ゴールデンボンバー、「かまってちょうだい///」「首が痛い」の共感性の高さ “ファン心理”熟知した2曲を考察

ゴールデンボンバー『もう紅白に出してくれない』

 ゴールデンボンバー・鬼龍院翔は、ファン第一主義のバンドマンだ。かつてのインタビューでは「すべての判断はファンを基準にするべき」(引用:新R25「金爆・鬼龍院翔に"一発屋で終わらなかった理由"を聞いたら、ファン目線に圧倒された」)と語るほど、ファン目線にこだわっている。そんな彼がつくった“完全ファン目線”の楽曲が、12月28日にリリースする最新アルバム『もう紅白に出してくれない』に2曲収録されている。今回はその2曲をMVの見どころと共に紹介したい。

推しへの欲望を歌ったポップなラブソング「かまってちょうだい///」

 「かまってちょうだい///」は、PPPHなどヲタ芸要素が入った電波ソングだ。「さくらんぼキッス 〜爆発だも〜ん〜」で“電波ソングブーム”を巻き起こしたシンガーソングライターのKOTOKOが合いの手を担当していることでも話題だが、今回はこの歌詞が描くストーリーに注目したい。この曲は、アイドル、アーティスト、バンドなどさまざまなジャンルに“推し”を持つ人のラブソングだ。最初は動画を片っ端から見て、物足りなくなったらライブへ足を運ぶ。生で見る姿に感動していたのも束の間で、〈目を合わせたい ファンサちょうだい〉と相手からのレスポンスを求めるようになる。そして行きついた気持ちがタイトルの「かまってちょうだい///」だ。さらに〈今日はまだ目が合わない〉〈もしかして嫌われた?〉と不安になったり、〈キレイになるからオシャレするから ファンサちょうだい〉と自分の外見を磨いてみたり。恋愛にのめり込む少女と変わらない、推しにのめり込んでいくファンの感情の変化がグラデーション的に表現されている。YouTubeのコメント欄では、ゴールデンボンバーのファン以外からも“これは自分だ”という共感の声が多く寄せられていた。もちろん、推しへの熱量は人それぞれだが、この歌詞はグラデーション的に少しずつ濃いものになっていくため、“ここの部分までは共感できる”という人も多いだろう。

 また、この曲がポップなラブソングとして成立しているのは、切り取り方の上手さにあるのではないだろうか。たとえば、相手に嫌われたかな? と不安になる部分をさらに深堀りし、他のファンへのヤキモチや独占欲、果てはファンとアイドルという関係の一線を超えようとする描写を入れることも出来たはずだ。しかし、〈これがLOVEなのね〉とハイテンションに叫び、あくまでも「かまってちょうだい///」という表現に留めている。だからこそ、歌詞の主人公は、この恋を心から楽しんでいるように見えるのだ。この線引きをすることで、批判的に語られがちな「推しへの恋心」を、ポップなラブソングに昇華することに成功している。

ゴールデンボンバー/かまってちょうだい/// LIVE MV

 先日公開されたMVにも少し触れたい。この曲はライブ映像がそのままMVになっている。歌詞の舞台ともリンクしているMVの見どころは、全力で踊る鬼龍院翔だ。少しも休まずジャンプしたり、上手と下手をダッシュしたりと運動量は相当のものだろう。その証拠に表情は徐々に苦しそうになる。しかし、歌声が一切乱れないのはさすがの一言だ。ちなみに、イントロで鬼龍院がファンに向かって「無理しなくていいよ」と優しく気遣うシーンがあるが、映像を見ている側としては彼にかけてあげたい言葉だ。

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