LUNA SEAとゴスペラーズ、最新アルバムがランクイン “我が道を貫く”ことが長く愛される秘訣?
そして今週もうひとつの注目は、LUNA SEAの『CROSS』。2.9万枚のセールスで初登場3位にランクインしています。まさか2019年に彼らの新譜を聴くことになるとは思わなかったですが、復活(バンド側は「REBOOT/再起動」と表現)から4枚目、前作から2年ぶりとなる『CROSS』に、変な力みや過剰なプレッシャーは皆無。ゆったりしたテンポで進む大人のロックナンバーが揃っています。
90年代、LUNA SEAはまさにV系のはしりというべき存在でした。彼らの後にGLAYや黒夢が続き、シーンはさらなる盛り上がりを見せますが、ファンを「SLAVE」と呼び「黒服限定GIG」を開催するなど、LUNA SEAは過激で毒々しいV系カルチャーを日本全土に普及させた1組だったと思います(彼らが影響を受けたDEAD ENDや、先輩にあたるX JAPANのデビュー時にはまだ「V系」という言葉は存在していません)。全国に広まったLUNA SEAのイメージ。象徴となったのは河村隆一(RYUICHI)の華麗なるビブラートですね。毒のイメージを散りばめながらも、ボーカルは歌謡曲のメロディを大胆に歌い上げる。それがLUNA SEA以降のV系定番スタイルとなりました。
今のLUNA SEAに過激な毒々しさはありません。初期のU2のごとく繊細なギターワークに始まり、プログレ、サイケデリック、またストリングスに彩られたバラードなど、音楽性は本当に自由かつ開放的。本作は、今のLUNA SEAによるロックアルバムと言ってもいいかもしれません。
ただ、全曲で響き渡る河村隆一のビブラートを聴くだけで「あぁLUNA SEAだ!」とわかる、わからされてしまう感じ。ものすごい個性であり毒性だなと驚くばかり。これもまた我が道を貫いた結果でしょう。今もLUNA SEAを求めるSLAVEがこれだけいるのは、よくわかる気がします。
■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。