キーワードは“世代交代”と“ジャンルレス化” Spotify 2019年年間ランキングにみる、音楽シーンの世界的変化
音楽ストリーミングサービスのSpotifyが、2019年の音楽シーンを振り返るランキング(集計期間:2019年1月1日~11月25日)を発表した。「世界で最も再生されたアーティスト」には、今年だけで65億回以上の再生を記録したポスト・マローンが輝いた。最新アルバム『Hollywood’s Bleeding』も、配信開始からわずか12週間で「世界で最も再生されたアルバム」の2位となっている(参考:リアルサウンド テック)。
2位と3位には、ビリー・アイリッシュとアリアナ・グランデといった女性アーティストがそれぞれランクイン。ビリー・アイリッシュは今年60億以上の総再生回数を記録し、アルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』は「世界で最も再生されたアルバム」となった。Spotifyで女性アーティストのアルバムが、年間最も再生されたアルバムとなるのは初めてのことだという。
これらの今年を振り返る世界的な指標について、音楽ジャーナリストの柴那典氏に話を聞いた。彼は「今年のランキングを紐解く上でのキーワードは『世代交代』と『ジャンルレス化』にある」と前置きをしつつ、まずは前者の「世代交代」について、こう分析した。
「まずはなんと言っても、今年に入って大躍進を遂げたビリー・アイリッシュが『世界で最も再生されたアーティスト』の2位に入ったことは、1年を語るうえで欠かせないトピックでしょう。彼女の躍進を含め、昨年のランキングからの変化をみていくと、2010年代後半に頭角を現したアーティストが大半を占めており、世界の音楽シーンに世代交代が起こったということを象徴するチャートになっていると思います」
続く「ジャンルレス化」については、ポスト・マローンの2年連続の躍進などを踏まえてこう語る。
「ポスト・マローンも24歳で、世代交代の旗手のうちの一人ですが、彼や今年のブレイクアーティストであるリル・ナズ・Xなどは、HIPHOPに軸足を置きつつ、他ジャンルのリスナーにも広く届いています。2010年代に聴かれたアーティストを振り返っても、ドレイク、アリアナ・グランデ、エド・シーラン、エミネム、ポスト・マローンと、同じくジャンルの垣根を越えた面々であり、2010年代後半が世界の音楽シーンの多様化を加速させたことがわかります」
また、「世界で最も再生された楽曲」ランキングについては、2017年から繋がっている”ラテン圏の盛り上がり”が大きなポイントになっていると指摘する。
「今年の1位はショーン・メンデス&カミラ・カベロの『Señorita』ですが、これはルイス・フォンシの『Despacito』やJ.バルヴィンの『Mi Gente』といった、世界的にラテンの流れを取り入れた楽曲がヒットしている流れの延長線上といえるでしょう。これら3曲に関しては、ラテン系のアーティスト&英語圏に影響のあるアーティストという、どちらも人口の多い地域の組み合わせで成立しており、グローパルなサービスであるSpotifyの利点を活かした世界的なリーチを記録しています。日本から海外の音楽シーンを見ていると、アメリカ=世界と思いがちですが、実はそんなことはないということを、Spotifyは各国のチャートで見せてくれています。日本以外の国の人がみんなビリー・アイリッシュやポスト・マローンで盛り上がっている、というわけではなく、ローカルのチャートを見ればその土地に根付いたアーティストが人気ですから」