなファンク・ディスコ・チューン「Space Samba(Disco Volador Theme)」を聴く限りでは、ダンスフロアという宇宙を旅行している気分になれるアルバムと予想される。従来の持ち味であったアンニュイさが残るギターポップに、ジャズやファンクを装備した、ミラーボールの輝きを味方につけたThe Oriellesが聴けるのではないだろうか。

The Orielles – Come Down On Jupiter

 ジャズといえば、King Kruleを忘れてはならないだろう。チェット・ベイカーを敬愛する彼が放つ、色気のあるボーカルは健在。様々なビートを取り入れることを得意としている彼だが、アルバム先行曲としてリリースされた「Alone, Omen 3」、「(Don’t Let the Dragon) Draag On」では、ジャズの乾いたビートに乗せて、タイトルからも想像できる通り、相も変わらず孤独感漂う歌詞を歌い、重たいダークな音で塗り固めている。声は低めに処理され、これまでのように揚々と歌い上げるというよりも、絞り出すようにポツリ、ポツリと語っているように思える。ポエトリーリーディングの面が強化されたアルバムになるのではないか、それにより、彼の伝えたいこと、孤独と生への渇望がダイレクトに伝わってくるような作品になるのではないかと思う。

King Krule – Alone, Omen 3
King Krule – (Don’t Let The Dragon) Draag On

 ガーディアン紙『All talk: why 2019’s best bands speak instead of sing』でも取り上げられたが、筆者が今、UKで最も面白いかもしれないと思っているのが、ポエトリーリーディングである。その手法を最も体現しているのが、Sinead O’Brienだ。アイルランド出身、ロンドンを拠点に活動をしている彼女が作る音楽は、先に詩があって、音はその情感たっぷりに読み上げる詩に合わせて付けられる。以前は詩の朗読のみでライブを行っていたこともあるという。詩を読むことに重点を置く、それゆえに歌うよりも歌詞の内容がダイレクトに伝わってくる。韻を踏むことも忘れてはいない。バンド編成でポエトリーリーディングを行っているのが、Black Country, New Road、Dry Cleaning、Do Nothingあたりだろう。せっかくのバンドサウンドがあるのに、歌わないのか……と、少しもったいない気もするが、特にサウンドが大きく変化する、Black Country, New Roadの「Sunglasses」は、まるで一つの物語を見ているような気分にさせられる。ただ身を委ねるだけが音楽ではない。何かを表現するものだということに改めて気づかされる。彼らはシングルこそ出しているが、アルバムリリースはまだ。今年リリースするのではないかと予想しているが、その際には80年代ポストパンク界の詩人と言われたマーク・E・スミス以来の新しいトレンドとなりうるのか、注目したい。

Sinead O’Brien – Limbo (Official Video)
Black Country, New Road – Sunglasses | Stolen Sessions

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