THE PINBALLSは音楽という“魔法”を信じ続けるーー『Return to The Magic Kingdom Tour』ファイナル公演

THE PINBALLSが信じ続ける音楽という“魔法”

 11月にメジャー2ndシングル『WIZARD』をリリースしたTHE PINBALLSが、ツアーを『Return to The Magic Kingdom Tour』を開催。12月20日に東京・渋谷CLUB QUATTROでツアーファイナルを行い、エッジの効いたロックンロールの数々で、集まったファンを熱くさせた。

夢を諦めない男たちの挽歌

 このツアーは、会場ごとに多彩な対バンを迎えて行われ、仙台ではYellow Studs、大阪ではPOT、名古屋ではSuspended 4th、博多では空きっ腹に酒、そしてこの日の東京では、LAMP IN TERRENが出演。THE PINBALLSとはテイストが異なりながらも、どちらが勝るとも劣らない高い熱量を持った対バンたちと、しのぎを削り合ってきた。そうしてついに帰って来た東京公演。各地の対バンの想いも背負ったTHE PINBALLSの4人は、圧倒的なオーラを宿して何倍にも巨大に見えた。

 LAMP IN TERRENの松本大の「お前らが認めた、THE PINBALLSが認めた俺らを認めろ」という、ファンの心を揺さぶる痛烈なあおりによって、会場にはTHE PINBALLSの登場が待ちきれないといった様子で観客の手拍子が鳴り響く。そこへ登場したTHE PINBALLSのライブは、1曲目から会場を熱狂の渦に叩き込んだ。

 オープニングナンバーは、『WIZARD』に収録の「統治せよ支配せよ」。グルーヴィーなギターカッティングから一転、アッパーのリズムへと変化すると、それに合わせてベースの森下拓貴が、まるで狼の遠吠えのようなシャウトを聴かせる。「戻って来たぜ東京、行くぞ!」というボーカル・古川貴之のひと言で、観客は手を挙げて一斉に躍動した。「さあショーを始めようか」。そんな呼びかけで始まった「劇場支配人のテーマ」は、まるで見せつけるかのように、ギターの中屋智裕とベースの森下が前に出て演奏。ドラムの石原天のあおりで、観客の間にはクラップがどんどん広がっていった。

 「旅に出て戻って来ると、やっぱりみんなの顔が最高。俺たちが戻って来る場所は、やっぱり最高の王国なんだって思う」と、MCで観客の表情を嬉しそうに見渡した古川。そんな古川が「夢を諦めた時に作った歌です」と伝えて歌ったのは、「fall of the magic kingdom」だ。

 本楽曲は、シャッフルビートの軽快なナンバーだが、どこか切ないメロディで、古川の歌からは、夢に破れて打ちひしがれたような気持ちが流れ込んでくる。誰でも前向きばかりではいられず、時には現実を受け入れて眠ることも必要だ。そんな、人の弱さも飲み込んで歌にして、吐き出してくれるのがTHE PINBALLSなのだ。どうせまた新しい夢や希望が溢れて来て、動き出さなければいけない時が来る。せめてそれまでは、この曲でいつまでも踊っていたい……。観客はきっとそんな気持ちで、目を閉じて身体をゆっくり動かしていただろう。そんな気持ちに応えるように、「このまま俺たちと唄い続けようぜ。夜明けまでは」と呼びかけた古川。続けて歌った「蜂の巣のバラード」では、ムーディーなツービートにジャカジャカとしたギターが、絡むように鳴り響く。古川のボーカルには、観客を包み込むような愛情が溢れ、最後のファルセットのコーラスは、涙をそっとぬぐう指先のように優しかった。

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