『PlanBee』インタビュー
BARBEE BOYSに聞く、再始動の真相と29年ぶり新作への思い 「この5人が集まればバービーになる」
BARBEE BOYS。1984年に「暗闇でDANCE」でデビューして以降、男女ツインボーカルにサックスを取り入れた特徴的なロックサウンド、大人の恋愛を歌う歌詞の世界観など、80年代バンドブームの中でも圧倒的な存在感で人気を集めた5人組バンドだ。1992年の解散後もイベント出演やツアー開催など不定期にバンド活動を行ってきた彼らが、2019年に本格的な再始動を宣言。1年以上の準備期間を経て、29年ぶりの新譜『PlanBee』を12月18日にリリースした。先行配信曲「無敵のヴァレリー」やライブ定番曲の初音源化「翔んでみせろ」など、ブランクを微塵も感じさせないBARBEE BOYSのロックを再び体感することができる。
今回リアルサウンドでは、KONTA(Vo&Sax)、杏子(Vo)、いまみちともたか(Gt)、エンリケ(Ba)、小沼俊明(Dr)の5人に話を聞く機会を得た。BARBEE BOYSは、なぜ今再始動をすることになったのか? そしてどのような思いで新作を完成させたのか? 貴重なインタビューをお届けする。なお、メンバーは現在、2020年1月13日に国立代々木競技場第一体育館、1月19日にLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて行われるワンマンライブに向けた準備を鋭意進めているとのことだ。聞き手は音楽評論家の今井智子氏。(編集部)
伝説扱いをやめてくれって気持ちがあった
ーー29年ぶりの新作『PlanBee』のリリース、1月には10年ぶりのライブも発表されています。BARBEE BOYSは1992年解散から今まで何度かライブやツアーを行ってきていますが、今回は今までと意味合いが違うのかなと思います。
いまみちともたか(以下、イマサ):自分たちの中で何か違うとしたら、ひとつのプロジェクトとして1年かかってるというのは、珍しいかも。
小沼俊明(以下、コイソ):計画的にね、盛り沢山で。
KONTA(以下、コンタ):そういう意味で言ったら、動きながら頭も時間も使ってます。
エンリケ:以前は1回だけのライブが目的だったりね。今回みたいな、なんというかちゃんとしようっていうのではなかったかな。
イマサ:ライブを1日やることになりました、それに向けて動きました、はいそれまでよ、って、以前は期間が短い。今回は、今の時点で1年以上経ってる。
ーーそうした違いには何か理由が?
コンタ:突然ライブをやって、そのおまけにCDを作るってことじゃなくて、パーマネントの活動をして、音も作っちゃいたいなあというのがあって。それを勢いで言ったらみんなの賛同を得られた。
イマサ:コンタが部長になった。“バービーボーイズ部”の部長(笑)。いつもは顧問の先生にやりなさいって言われていた感じだったのが、今回は顧問の先生が誰もつかなくて、コンタが部長に就任した。
エンリケ:部長が再結集させたのかもしれない。
コンタ:別に俺が言ったわけじゃないんだけど(笑)。去年NHK BSの『The Covers Fes 2018』に出演して、集まっちゃったなあと思って。それまでの、ライブだけ賑やかしでやるとか、なんか消化不良だなという気が俺はずっとしてたから、試しに(大声で)「どうかね、集まって何かやんねえか」というのを言ったら、みんなの気持ちもスケジュールも、たまたま合って。今までは、そういう気持ちがあっても、言うに言えないというか、言い出しかねてる感じもあったし、それぞれ何かが控えてるというのもあっただろうし。
イマサ:言い出す前に、お祭り期間が終わってましたみたいな感じも多い。
杏子:イベントに出る? 出ない? とかも全部気まぐれだったから。それもイベントありきで、この5人から自発的にやろうよと言ったことは一度もなくて。だけど去年の年末に出た時、楽屋にきていた旧知の関係者やスタッフに「また(ライブは)どうですか」って言われて。
エンリケ:10年ぶりの「どうですか?」だったね。
杏子:それで、みんなのスケジュールが合って、部長が前向きに(笑)。そこからレコーディングをやろうって言ったのが大きかったかな。
イマサ:音源を出そうって言い出した。
コンタ:曲も何もなかったのに(笑)、やるんだ、やりてえと思うんだったら、音源出そう、って感じかな。もう一つ言うとね、伝説扱いをやめてくれって気持ちがあった。ホルマリン漬けにされたり、アクリルケースに入れて置かれてるだけじゃやだ、ってのがあったね。
イマサ:(プロフィールを見れば)解散からちょいちょいやってると思う人もいるだろうけど、武道館やったの10年前じゃん(『Bcc:from BARBEE BOYS AD2010』)。そうすると、そんなの知らない人もいっぱいいるんだよ。
エンリケ:でもデビューのタイミングから今まで、不動のメンバーでというのは価値があるかなと思う。交換可能な部品ではないから、5人とも揃うってことを考えたら、これだけ時間がかかっちゃったということかもしれない。
コイソ:これまで何度かやったことはあるけど、チョロチョロっとやって終わっちゃうでしょ。今回は、今年の1月にどうする? みたいな話をしたんですけど、そこから今のところすごくうまく行ってる。4月にイベントに出て(『ARABAKI ROCK FEST. 19』)、レコーディングをやって、10月に急遽OKAMOTO'Sとの対バンが決まって(『ライブナタリー Presents RESPECT! Vol.1』)、次は代々木第一体育館でしょ。今の時点ではすごいスムーズに進んでる。
コンタ:俺は、自分たちのことなんか知らない人たちの前でやりたいというのが、ずっとどこかにあったのよ。お馴染みの人たちと昔懐かしい話をして、というのがなんだかやだなと。これまでは、それでスポット的な活動になってたのかもしれない。でも去年『The Covers Fes 2018』に出た時、考えてみりゃ今聴くやつって全員俺たちのことなんか知らねえんじゃねえか? って思って、やり始めた。心構えが変わったとかアプローチが変わったとかいうことはほとんどなくて、俺個人のところではね。でも楽しみながらやれてるというのはある。
単純にバービーだと合っちゃうところがある
ーーそこから曲も作って、動きだすことに?
イマサ:そういうんでもなくて、音源作ろうって言うんで、「ええっ? どうすんの?」って。それでコンタと合宿みたいなかたちでね、それこそ40年ぶりぐらいに(笑)。寝泊まりを同じところでして、ギター1本サックス1本だけで、どんなことができるかやってみたりしてる中で、「あの曲やったらどうだろう?」とかさ、そんな話をして。俺ねえ、曲を書くときに誰々のためにというより、曲できちゃって、これを誰が歌うと楽しいかなって考えるんだよね。そういう順番なんで。「こんな曲ある」「これなら俺の方が上手く歌える」とかさ。いろんなことを話し合って、決まっていったのかな。
エンリケ:イマサはコンスタントに曲を作ってて。面白いんだよね。「こんなのができた、これさ、誰々に歌わせたら面白いと思わない?」「ああなるほど、イメージあるね」とか話してる。
ーーイマサさん、コンタさんで合宿してデモとか作って?
イマサ:そうするはずだったのが、なんせギター1本と歌だけだからさ。
コンタ:それで、レコーディングも同じ場所でやることになってたから。
イマサ:だったら、せーので録った方が早いねってことで。結局二人でやったのはメモ扱いだね。それを元に杏子とコンタの歌の割り振り決めたりとかさ。で、エンリケにも来てもらって、一応ベースのラインとか決めた挙句、録りの本番でキー変えようとか、テンポあげようとか(笑)。
コイソ:だから本チャンのレコーディングの前にデモテープは作ったんだけど、ドラムは入ってないから。それを俺に教えてくれるために、その辺の貸しスタジオに1回だけ入って。でもそれは、こういう曲があるっていうのしか覚えてないから、ちゃんとしたプリプロはやってない。最初は、レコーディングに入る前は、そういうのちゃんとやらなきゃだめだよねって言ってたんだけど、やってみたら、録れちゃったから、それでいいやって。
エンリケ:でもそれでよかったよね。
イマサ:無駄が大事なとこってあるじゃない。2時間でやって帰って、みたいなのじゃなくてさ。今回の我々に関しては、杏子が「いつまでダベってんの、早くレコーディングしようよ」って言うみたいな(笑)、そういう雰囲気。だけど録り始めると早かったね。
杏子:歌い分けに関しては、コンタとイマサが作ってくれて、コンタがまず全部歌ってるバージョンで、ザックリ歌い分けを決めてくれて。それをコンタと私がそれぞれ歌って、どういう風に割り振っていくのがいいかって相談した時間が2日ぐらいあって。それをイマサが聴いて、歌詞をちょっと変えたり。コンタが、俺のノリがちょっと違うかもって、内緒でイマサが歌ってるのを送ってくれて(笑)。そうか、こういう風なノリのパターンもあるんだって思って、それでどっちがいいか試せたり。そういうのも新鮮というか面白かった。
ーーイマサさんの歌ってる曲「カリビアンライフ」ですか?
杏子;あの曲は突然できた(笑)。レコーディングは終わってたんだよね。
イマサ:終わって片そうかって日に、できちゃって。朝起きたらできてた。録音する暇もなかったから、とにかく忘れないようにしてスタジオについて、「ちょっと昨日できた曲があるんだけど」ってその場でやってみせた。それを、そのまま行けばって話で。仮歌だったけど、部長のお許しが出た(笑)。
コンタ:これで行かなきゃダメだとまで思ったね。
イマサ:それもこれも含めて、今のバービーってこと。
ーー活動再開するにあたり、みなさんの中でBARBEE BOYSになるスイッチが入るみたいなことがあったりするんですか。
杏子:自ずとある、というか。私はこの4人が作る音と、イマサの歌詞になると、そうならざるを得ないというか、やっぱりそうなっちゃうんだーって。そのために自分からスイッチ切り替えようとは思わないんだけど、それがバンドなんだなって思う。
イマサ:責任分担の役割が、それぞれのソロ活動の時と変わるよね。
エンリケ:単純に、バービーだと合っちゃうところがある。例えばエンディングで「ジャーン!」とやって止めるとことか、他では合わなかったりすることもあるけど。
イマサ:竿(ギターのネック)一振りの、ここで音が止まる、みたいな、そういうのあるよね。
コンタ:5人揃ってスイッチが入るというより、5人でいると、だってそうなっちゃうんだもん、なんですよ。
イマサ:今回、ライブの定番曲「翔んでみせろ」を初めて録ったんだけど、レコーディング前までリハも何も、音も出してなくて。とりあえずこれはいいよって他の曲をやってて。とりあえず録ろうかってやったら、意外にできるもんだよね。テンポとかもそんなに変わってないんだよね。
ーー「翔んでみせろ」をレコーディングしようとなったのは?
コイソ:スタジオ音源がないから。ライブバージョンはあるんだけど、それしかないから。
エンリケ:録ろうって言いながら、ちょっと照れ臭い側面もあったりして。過去のライブを超えないと意味ないだろうし。
コンタ:ライブとは何か変えなきゃいけないと思ってたから、録らなかったんじゃないかな。何か一工夫いれなきゃスタジオで録る意味がないと思ってたんだね。あの曲ができた頃は、レコーディングなんてあんまり考えてなかったもんね。
イマサ:当時はライブのレパートリーを増やそうと思って曲を書いてて。初期のライブでは全部演奏してた。ていうか、これこそライブでやらなかったことはないぐらいの、ほぼ皆勤の曲。いつも入ってた。
コンタ:そうそう。で、のちのち、この曲って、これ以上発展させようがないんだ、もうできちゃってるんだ、というようなやり取りの中で改めてレコーディングすることが決まった。
イマサ:俺は今回録って、プレイバック聴くまでは怖かったけどね。だって、自分の中でレコーディングって、それこそコンタじゃないけど、プラスアルファが加わってないとって。なんかちょっと、ある時期から俺、スタジオ派になってるから。スタジオのレコーディング作品として、どうにか何か細工とか加工とかしなきゃいかんのじゃねえかとか思ってる中で、この曲はやりようねえもんなって。とりあえずしょうがないからライブと同じように弾いてみるわー、意外と覚えてるわー、みたいなね。
エンリケ:覚えてるんだよね。俺は久々やってみて楽しかったのと、カッコいいって自画自賛できる。
イマサ:プレイバック聴くまで、ひとつは80年代の自分の楽器のセットと出してる音と、今の音って自分の中では違ってると思ってて。今の音でやって大丈夫かなと思いながらとりあえずやってみようと。で、プレイバック聴いたら、大丈夫だった。一番はコンタが、あたかも2000人の前で歌ってるようなボーカルを披露したからね(笑)。
杏子:すごいテンションだった。スタジオで歌う時、ライブっぽく歌いたいなと思っても、そううまくいくものじゃなくて。なのに、もう始めの〈翔んでみせろ!〉から「ええーっ!?」って。ちょっと鳥肌がたった。
コンタ:すごく気持ちよく歌えた。やりようがなかったから録らなかったんだってところで全員が納得したから、今回も昔どおりにやることができたんじゃないかな。
イマサ:レコーディングの時って、何かに向かって歌ってるの? ブースの向こうの誰かとか。「翔んでみせろ」は、絶対これオーディエンスがいるよね(笑)。
コンタ:あれは、頭ん中を見てるのと、目の前を見てるのと、等分なのよ、どっちかというと。頭ん中のイメージと、目の前の何千人かに向かってどうやるかってところの。
イマサ;バーチャル眼鏡してるみたいな?(笑)。
コンタ:そうそう、そんな感じ(笑)。