坂本真綾、水樹奈々、天野月子ら楽曲カバー『没入time mixed by DJ和』 暁月凛のアニソンボーカリストとしてのポテンシャル
没入度倍増のノンストップMIX
また今作にはゲームのテーマソングも多く収録されていて、アニメだけでなくゲームにも深い愛情を注ぐ、暁月のアイデンティティが反映された選曲になった。なかでも天野月子(現在は天野月として活動)の「蝶」のカバーを、リード曲として収録しているのは大きなポイントだろう。同曲は、2003年に和ホラーゲームのレジェンド『零〜紅い蝶〜』のテーマソングとしてリリースされた、天野月子を代表する楽曲のひとつ。民族的なリズムセクションや激しく歌い上げるサビが印象的なミディアムバラードで、主人公である双子の姉の繭をイメージした歌詞は強烈なインパクトを放っている。ゲームをプレイしたことがあれば、涙なくしては聴けない曲だ。
暁月による同曲のカバーは、原曲の持つ絶望感やダークさは抑えられ、むしろ敵に立ち向かうような力強さが感じられるものになった。背筋がゾッとするような歌詞は原曲と同じであっても、コード感と歌声によって、見違えるようにアツさのある楽曲に仕上がっている。ときおり聴かせるエモーショナルな歌い回しもスパイスになって、聴く者の心をグッと掴んで離さない。そのエモーショナルさは聴く者を突き放すようなエゴむき出しのものではなく、聴く者が自然とその楽曲の世界観に没入できる、ちょうどいいエゴであることも彼女の歌の魅力だろう。自己表現もしながら、聴く者をアニメやゲームの世界に引き込むことができる、アニソンやゲーム音楽は暁月にとって、かっこうのステージだ。
さらに今作は、邦楽DJのDJ和が、選曲&MIXを監修している。近年はアニソンDJとしても多方面で活躍しており、暁月にとって心強い味方となった。本作は40分以上一時も休まず、ノンストップで楽曲が連なった作りだ。曲間が空くことで気持ちが冷めてしまったり、せっかくの盛り上がりが途中で萎えてしまうことがあるが、本作ではそれがない。プレイボタンを押した瞬間から、余計なことに気を取られることなく、文字通り“没入”することができる。DJ MIXによる打ち込みのビートは、一見楽曲の魅力を壊しそうに思うかもしれないが、決してそのようなことはない。各曲は巧みにリアレンジが施されており、これまで気づかなかった楽曲の違った魅力にも気づくことができる。
昨今のアニクラ(アニソンクラブイベント)の流行もあり、自分でアニソンMIXを作るユーザーも多いと聞く。しかしここまで幅が広く懐の深い選曲は、なかなかできないだろう。さらに、イヤフォン、ヘッドフォンで聴けば、没入度は倍増。仲間と楽しむもよし、一人でじっくり楽しむもよし。様々な楽しみ方にも対応する1作だ。
■榑林史章
「THE BEST☆HIT」を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、インタビュー本数は延べ4,000本。現在は日本工学院で講師も務める。
■リリース情報
暁月凛 『没入time mixed by DJ 和』
発売日:2019年12月11日(水)
価格:¥2,000+税
全20曲収録
<CD収録曲>
1 oblivious
2 アンインストール
3 Re-sublimity
4 深愛
5 アイリス
6 WILL
7 夢想歌
8 まどろみの輪廻
9 掌-show-
10 美しき残酷な世界
11 蝶
12 最高の片想い
13 ツキアカリ
14 深い森
15 いつか溶ける涙
16 夜明け生まれ来る少女
17 Shangri-La
18 Paradise Lost
19 Paradisus-Paradoxum
20 コノ手デ
※収録楽曲は、フルサイズもしくは、ワンコーラスでの収録となります。
※すべて暁月凛によるカバー
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